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3-2 魔塔の侵入者

ライルとオーウェンは、薄暗い路地裏で騎士らしき男に声をかけた。


「明日の魔塔の新首席就任式に、護衛騎士に紛れて潜入したいと相談したライルです……。」

「護衛騎士の制服や身分証は簡単には手に入らないぞ。」


男は警戒した様子で二人を見つめる。

ライルは懐から銀貨の入った袋を取り出し、男の手に握らせた。

男は銀貨の重さを確かめると、ニヤリと笑った。


「入る際に厳しいチェックがあるから、注意しろよ。」

準備しておいた護衛騎士の制服と身分証が入った木箱をライルに渡した。

「ありがとう。十分に注意します。」

ライルは頭を下げた。

「明日の就任式で問題を起こさないようにな。」

男はそう言い残すと、路地裏の奥へと消えていった。


「しかし、本当にこれで大丈夫なのか?あんな胡散臭そうな男に頼って……。」

オーウェンは不安げに言う。


「まあ、他にいい方法がないんだから仕方ないだろ。」

「しかし、金を渡す必要はあったか?

当日護衛騎士をふん縛って服と身分証明を奪えばいいだろ?」

「流石にそれはあんまりだろ、それに逃げられたらおしまいだ、リスクも高い。」

「ふむ、それもそうか。」

オーウェンは納得した様子で頷いた。


「よし、明日は頼むぞ、メルランの言う証拠を見つけるんだ。」

ライルはそう言い残すと、宿舎へと戻っていった。


翌日、ライルとオーウェンは、手に入れた護衛騎士の制服に着替え、身分証を携えて魔塔へと向かった。


魔塔は、中空構造の巨大な円柱であり、その中心には広大な中庭が広がっていた。

今日は、そこで新首席の就任式が執り行われる。

二人は、他の護衛騎士たちに紛れて、会場へと入場した。


(それにしても、すごい建物だな。)

ライルは、初めて見る魔塔の内部に目を奪われた。

(まるで巨大な鳥かごのようだ。)

オーウェンも周囲を見回し、感嘆の声を漏らす。


「あいつがなんでここに!?」


オーウェンの視線の先には、先日図書館で出会った魔女、エレインが歩いていた。

ライルも驚きを隠せない。

エレインは自分の事で騒いでいるライル達に気が付いて近づいてくる。


「どちら様?」

「いや、私たちは……。」

ライルは言葉に詰まる。


「あー、図書館の警備の仕事の際にあなたが書籍を無断持ち出ししたのを拝見しまして、それで、そのー、あなたに驚いていた次第です。」

オーウェンがとっさに取り繕う。


「何言ってるの、ホムンクルスの研究をすると伝えてあるわ。

勝手に持ち出すなとは言われてるけど…

人を犯罪者みたいに言わないで。」

エレインはやや怒りながら答える。


「しかし、エレインさんは、どうしてこんなところに?」

ライルが尋ねる。


「新しい首席、イリスに護衛を頼まれちゃったから、断れずに引き受けたの。

でもグレンがいるなら大丈夫でしょ、私はお飾りみたいなものよ。」

エレインは男を指さしていった。

そこには白髪で大柄な男が腕を組み立っていた。


「しかし、魔塔は不思議な所ねぇ、初めて見るものが沢山あるわ。」

3人は周りを見ながら歩く。


─ドンッ


周りを見て歩いていたせいかエレインは、魔塔の研究員とぶつかった。

その衝撃で、研究員は手に持っていた全長30cm程度の小型のゴーレムを落とす。

足元に落ちた小さな体にはヒビも入ってしまったようだ。


「あーーー!! ちゃんと前を見て歩かんかい!

ゴーレムが壊れたじゃないか、どうしてくれるんだ!」

「あらららら、ごめんなさいね、直してみるからちょっと待ってて。」

「ふんっ直せるものか、基本ゴーレムは作った当人の魔力でしか直せん。本人以外の場合は膨大な量の魔力が必要じゃ。」


エレインは額に汗をかき慌てて両手でゴーレムを拾い上げ、その小さなゴーレムに魔力を集中させた。

「う〜ん、う〜ん。」

「諦めろ、もう捨てるしか無い、弁償はしてもらうからな。」

研究員はエレインを睨む。


魔力を注ぎ込まれたからか、エレインの手の中でゴーレムのひび割れた部分が、まるで時間を巻き戻すかのようにゆっくりと修復されていく。

やがてひび割れは完全に消え、ゴーレムは新品同様の輝きを取り戻した。


「あっ、直ったわ。」

エレインはゴーレムを足元に置くと、ゴーレムは自立起動している。

「ゴーレムの扱いは得意じゃないけどひとまず安心ね、それじゃあ私はこれで失礼するわ。またどこかで会いましょう。」

エレインはそう言い残すと、中庭の方へと歩いて行った。


「他人のゴーレムを直すとは……、なんと言う高度な人形使いか……。」

研究員は唖然としている。

(先日のぬいぐるみといい、エレインは人形使いだな…。)

ライルはエレインの能力について思う。


ライルとオーウェンはメルランの部屋へと向かった。

部屋は綺麗に片付けられており、2人は捜索をはじめる。

ライルは壁沿いの棚を調べてまわる。

「女王の自殺の証拠は見つからないな、もう片付けられてしまったのか?」

オーウェンは、机の引き出しから何かを見つけ取り出した。

「手記を見つけたぞ、見てみよう。」

────────

X年X月X日

宝物庫で面白いものを見つける。

神木の枝だ。

杖に改良してみたところ、なんと魂の変換効率の良い事か、竜魔法は一日一発が限度だが、希少鉱石を消費する師の竜魔法よりも経済面で優れている。

ふむ、これは師を超えることができたと言っても過言ではない。


X年X月X日

神木の力に感嘆し、もっと深く知りたくなった。

調査を進めると、女王が神木に体を叩きつけ死亡していた事が分かった。

そして、王室が恵みをもたらすと崇めている神木だが…

まるで実りを食い尽くす魔樹ではないか…。


X年X月X日

近々、魔塔の首席が変わるらしい。

無能な首席の下では研究の効率が落ちる。

嘆かわしいことだ。

魔樹と化した神木をゲオルクを使い伐採し、現女王が影武者であることを暴露する。

そして、民の主導で王を決める国作りを目指そう。

ついでに魔塔の研究費を非課税にしてもらえば研究も捗る事だろう。

────────

「あいつめ、こんな事を考えてやがったのか、ゲオルクが巨木の伐採道具だったなんて…。」

ライルはため息混じりに言う。

「まだなんかあるぞ。」

オーウェンが引き出しから木箱を取り出す。

その中には1本の木の枝が大事に仕舞われていた。


中庭から声が聞こえてきた。

ライルは窓から覗くと既に就任式は始まっているようだ。

壇上には重役らしき数名が座っている。その中に虹色の髪を輝かせる女性がいた、あれがおそらく新首席なんだろう。


「続きまして新首席イリス様の挨拶です。」

虹色の髪の女が立ち上がる。


その時、中空構造の塔の最上階から何かが勢いよく落下してきた。

それはまるで、空から降ってきたかのように突然の出来事だった。

中庭は土煙が舞い、周囲がどよめく中、土煙が晴れるとそこにはローブを纏った1人の小柄な男が立っていた。

男はやや俯いており、顔にかかった髪でその表情は窺い知れない。

しかし、その男が放つ異様な雰囲気は、周囲の者たちに明らかに招かれざる客であることを悟らせていた。

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