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第三話:義兄さんにんと義妹

 魔界大戦を征し、エイミールの為に人界の花束を手に、アルファーレンが己が居城に帰ったのは、アマレッティとリアナージャが散々エイミールで(着せ替えごっこ!で)遊んだ後だった。

 「あ」

 アルファーレンを見つけて華のように微笑んだエイミールが、彼の元に駆けつける。

 「アルファーレンにいさま、お帰りなさいませ!」

 ・・・アルファーレンは瞬きすら出来なかった。

 瞬きするこの目がにくい。

 己が理性を最大限引き出して、エイミールの姿を焼き付ける。・・・目に。脳髄に。

 そうして、心行くまで堪能してから(顔色は一向に変わっていないが)敵と認識した輩に険しい眼差しを送った。

 常人の魔族なら凍りつくだろう眼差しに、だが、ふたりはどこ吹く風?そよ風?な感じで氷の眼差しを叩き落す。

 にやりと妖艶に微笑んだは、リアナージャ・ナーガ。

 前魔王の第三子にして、竜族の長。蛇淫の女王。

 「・・・なぜ、兄上がここにおられる・・・」

 彼が、さらりと流し見るは、アマレッティ。

 その目は、貴様の魔力はお飾りか?と言っている。

 その冷たい眼差しに怯みもせず、アマレッティは、にやにやと笑み崩れていた。

 「ん?リアナージャ兄上は、エミーの可愛らしさにノックダウンしたんだと!当初は魔界を掌握するつもりで、兄貴の結界抜けてきたらしいけど・・・」

 「あの程度の結界。わらわほどの実力者に掛かれば、ざるも同然!」

 えっへん!と。胸を最大限強調して威張る蛇淫の女王。・・・実力はあるのだが、なんか、違う。

 「寝室で眠るエミーの横顔見たら、魔界掌握なんかどうでも良いことに思えたんだと」

 「うむ。あの、ぱじゃまとやらも捨てがたいが、ねぐりじぇと言うのも捨てがたいからのう・・・。そうしたら、このイキモノが目を覚ましてのう・・・。可愛らしい唇で、りあなーじゃさま、と呼んでくれたのじゃ。ああ・・・。その可愛らしい事!たどたどしく、しかし真摯に名を呼ばれて、わらわは、久しく忘れていた股間の疼きを思い出したのじゃ!」

 がごんっ!

 にっこり笑いながら、アマレッティがリアナージャに容赦ない一撃を加えていた。

 「エミーの前で、いかがわしい言葉は慎んでもらおうかな。兄上!」

 それを見て、アルファーレンがため息をついた。馬鹿だ。

 おそらく結界術においてはアルファーレンを凌ぐ実力者である、リアナージャ。彼との決戦が勝敗を決めるであろうと思っていたのに。敵であるはずの男(女?)は愛しいエイミールを着せ替え人形にして遊んでいたなんて。・・・しかも、自分の居城で。

 保険をかけるつもりでたたき起こして手伝わせたアマレッティも、彼(彼女?)と息の合ったそぶりで笑い転げている。

 魔界で一二を争う実力者なのに、揃いも揃って、一人の少女に振り回されているなど。

 ああ、ちなみにその中に自分は入っていない。(当然だ。私はエミーに愛されているのだから!)

 気を取り直して、またエイミールを見つめる。

 ・・・可愛らしかった。

 着飾らせてくれた相手は気に喰わないが、確かにこのドレスはエイミールに似合っている。

 清楚、可憐な美少女が身に纏った淡い朱色の総レースの・・・。?いや、ちょっと待て。

 身動きするたびに、彼女の可愛らしい胸元がちらりちらりと垣間見える。

 しかもこのドレス!伸びやかな足のラインも、細い腰のラインも、あまつさえ!可愛らしい、お尻のラインも丸分かりではないか!薄い!薄すぎるぞ、リアナージャ兄上!

 名実共に己の物になった愛しい、愛しい、義妹。

 その彼女が、こんな扇情的な格好を、自分以外の者の前で晒しているなど!

 冷徹な眼差しが揺らぐ事はなかったが、静かに、低く声を出す。

 「・・・エイミール。生誕のお祝いに、私があげたドレスがあっただろう?あれを着ているエミーを是非見せておくれ・・・。そのドレスも似合っているが、あのドレスも着てくれないか?」

 そう。こんなドレスは、寝室で、私の前でだけ着ていればいいのだから。

 ついでに脱がせるのも、もちろん私だが。(それが、何か?)

 「はい!アルファーレンにいさま!」

 にっこり笑って駆け出したエイミール。その後を追うべくアルファーレンは踵を返した。

 立ち去る前に、冷酷な一睨みを忘れずに。

 まあ、睨まれたところで、竦む相手ではないが。

 にやにやと笑み崩れたアマレッティが、最早我慢できんと声を上げて笑い始めた。

 「くく、く。見た?見た?リアナージャ兄上!アルファーレン兄上の顔!!!」

 「うむ!このリアナージャ、とくと見たぞ!鼻の下がちょっこっと伸びておったな!」

 「あの!アルファーレン兄上の慌てた顔が拝めるなんて!あぁ、生きてて良かった!」

 「うむ!わらわも、生きているのに飽いておったが、まだまだ楽しい事があるのじゃのう!あのカワユイイキモノと言い、仏頂面のアルファーレンの惚けた顔!見ものじゃったぞ!」

 ぎゃはははは。と。

 高笑いの響く部屋をあとにしたアルファーレンは、エイミールの部屋へと急ぐ。

 はたして少女は。

 うんうんと、唸りながら小さいからだを伸ばしたり縮めたりしていた・・・。

 小さな腕が、背中のファスナーと格闘している。

 それを微笑ましげに見つめた後、アルファーレンはエイミールの背後に立ち、そっと、ファスナーを下ろしてやった。

 胸元を押さえつつ、振り返ったエイミールが、微笑む。

 「にいさま、ありがとうございます!」

 すぐに着替えますね?ちょっと待っててください!すぐににいさまの分のお茶の準備をしますから!

 「慌てなくていいぞ。エミー。あいつらはどうせ暇なのだからここに居るのだ。さ、腕を・・・よし。髪を上げていなさい。ボタンを留めてやるから・・・」

 「うう、にいさま、エイミール、ドレス一人で着れる様になる日が来るんでしょうか・・・」

 そんなふうに申し訳なさそうな彼女を前にすると、アルファーレンは居ても立ってもいられなくなる。抱きしめて、抱き込んで、誰の目にも触れさせたくないのだ。

 そして、思いのままに抱き込んでも、幼い彼女はアルファーレンの気持ちに気付かない。

 ただ、妹に対しての愛情表現だと信じて疑わないのだ。

 それが、歯がゆい。

 だが、やはり、幼い彼女に思いの丈をぶつけられる事は、やはり無く・・・。

 愛しい義妹を抱きしめて、その柔らかさ、芳しさを堪能するに留める。

 いつか、気付いてくれる日が来ると良い。

 この私の眼差しに。

 そうして私の元に来てくれれば良い。

 そのために。

 優しい、聡明で、頼りになる、ひとりの兄ではなく、男として見てもらえるように、精一杯努力をしよう。

 


結界術においては、ややリアにいさんが勝り、魔力戦、体術戦ではアルにいさんが断然トップ。

総合的な能力値もアルにいさんがダントツです。


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