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暗殺依頼を受けたらとんでもない事になった  作者: ちんくろう
5章 元帝国騎士ヴァルトとの禁断の共闘 〜事件の全貌と造られた真実〜
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5-5 造られた真実と禁忌の依頼

死体安置所を這い出し、深夜のライルの宿屋へとたどり着いた二人。


再会に泣きじゃくるシエラを隣の部屋へ下がらせると、ライルは即座に抜き放った剣をヴァルトの喉元に突きつけた。


「……ヴァルト。あの村の事を覚えてるか、あんたのせいで、俺は死にかけた。シエラも、あの村の連中も……ただの捨て駒扱いしやがって。今さら何を企んでいる」


「……当然の怒りだな。あの時は悪かった。だが、今の俺に皇帝への忠誠など微塵もない」


ヴァルトは避ける素振りも見せず、空虚な瞳で剣先を見つめた。


「今の俺は死人だ。名も、地位も失った。あるのは……使い捨てられたゴミとしての意地だけだ。今の俺が嘘を吐いて、誰に媚びる必要がどこにある?」


ライルは剣を引かなかった。この男は、常に何かを隠している。


「なら、答えろ。あの時の『シエラ暗殺』の依頼は何だったんだ? 彼女は一体何者なんだ」


「……いいだろう。すべて話す」


ヴァルトは静かに語り始めた。その内容は、ライルの想像を超える残酷な真実だった。


「王国からガルダスへ届いたある『依頼』の遂行だ」


「依頼……?」


「リナア女王の偽物を消せ、という内容だ。ガルダスはそのついでにあの村に禁忌とされ眠っている竜の力を回収し村ごと殲滅しろと命じた」


ヴァルトは、射抜くような視線をライルに送り続ける。


「竜の力は強大と言われている。俺は事が終わった後、始末するつもりで傭兵を雇った。……その一人がお前だ、ライル」


悪びれる様子もなく、淡々と「殺すつもりだった」と告げるヴァルト。その潔いまでの冷酷さに、ライルは逆に、この男が今さら嘘を吐く必要がないことを悟った。


ライルは奥歯を噛み締め、震える拳を抑えつけた。自分たちが使い捨ての駒に過ぎなかったという事実よりも、今この男が口にした「依頼」の内容が、あまりに重く、残酷だったからだ。


「……シエラに向けられた殺意の正体は、それだったのか。だが、シエラは何者なんだ? リアナ女王の偽物だというのか?」


「ああ、そう聞いている。シエラは、本物の女王に瓜二つに作られた『ホムンクルス(人造人間)』だと、そしてあの村は偽女王を作り出し王国の転覆を狙う犯罪集団だそうだ」


ヴァルトは淡々と、まるで壊れた道具の話をするかのように告げた。彼にとってシエラは、あくまで任務の標的であり、人造の紛い物に過ぎない。


だが、ライルにとっては違った。

共に過ごし、共に笑い、守ると誓ったかけがえのない少女。それが造り物だと言われても、ライルの心は揺るがない。


むしろ、機密を惜しげもなくさらけ出すヴァルトの態度に、ライルは皮肉にも「こいつは今、本当のことを言っている」と確信してしまった。


「……わかった。信じはしないが、あんたの言葉が本物であることだけは理解した。今はガルダスを倒すために、あんたの力を利用させてもらう」


ライルが剣を引く。ヴァルトはわずかに口角を上げ、計画の続きを口にした。


「賢明な判断だ」


「……だがヴァルト、どうやってあの化け物どもを突破するつもりだ? 目標のガルダスに至るまでの障害は、あまりに大きいだろう」


「ああ。帝国の騎士団長クラス……奴らは化け物揃いだ。さらに魔塔での『強化術』を施された兵士を相手にするとなれば、正面突破は自殺行為。近衛騎士団、特殊部隊、そして宮廷魔導師団……。ガルダスの周りには、そういった『個』で軍隊を殲滅できる連中が何人も控えている」


「……絶望的だな」


「まともにやればな。だからこそ、障害を一つずつ排除、あるいは無力化していく必要がある。最大の障壁の1つは、あの『仮面の女』…」


「……あんたでも敵わないのか」


「あの女は強い。今の俺では、死に物狂いで食い下がれるかどうかというところだ。……だが、真に恐ろしいのは別にいる」


ヴァルトの言葉に、ライルの脳裏にあの男の姿が浮かぶ。


「剣聖ベルナルド。正面からやれば、俺が百回死んでも届かん。だが、あいつには弱点がある。あいつはガルダスの『刻印』を受けていない。つまり、魔法的な束縛なしに、ただの忠誠心で動いているだけだ」


ヴァルトは不敵に笑う。


「ベルナルドは家族を溺愛している。家族を拉致して揺さぶりをかければ、あいつは必ず皇帝の側を離れる。その隙に皇帝を殺す」


「……シエラを連れてはいけないな」


「一つ心当たりがある。かつて俺が恩を売っておいた新興宗教の老婆だ。宗教施設なら、帝国の憲兵も迂闊に手が出せん」


シエラをモノ扱いし、かつて自分たちを殺そうとした男。その毒を喰らってでも、皇帝ガルダスの首を獲り、彼女を自由にする。ライルは心の中でそう自分に言い聞かせ、重く頷いた。

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