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3-4 操り人形の宴

王立医療棟の一室は、異様な静寂と緊張感に包まれていた。


中央のベッドには、無残にも両断された人物が横たわっている。

深紅に染まったシーツが、その悲惨さを物語っていた。


部屋には十数人の騎士が集まり、誰もが言葉を失い、ただベッドを見つめている。

棚に置かれた仮面が、不気味な存在感を放つ。

その横で、ヴァルトは冷たい視線をベッド上の遺体へと注いでいた。


「不審者の目撃情報は?」

ヴァルトの静かな問いが、張り詰めた空気を切り裂く。


隣に立つ騎士が、わずかに震える声で答えた。

「……ありません。

また、直近でこの病院に出入りした者は、メルラン討伐隊の負傷者とその関係者のみです。」


ヴァルトは深く息を吐き出すと、腕を組み、静かに思考を巡らせた。


(医療棟という閉鎖空間にも関わらず、目撃者がいないだと…。

犯人はこの場にいる誰かか?

あるいは医療関係者の中に紛れているのか…?)


ヴァルトは、アルバス殺害事件との関連性を指摘する。

「犯人はアルバスを暗殺した人物と同一人物である可能性が高く、目的は我々特殊部隊を狙っているのだろう。」


そして、アルバス殺害事件について質問する。

「アルバスの殺害に関して、何か分かった事はあるか?」


「はい、討伐隊から睡眠薬が検出されました。

おそらく食事に仕込み、寝静まった際に殺したのだと思われます。」


(アルバスほどの腕利きを殺害し、特殊部隊を狙う犯人……竜の仕業か?

睡眠薬を使うとは、討伐隊に紛れ込んでいたのだろう。

しかし、討伐隊の身元は全て割れている。

入れ替わったのか、それとも…)


ヴァルトは、騎士たちの顔を一人ずつゆっくりと見回した。


その時、グレンから念話での連絡が入る。

「就任式にゼブルの弟子を名乗る男が現れた。

そいつはイリスを竜化させ、イリスは自我を失い暴走している。」


「完全に竜化したのか?」


「いや、鱗に覆われた"竜人"といったところか。

術の最中にエレインが割って入り、竜化の術は不完全な状態だ。」


「グレン、その場からすぐに逃げろ。態勢を立て直せ。」

最後のセリフは伝わることなく、念話は途切れてしまった。


おそらく激しい戦闘に巻き込まれているのだろう。

ヴァルトの表情に焦燥が滲む。

(すぐ魔塔へ向かうべきか。

しかし、今この場を離れるわけには…)


魔塔は、騒然としていた。


エレインの操る石像たちが、イリスとジェイクを包囲しようとしている。


ジェイクは、石像たちの接近を阻むため、足元から壁を出現させる。

しかし、石像たちは拳で壁を粉砕し、ジェイクに迫る。

ジェイクは、至近距離から石像に螺旋の炎を放つ。


石像は頭部を破壊されるが、なおもジェイクに殴りかかる。

ジェイクは、咄嗟にバリアを張る。

しかし、石像の拳はバリアを打ち砕き、ジェイクを殴り飛ばす。


暴走するイリスは、高く飛び上がるとグレンに向かい急降下し、頭から体当たりしグレンを壁まで吹き飛ばす。

更に口を開け閃光を吐き追撃する。


イリスはグレンとの距離を詰めようとすると、周囲を石像達に取り囲まれた。

迫りくる石の津波に、飲み込まれそうになると、自身を中心に魔力を爆散させる。


イリスに最も接近していた石像は砕け散るが、その後ろの石像は片腕を欠損させながらも、イリスを取り押さえようと襲いかかる。


ジェイクは杖を持ち上げ魔力を集中させる。


中庭の隅でその光景を見ていたライルは、息を呑む。

(あの魔力…!あれは、メルランの言っていた"竜魔法"か…!?)


「人形ごときが…全て砕いてくれる!」

杖の先から放たれた光は、これまでどの魔法よりも遥かに強力だった。


光は無数の矢となり、弧を描きながら四方から石像たちを襲う。

それは雨のように降り注ぎ、光景はまるで流星群が落下するかのようだ。

光の矢が止むとそこに石像の姿はなく、瓦礫の山が残る。


ジェイクは荒い呼吸を繰り返しながら、エレインを睨みつけた。

「……ハァ…ハァ……。エレイン、次は貴様の番だ。」

「あらあら、石像がみんな壊れちゃったわね。」


エレインは手を掲げ、周囲に魔力を奔流させる。

次の瞬間、息絶えていた騎士や魔術師たちが、まるで操り人形のように立ち上がった。


「くっ…!化け物め…!」

ジェイクは肩で息を切らしながら、呻くように言った。


(依り代は、人の形なら何でもいいのか…?

あれじゃまるで死霊術師じゃないか…!)

オーウェンはライルの横でその光景を目撃し戦慄した。


死者の群れが、イリスとジェイクに向かって押し寄せる。

その光景は、まさに地獄絵図だった。

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