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4-6 暴君の裁き

会場の熱気は最高潮に達し、割れんばかりの歓声が響き渡っていた。

しかし、突如として会場は静まり返る。

皇帝ガルダスがヴァルトを従え、闘技場へと足を踏み入れたのだ。


「何だよ、人が折角盛り上げたのに、会場を冷ましやがって…」


オーウェンは不満そうに呟く。

ガルダスはノエルへと向かって歩を進めた。

ベルナルドは何かに気が付いたのか、素早くノエルとガルダスの間に入り片膝をついた。


「彼の戦闘は素晴らしく、現状で帝国正規軍の兵の中でも上位に入ります。

彼の実力は、将来帝国軍の助けとなるでしょう。

どうか御慈悲を…」


ベルナルドの言葉に、ガルダスは数秒間沈黙し、やがて口を開いた。


「…手を合わせたお前が言うなら、そうなのだろう…」


ガルダスは納得したのか、それともベルナルドの顔を立てたのか、そう言うとその場を離れライルの対戦相手の騎士へと歩を進める。

ヴァルトがガルダスの耳元で囁く。


「彼は公爵の息子、殺せば後々面倒になるかと…」


ガルダスは不満そうな表情をし、騎士に向かって言い放った。


「ここはお前のような弱者のいる場所ではない。早々に失せろ」


騎士は顔を青くし、あわてて退散する。

つづいてアーザスの元へと向かう。

ガルダスはアーザスの前に立つと、腰の剣を抜いて言った。


「見苦しい試合であった、何か言い残すことはあるか?」


「あ、うっ、いえ…」


アーザスは恐怖で声も出なかった。

ガルダスはゆっくりと大きく剣を振りかぶる。


─ザンッ


ガルダスは躊躇無くアーザスの首を刎ねる。

アーザスの頭部は無残に転がり、首からは血液が噴水のように噴き上がった。


「あいつ、何しやがる!」


オーウェンは目を大きく見開き激怒した。


「堪えろオーウェン!下手に突っかかると殺されるぞ!」


ライルは小声で言うと、オーウェンの肩を押さえ制止させる。

ライルのその手は震えていた。


最後にガルダスは剣闘士へと向かう。

オーウェンは怒りを抑え、剣闘士とガルダスの間に入り、ベルナルドがやったように跪く。

怒りに満ちたその表情を悟られないよう、オーウェンは顔を俯せた。


「皇帝陛下、この男は強く勇敢です。

また現状でも剣闘で人気選手であり、経済面でも貢献しています。

何卒、御慈悲を!」


オーウェンは殺してやりたい衝動を抑え、必死に懇願する。


「無いな、試合は無様で剣闘士としての代わりもいくらでもいる」


「大会規定と違います、生殺与奪は勝者にある。

私は生を望みます」


「お前、勘違いしているぞ…顔を上げ、余の目を見ろ…」


オーウェンはゆっくりと顔を上げた。

目は血走り、奥歯を食いしばっていた。

その歯は今にもガルダスの首元を噛み千切りそうだった。

オーウェンの顔を見て、ガルダスは言う。


「法というはな、わしの言葉だ。そして、わしの判断はそのまま判決となる」


ガルダスは剣を振り上げる。

剣はガルダスの魔力が流し込まれ、黒い炎を纏う。


「弱者に価値はない」


そう言うと剣闘士めがけ無慈悲に剣を振り下ろした。

剣闘士からは鮮血が噴き出し、ガルダスとオーウェンに降り注いだ。


(堪えてくれ、オーウェン!)


ライルは心の中で叫ぶ、その目は恐怖と怒りで歪んでいた。

オーウェンは血走った眼差しをずっとガルダスに向けていた。


ガルダスはマントを翻し、ヴァルトと共に闘技場出口へと向かう。

ガルダスはノエルに対する感想を言う。


「ヴァルトよ…ベルナルドに負けた奴だが、あいつは使えそうもない。行儀が良すぎる」


冷たく言い放った後、次はオーウェンへの評価を語る。


「だが、先ほどの者は良かったな、あいつは期待できる。

心を鍛えるのは、剣術を鍛えるのより難しい。

臆することなく、ずっと余に殺気を放っていたぞ」


更に淡々とした口調で続ける。


「つまり、強者たる者は最初から強いし、弱者はいつまで経っても弱いままだ」


「はっ、おっしゃる通りです」


「あと、係員に言っておけ。

今後、敗者は原則首を刎ねるようにしろと」


「かしこまりました」


観客席からは悲鳴や嗚咽が聞こえた。

中にはガルダスの行動に賛同する者もいたが、ほとんどの者は恐怖で震えていた。


ガルダスは心の中で呟く。

(この恐怖こそが、民を従わせる力となるのだ…)


突如現れたその暴君は満足そうに闘技場を後にした。

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