1-3 裏切りの閃光
父親らしき男を取り囲むように、カインとライルが連携して攻撃を仕掛ける。カインは低い軌道から鋭い斬撃を放ち、ライルはその隙を狙い縦横無尽に剣を振るう。しかし、父親らしき男はそのすべてを無駄なく捌き、逆に鋭い反撃で二人を圧倒していた。
その最中、父親らしき男の視線が二人の首元へと向けられる。カインとライルの首には金属製の首輪がはめられていた。
(あの首輪……首を締め上げて殺す魔道具か?)
「ライル、下がるな!」
カインの冷静な声に、ライルは歯を食いしばりながら前線を維持する。しかし、父親らしき男はその動きを見切り、ライルの剣を絡め取るようにして弾き返す。そして、その隙を突いてカインの足元へ斬り込む。
カインが後退して間合いを外すも、次の瞬間、後方から鋭い閃光がほど走った。
白光が夜空を裂き、轟音と共に大地を揺らす。強烈な熱気が周囲を包み込み、焦げた匂いが漂った。閃光の発射もとに立っていたのはヴァルトだった。
その場にいた全員が思わず動きを止めた。そして煙が晴れると、カインが膝をついて崩れ落ちていた。
「……カイン!」
ライルが叫び、震える手で剣を握りしめた。ヴァルトに詰め寄った。
「ヴァルト! カインまで巻き込むとは何を考えているんだ!」
「そうか、気付かなかった。」
ヴァルトは冷たく言い放つと、視線を父親らしき男に向けた。その冷徹な瞳には、戦うことへの迷いなど微塵も感じられなかった。
父親らしき男は黒焦げになった衣服を纏いながらも立ち上がり、静かに構えを取り直す。その姿に、ヴァルトは心の中でつぶやいた。
(こいつか……。)
ヴァルトが剣を振るい、父親らしき男との激戦が始まった。鋭い剣筋が交差し、火花が飛び散る。一方、ライルもその隙を狙って攻撃を仕掛けるが、父親らしき男はその剣筋を読み、ライルの攻撃を弾き返す。
「くそっ!」
ライルが焦りを見せた瞬間、父親らしき男の剣がライルの武器を叩きつけた。その衝撃で剣は真っ二つに折れ、ライルは無防備な状態に追い込まれる。父親らしき男は畳み掛けるようにヴァルトに斬撃を浴びせた。ヴァルトは咄嗟に後退するも、斬撃が上着を裂き、中に着込まれた鎧の一部が露わになった。
父親らしき男はその鎧に刻まれた紋章を見て低く呟いた。
「……皇室の犬か。」
その直後、村の鐘が鳴り響いた。深夜の静寂を破る甲高い音に、ライルが焦りの表情を浮かべる。
「ヴァルト、もう引き上げるべきだ。村全体が目を覚ました。」
だが、ヴァルトは冷淡に言い放つ。
「住人全員を殺せば暗殺だ。引き上げる理由はない。」
そう言いながら、ヴァルトは、普段使いの剣とは別に腰に仕込んでいた剣を抜き、ライルへと投げ渡した。
「使え、一級品の剣だ。」
ライルは剣を受け取り、その感触に驚きを隠せなかった。
「なんだこの剣は……。」
その剣をとるとライルはが力が湧き上がるような感覚を覚えた。
剣を見た父親らしき男は心の中でつぶやいた。
(あの剣もしや……。)
「剣に魂を込めろ。」
ヴァルトの指示に従い、ライルは剣に集中力を込める。剣が淡く輝き、周囲の空気を震わせるほどの威圧感を放ち始めた。
「突っ込め。後ろから援護する。」
ヴァルトの言葉に応え、ライルは雄叫びを上げながら突撃した。
父親らしき男はその勢いに対抗するべく剣を構えた。ライルの剣が激しくぶつかり合い、火花が散る。ライルはその力を込め、父親らしき男の剣を弾き飛ばし、彼の体に斬撃を入れた。その刃は深く切り込み、父親らしき男の体に鮮血が走る。
その直後、ヴァルトの稲妻がたたみかけるように放たれ、雷鳴が轟き、空が裂ける。稲妻は父親らしき男を直撃し、全身を焼き尽くす。激しい閃光が大地を照らし、光が収まると、父親らしき男とライルは黒焦げになり、その場に倒れ込んでいた。
ヴァルトは二人の姿を一瞥し、冷徹に呟いた。
「違う……こいつじゃない。」
その時、ゴルザから念話が届く。
「厄介な相手に遭遇した。加勢に来い。」
ヴァルトはその場を後にし、ゴルザのもとへ速やかに向かった――。