序章 4話
気がつけば半年以上更新してなかったという…。
本編を楽しんでみてくれたら幸いです。
「…ぁ、あぁ」
足が、動かない。エナを、たすけ、ないと、なのに…なんでっ、なんで、動かないの!
はやく、うごかないと、あのおおかみは、おなかがからっぽだから…あれ?わたし、なんで、”おおかみ”のことしってるの?あれ、わたしって⸺
『⸺助けてほしい?』
頭の中に響く、謎の声にハッとして、ふわふわした思考から離れる。謎の声なんかに構ってられない。早く、早く動いて、エナの前に立たなきゃ…。
『前に立たれたら、私が今、貴女に声をかけた意味がなくなっちゃうから、やめてほしいなぁ。・・・ねぇ、エレンちゃん、私と取引しない?エレンちゃんが望む幸せを、私が出来る限りの範囲で叶うお手伝いをするから、さ。私の存在を認めて、私に魔力をほんの少しだけ分けてほしいんだ』
・・・それに応じたら、エナを助けられるの?
『そうだよ。私が覚えてるモノだけになるけど、生活の仕方や魔法だって教えられる。どう?』
分かった…魔力ってどう渡すの?
『ほんのちょっとの魔力は私が持ってくから、渡し方を考えなくてもだいじょーぶ!』
⸺ふわりと身体の力が抜けて、目の前が真っ白に光って、光が無くなったら、色が抜けた狼が倒れた。
だけど、私の目が一番見ていたのは、金を糸にしたみたいなきらきらの髪に、月の光に照らされた夜の海みたいな青い瞳をまんまるにさせてる、私が一番、会いたくない奴が居た。
ぷつりと、私の意識が落ちる音がした。
◆◇◆
エレンちゃんから貰った魔力半分を使って、現実に出る。そして残りの魔力で、目の前にいる狼の魔力を全て、私が使いやすい魔力に変換させる。その過程で狼は絶命する。すまんなワン公、今の私は魔力必須の存在なんだ。一回外に出たら空気中に混じってる魔力をちょちょいと使って存在できるけど、そのちょちょいとするのにある程度魔力が必要なんだ。だから、自然の摂理だと思って…私を恨んでもいいさ。えっと…あれ、なんだっけなこの狼の名前…知らない種類、か。まずいな、私が持ってる知識が通用しない生き物が生まれてる可能性が出た。取り敢えず、世界における魔力の法則は変わってないことは直感で分かるから、その部分で私の自信を支えとこう。
てか結構魔力の質いいな…あの狼、正攻法で戦ったら負けてたかも知れんわ。
あっ、エレンちゃん顔青ざめてる。肩も呼吸に合わせて大きく動いてるし…急に走らせちゃったから疲れが出た?うーん、目線の先は・・・・・・あぁ、そういうこと。
目線の先の人物⸺人…物?まぁ人物でいいか⸺を見たからか、急に動いて一気に疲れたからか、あるいは二つともか、エレンちゃんはパタリと倒れた。そこはまぁ、予想できた範囲だ。狼から襲われた恐怖からか、エナちゃんも気絶したのはちょっと予想外だったな。
お、なんか知らない朱頭と蒼頭の男共が武器を構えて警戒しながら茂みから出てきた。いいねぇ、警戒って大事よ。
「おっ、お前は誰だ!」
朱頭が言葉を発した。辺りを見回す。彼らと二人の姉妹が倒れてるだけで他に誰もいない。⸺っすー・・・。朱頭と蒼頭の方に身体を向け、自分に指を向ける。
「えぇ、あなたです」
蒼頭が肯定する。⸺・・・誰、か。確かに、今の私を明確にするって意味でも、この質問に答えてみようかな。
あ、喋れるかな?まぁ発声出来なかったら出来なかったでいいし、試そうか。
『私は…今の私は、バラン。幽霊、が一番近いかな』
「えっ、ゆー、れい?・・・・・・ん”ん”っ”!?!?!?」
「えっあっちょっ、シ、シン!?えっとあの、すみません!こちらの朱髪の男は、幽霊などに恐怖心をもってまして」
「こ、怖くなんかねぇから!!!おいカイ!お前の方が怖がってるだろうが!」
「いえ。私が恐怖心を持っていたのはもう10年も前ですよ」
「じゃあアラン、お前はどうなんだよ!!!」
「実在してるモノに怯える必要ある?」
「はぁ!?!?!?」
・・・・・・凄く楽しそうなやり取り。いいなぁ…羨ましい。⸺って、そんなことに思考回してる暇があったら気絶した姉妹を安全な所に連れてかないと…まぁ、アラン居るし、朱頭と蒼頭の二人も悪い人じゃなさそうだし丸投げ、じゃなくて、お願いしよう。
『あの』
「どうかしました?」
蒼頭が反応する。丁寧な言葉遣い、こういう人は好感が持てる。⸺あくまで関わりたい人って意味で恋愛的な好きじゃないよ。いや、私は誰に向かって言い訳を・・・⸺って、また思考がそれた。よく脱線しちゃうなぁ、マジで。
『この二人、安全な所で寝かせてあげたいんですけど』
「なるほど・・・分かりました、いいですよ。貴女も一緒に行きますか?」
一緒に行っていいんだ。まぁエレンちゃんから離れるメリットなんかないし、行くかな。
『行きます。二人のことが心配なので』
「はぁ!?女の子二人はともかく、俺はこのユーレイと一緒なんか」
「シン、大人げない。エレ⸺緑髪の方は俺が背負うから、シンかカイは黒髪の方背負ってあげて」
「えぇ、分かりました」
「おい!」
「口うるさいシンの意見は聞いてません。では参りましょうか」
へぇ…アラン、エレンちゃんのこと、忘れたわけじゃないんだ。ちょっと見直したけど・・・結局なぁ。うん、やっぱり私の中の評価は変動無しだ。
と、言うわけで私は、アランとシンとカイの三人にふよふよとついて行った。⸺移動の仕方とか見た目とかで、完全に幽霊じゃないですって否定しづらい…正確には幽霊じゃな、いや…幽霊は否定しなくていいか。
次回更新は秋になる前には更新します。
以降更新に関する言い訳
三月に書いて四月頃にだそうと思ってたら三月結構バタバタしてまして、四月は四月で生活リズムが変わって忙しく、五月六月は長編モノを書くモチベーションがあまり無く…まぁ、はい。更新が遅くなってすみません。流石にこれからは半年以上未更新なのは無いよう頑張ります。