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魔女見習いと恋をして

「ユウは魔法陣に魔力が通ったら帰っちゃうんだよね」

「そうだね」

「それが明日なら、帰るかもしれないけど、1年後だったら?

 10年後だったら…どうかな?」


「どうかなぁ、1年後だったら僕向こうで1年間行方不明だったってことだよね」

 全然想像がつかない。


「どこにいても僕に居場所はないからさ、弟子といっても仮住まいだしね。」

 カヨを見ると、唇を噛んでものすごい表情で僕を睨みつけていた。


 ぎょっとしていると、カヨは絞り出すように震える声で言った。

「ほんとうに…」

「ほんとうに居場所がないなんて言っているの」

 悔しそうな、苦しそうな表情でカヨが言った。


「だって、僕こんなのだよ」

「だれもちゃんとユウを見てくれていなかっただけよ」


「僕気持ち悪いでしょ」

「かわいいよ」

 泣くもんか、と思っていても目の前で邪魔なものがゆらゆら揺れる。


「女なのに女の子が好きなんだよ」

「人をみて好きになれるなんて素敵よ」

 声を出そうとするとひゅっと喉が締まってしまった様に声がでない。


 断られる理由を探して、体中の筋肉という筋肉に力を入れてなんとか声を絞り出した。

「女同士だったら赤ちゃんもできないんだよ」

「そっちはそうかもしれないけどこっちは違うのよ」

「ここにいるのも帰るまでのただの仮住まいだし」

「じゃあ、あたしと姉妹になりましょう」


「ユウはあたしのこと嫌い?」

 好きだ、と言おうとするとキモチワルイと夢で言ったカヨがフラッシュバックする。

 胃がぎゅっと握りつぶされて胃が暴れだした。

 内容物が上がってくるのを感じて喉に力をいれて押し戻した。

 これじゃあ、カヨに言われて吐き気を催してるだけに見える、と焦り、カヨをみた。

 心配そうに僕を見るカヨ、誤解を解こうと手をのばす僕の手を握って、微笑んだ。


 カヨの励ましで呼吸が整ってきた。

 勝てる試合にだけ参戦するみたいでかっこ悪いけど、聞く前から答えももらったようなものだった。

 

 テーブル越しに向かい合った僕とカヨ。

 僕は両手でカヨの手を握った。


 涙をためたまま優しげに僕を見つめるカヨの綺麗な銀色の瞳に勇気が湧いてきた。

 

「カヨ」

 とまっすぐに目をみて言った。

「ユウ」

 優しく微笑んで答えてくれた。


「好きだ」

「あたしもよ」


「2人で魔女になって、いっぱい冒険したい」

「僕はカヨがいる世界で生きたい」


「ずっと一緒にいよう。姉妹じゃなくて、二人で、一緒に」

 というと

 涙をいっぱいにためたカヨが大きく頷く。

 溜まった涙が落ちてテーブルに染みを作った。


 しばらく声を殺して泣いたカヨは震える声で

「婚約の証を作る素材から集めないとね、2人分だから大変だよ」

 嬉しそうに笑った。


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