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4-2 開戦の狼煙

薄暗い控室には、重苦しい空気が淀んでいた。

時計の刻む音が、選手たちの準備を急かす。

壁に擦り込まれた赤黒い大きな染みは、まるで悲劇の証人のようだ。

微かな金属と汗の匂いが室内に漂い、選手たちの緊張感を高めていた。


ライルはベンチに座り、静かに目を閉じていた。

彼の心には試合への高揚と、大金を稼ぎ騎士に取り立ててもらう為の切実な希望が交錯している。

それは己の力を証明し、騎士への道を切り開くための戦いだった。


「ライル。どうした?緊張してるのか」

隣のベンチに座るオーウェンが、少し茶化すように笑いながら言った。


「集中してるんだよ。落ち着かないのはオーウェンの方じゃないか?」

ライルは、目を閉じたまま答えた。


「まぁ緊張するよな。こんなに大勢の観客の前で戦うのは初めてだ」

オーウェンが、落ち着かない様子で座ったまま膝を揺する。


「安心しろって、戦場に比べれば大したことないだろ?本来の実力が出せないと勿体ないぞ」

「そうだな…よしっ気を引き締めていくぞ!」


その時、係員の低い声が控室に響き渡った。

「第一グループの選手は闘技場へ入れ。その後、各自担当ブロックへ移動するように。」


ライルとオーウェンは別々のブロックだったようだ。

呼ばれた男達は静かに控室を出る。


闘技場へと続く通路は、薄暗くひんやりとしていた。

通路の奥からは、観客たちのざわめきが聞こえてくる。

ライルは深呼吸をし、心を落ち着かせ闘技場へと足を踏み入れた。


ライルは闘技場に出ると、眩しさのあまり目を細める。


闘技場には線が引かれ、四つのブロックに区切られていた。

それぞれのブロックは、観客席から見下ろすと、まるで碁盤の目のようだった。

過去の戦いの傷跡が残る闘技場の地面は砂埃が舞い、その臭いは選手たちの闘争心を刺激した。

選手達は割り振られた各自のブロックへ向う。


ライルは観客席に目をやる。

予選ということもあり、観客はまばらだと思っていたが、予想外に7割程度の席が埋まっているようだ。

観客たちはそれぞれの応援する選手に声援を送ったり、試合の行方を予想したりしている。


観客席の最も見晴らしの良いところ、普段であれば王族が座るその場所…

そこには金髪に白銀の鎧を輝かせる騎士がいた。

光を浴びたその佇まいは神々しささえ感じる。


「あいつが『剣聖』ベルナルドか…」


瞬きもせず直立不動で闘技場を見下ろすその姿はまるで彫刻のようだ。

透き通った瞳は何を見ようとし、その凍りつくような冷たい表情は何を考えているのか全く読み取れない。

ただ、その場にいるだけで周囲を圧倒する異質な雰囲気を放っていた。


顔を強張らせ、見上げているライルの肩に手を置きオーウェンが言う。

「流石にあいつはシードだろ…」

「さあな…まぁ、どの道まあ勝ち進めば嫌でも戦う相手だ」


オーウェンは闘技場内に視線を戻すと何かを発見したかのように言った。

「おいライル。あれがお前の初戦の相手じゃないか?」


ライルは、自分のブロックの選手を確認する。

「おぉ…ベテランって感じで強そうだ」


磨き込まれた鎧を身に着けたその男は、盾とショートソードを装備している。鍛え上げられた体躯からは、熟練の戦士であることが伺える。


「相手が誰であろうと、負けてなんていられない」

ライルは、闘志を燃やす。


「ライル、ブロックが別だったな。健闘を祈る」

「お前もな、オーウェン」


ライルとオーウェンはそれぞれ各自のブロックへ向う。

集中が深まっていくにつれ、ライルの耳からは歓声やざわめきが遠ざかっていく。


ライルの初戦の相手は、予想通り熟練の戦士だった。磨き込まれた鎧は、長年の戦いを物語っている。

斜に構え、ライルを睨みつけている。


「若造がこんなところで何をしている。さっさと帰って母親の膝の上ででも泣いていろ」

相手は嘲笑うように言った。


「母親はいない。そして泣くのはお前だ」

ライルは短く強い口調で答えた。


ライルの言葉に、相手は鼻で笑う。

「ふっ、生意気な口を叩くのも今のうちだ。すぐに後悔させてやる」


相手とライルの視線は絡みつく。

ライルは冷静に相手の動きを見つめ、剣を構えた。


試合開始の合図が鳴り響き、予選が始まる。

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