1-4 命を繋ぐ者
ヴァルトが去った後、黒く焦げた肉塊がかすかに動いた。
男はライルを庇うように覆いかぶさる体勢で倒れている。その体は稲妻の余波で焼けただれ、今にも息絶えそうだった。
「くっ……」
ライルの声は痛みで歪み、かすれていた。
「お前、大丈夫か?」
男の両肩に手をあてて尋ねた。ピクピクと反応がある辛うじて生きているようだ。
ライルは状況から身を呈して自分を助けてくれた事を理解すると、その理由が知りたくてたまらなかった。
「なぜ俺を助けたんだ?」
ライルからの問いにやっとの思いで目を開き、弱々しく語り始める。
「お前が……被害者だからだ。」
その言葉と共に、男は手を動かし、ライルの首に巻かれた魔道具――首輪を外し始める。
ライルは目を見開いてその行為を見守った。首輪が外れると、冷たい金属の感触が消え、解放される感覚が広がった。
「これは……首と体を切断し殺す為の魔道具だ。」
ライルはその言葉に、今更ながら自分の置かれていた危険な状況を実感した。
次に、男はライルの手にある剣を見て、その刃が淡く光を放っているのを見つめた。
「そしてその剣は、持ち主の魂を消費して力を得るが、雑に扱えばあっという間に寿命を食い潰す魔剣だ。」
ライルはその言葉に驚き、身体を震わせ男を見つめた。
男は少し目を閉じ、かすれた声でゆっくりと語り始める。
「お前は……囚人か?奴隷か?それとも捕虜か?」
ライルは答えた。
「どれでもない。ただ、暗殺の依頼を受けただけだ。」
その答えを聞いた男の顔に、険しい表情が浮かんだ。
「……お前は皇室に騙された。捨て駒にされたんだよ。」
ライルはその言葉にショックを受けた。自分がただの駒に過ぎなかったとは。だが、彼は整理がつかないまでも、湧き上がる疑問を投げかける。
「なぜこの村が狙われた? 何がここにあるんだ?殺せと指示のあった金髪の少女とは誰だ?」
男は力を振り絞ってゆっくりと語り続けた。
「その少女は……女王だ。リアナだ。」
ライルは驚き、目を見開いた。
「女王が、ここに……?」
男は頷き、力を振り絞って最後の言葉を口にした。
「リアナが狙われているのか……頼む……助けてやってくれ」
男は目を閉じ聞き取るのがやっとのか細い声でつづけた。
「教会にいる……村の一番奥…北の教会…だ……」
その言葉を残し、男は静かに命を散らした。
ライルは無言で立ち上がり、ヴァルトに渡された魔剣を放り投げると、男が使っていた剣を拾い上げた。その剣は魔剣とは異なり、重みを感じるものであった。ライルはその剣をしっかりと握りしめ、深く息を吐いた。
「教会か……。」
ライルは呟きながら、北の教会へと足を踏み出す。体のあちこちが痛むが、決意を胸に進み続けた。




