第一話:義兄と義妹
あけましておめでとうございます。
今年も一年、よろしくお願いいたします。
占いの大鏡が壊れた。
それが、第一報だった。救いの女神の転生の知らせは世界中の王家に知らされた。
ガズバンドの大地に伝令の竜が飛ぶ。
各国王家直属の占い師達が占う。
けれども、女神生誕の知らせは入らなかった。
世界中の隅々まで調べられたが、そこに産まれた嬰児には女神の証がなかったのだ。
女神の証。胸元に赤く咲く五片の花の文様。
その年に生まれた女児は全て、全て調べつくされたが、一向に発見されなかったのだ。
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そして同じ頃、ガズバンドの地に在って、遠くはなれた魔界に、嬰児が誕生した。
魔界を統べる魔王の第675人目の皇女として。
その子供の胸元には赤い花のあざがあったとかなかったとか。
その子供は魔族として産まれたにしては、魔相がなく。
鱗もなければ、強靭な爪、牙もなければ、魔力もない、いささか、魔として頼りない子供だった。
しかしその美貌たるや、垂涎の的。
その、幼いながらも震えるほどの美貌に、かの魔王が、あろうことか。
「神よ!」
と讃える始末。
…ちなみに神を讃える言葉を残した魔王は、その瞬間石化し、魔力も消滅したそうな。
そして起こるは、魔王の座を賭けた血みどろの戦い。
魔王の御子600名余りが、血で血を洗う戦いを始めた。
魔界大戦の勃発であった。
だが、魔王の御子と言えど力の差は歴然で、心ある者達は、力があり知恵がある者の台頭を待ち望んでいた。それは日和見を決め込んでいた魔界の住人達をも巻き込んでの闘争。
五年に及ぶ戦いに幕を閉じさせ、それを征したのは。
魔王の第555番目の御子。
居並ぶ魔族の中で、最も美しく、もっとも残酷で、最も力のある・・・アルファーレン・カルバーン(以下もっとずらずらと名前が連なるけどめんどいのでパス!)
紅の貴公子。
冷徹の魔軍師。
冷酷の代名詞。
などなど。上げれば切がないほどの、二つ名を持つ、美貌の魔将軍閣下だった。
彼の正義は、自分。彼の行いこそが正義。彼を止めることの出来るものは、魔界ひろしと言えどもただひとり。
彼の君が溺愛するたった一人の義妹姫、(ちなみに妹、義妹は他にも200名ほどいる)名をエイミール・リルメル、(五歳)のみであった。
彼が、魔界大戦に参戦したのも、エイミールの存在があった。
それまでは大戦などどこ吹く風で、エイミール相手にお茶を楽しんでいた程で、参戦の意思はなかった彼。その彼を怒らせたのが、エイミールの去就騒ぎ。かの魔王崩御を誘発した美貌の赤子は彼女であった。あれから、五年。御年五歳の見目麗しい、華のような少女の存在が決戦の要となった。
かの大戦の引き金となったその美貌の姫を妃にと望んだ御子がいたことに端を発する。
なんといつの間にか、魔界大戦を征した者の戦利品のなかにエイミールの名があったのだ。
彼の君は烈火のごとく怒り狂った。その怒りは魔王の御子達を焼き尽くし、参戦していた兄弟姉妹を焼きつくし、殺しつくすまで収まる事はなかった。
アルファーレンにとって、エイミールは癒し。
アルファーレンにとって、エイミールは愛。
アルファーレンにとって、エイミールは全てであった。
愛しくて愛しくて愛しくて堪らない、義妹。
昔はなぜ血の繋がりがあるのだと憤慨し、父魔王を殺してやりたいほどに憎んだものだったが、(ま、憎んだところで相手は石…)その血の繋がりがあるからこそ、エイミールの無償の愛が受けられるのだとむりやり納得してからは、昼になく、夜になく、エイミールの笑顔のために、アルファーレンはこの五年を生きたのだ。
その愛しい義妹の名が、覇王となった者に与えられる戦利品の中に在った事。
身を焼き尽くす怒りの波動で魔界が大きく揺れたのを、彼は感じていたのか、いなかったのか。
彼が戦闘に参加して、一気に加速した戦火が、敵と見なしたものどもを焼き尽くすまでに要した時間は僅か、三時間。
五年を要した魔界大戦の終焉を、焦土と化した大地の只中で、彼が思うはなにか。
彼が、思うは…。
アルファーレンは愛しいエイミールにどう謝ろうかと、焦りながら考えていた。
なぜなら、今日はエイミールの生誕の日。
彼女の側で一日を過ごすと約束したのはつい昨日だったのに。
「三時間はちと、時間がかかりすぎたか…。エミーの好きな人界の花でも持って行ってやるか」
魔界がはた迷惑なシスコンに掌握された瞬間だった。
魔王にとって、エイミールは華。
魔王にとって、エイミールは命。
魔王にとって、エイミールは愛。
誰も彼を止める事は出来ない。
誰も彼を止められない。
ただ、ひとり。を除いて。
はい。
いかに美しくとも、実力があろうとも、冷酷無比で冷徹になれても。
妹命で、むしろ、近親相姦望んじゃってるあたり、だめじゃん!それっ!!って、突っ込んでもらえれば、作者としては、本望です・・・。
ってか、まじで、新年早々、変態でごめんなさい。