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異世界で朝食を

「そうなんだ、あたしのひいおばあちゃんも異界から移民してきたのよ」

「あの魔法陣まだ動くんだなんて知らなかったよ、いつ帰れるかわからないと困っちゃうね」

 何が面白かったかわからないけれどそう言ってクスリとした。

「こっちで暮らせるように仕事と家を探さなきゃいけないんだから笑い事じゃないのよ」

 おばあさんが(たしな)めた。


「あら、そうね、ごめんなさい」

「ではお詫びにカヨにはユウと一緒に素材の収集をお願いしましょうかしらね」

 カヨに張り付いてしまった視線を無理に引き剥がしておばあさんに視線を移した。


「えぇ? ユウ、背も高くないし、腕もこんなに細いのに魔獣と戦えるの?」

 とカヨが不安げにいいながら僕の肩とか腕をぐにぐにと確かめるように揉んだ。


「ワキザシ貸してあげたし、旅慣れてそうなユウなら鞄になにか入ってるんじゃない?」

 と、目を好奇心で輝かせながらおばあさんが言った。


「こんなに細い腕で振り回せるのかしら」

 とカヨが呟くと、おばあさんが笑った。

「振り回して転んで怪我したカヨがいうと説得力があるね」

「子供の頃の話じゃない、もう」

 カヨが抗議の声を上げたカヨは昔から元気いっぱいな子だったんだな、とカヨを眺める。


「まあ、廃墟めぐりで色々危ない目にも会いますからね、備えはいくつかありますよ、なんたって僕はこの通り体も大きくないし力もないですからね」

 リュックを開けてテーブルの上に持っている護身用具を広げた。


「これがスタンガン、催涙スプレー、特殊警棒、折りたたみのスリングショット」

「確かに異界のものだね、何一つ見たことないよ、で、どう使うんだい?」

 おばあさんが驚きを隠せず好奇心にあふれる瞳で僕に言う。


「スタンガンは電気で攻撃する護身具ですね、このボタンを押すと威嚇でこのボタン押しながら敵に押し付けると電気で不届きものを倒すんですよ」

 と、言いながら威嚇ボタンを押すと、いつものバリバリとしたものではなく、目がくらむほどの電気の火花が弾け、床を歩いていた虫に直撃し煤のあとだけを残して消失した。


「いや、威嚇用の電気はこんな威力がでるもんじゃないのです」

 驚いて誤解を解こうと喉から声を絞り出した。


「どれ、貸してごらん」

 おばあさんはスタンガンを受け取ると、ボタンを押さないように気をつけながら弄び、一人で納得して口を開いた。


「属性を持った異界のものはこっちに来ると持ち主の魔力と精霊の干渉で強力になるようだね」

 そう言って返してくれた。


「ユウ魔力あるんだってさ、よかったね」

 カヨが微笑んだ。


「これはどんなものだい?」

 と催涙スプレーを指差した。


「それはただの辛い成分だけを集めた水を噴射して目潰しをするものなので属性はなさそうですね」

 僕がそう答えると、ものすごくがっかりした表情を浮かべてそうかい、と言った。


「そっちは伸びるだけのただの棒で、こっちは礫を飛ばすための道具です」

 というとがっかりが加速していたので、フラッシュライトを出して

「あ、あとは暗い道を明るく照らすランタンみたいなものですが逆に持つと鈍器になりますね」

 ランタンということは火属性と言いかけたおばあさんに失礼と思いつつ盛り上がってからがっかりされては可愛そうなので

「火は使わずに電気の力で光るんですよ」

 と言った時、ふと、フィラメントが燃えるて光るから火属性かもしれない、と疑問が浮かんだ。


 カヨは飽きて特殊警棒を伸ばしたり縮めたりして遊んでいた。


「もしかしたら火属性もあるかもしれないので調べてもらえますか」

 と言い直すと、ぱああっと明るい表情になったおばあさんは早速フラッシュライトを弄くり始めた。


「今ここに魔力がないとか弱い人がいないから試しに動かして見れなくて残念だね」

 と独り言をいうと、実際に使うとしたらどうするんだい? というのでここを(ひね)るんです、とちょっとだけ動かしてみた。


「うーん、火の精霊の気配も感じるんだけど、やっぱり光の精霊かね」

 光の精霊! ちょっとレアっぽい! と興奮していることを鎮めながら

「何ができるんですか?」

「ゴーストやレイスに効くね。あとはヴァンパイアなんかの闇の住人だね。」

 と教えてくれた。


「いいね! いきたい!」

 闇の住人と戦える!と興奮したカヨがはしゃいで言ったが

「そんな危ない場所になんか孫娘と友達を向かわせるわけないだろ? 未熟な腕で行っても取り込まれてしまうだけさ」

 と怒られ、思わず苦笑いをしてしまった。


「じゃあ、スタンガン以外は使い物にならないんですね」

 と聞くと、まあ、そういうことだね。という返事をもらった。


 一通りみて興味を失ったおばあさんが

「今日はうちに泊まっていくといい、それよりせっかく魔力があるんだ、カヨと同じくらい使えるようになってくれると仕事が頼みやすいからね」

 部屋はあの部屋を使いな、と言って指差した。


「がんばってね、ユウ」

 カヨは僕の頭をぽんと叩くと、

「じゃあね、おばあちゃん、ユウの準備ができたら教えてね」

 と帰ってしまった。


 今日のご飯はせっかくだから異界の食事がしたいというおばあさんに、湯煎で食べるご飯と、醤油味の魚が受け入れられるか不安だったのでレトルトの親子丼の元を出した。


「なかなかおいしいね、 カヨも食べてから帰ればよかったんだけど、あの子は修行が嫌いだからよく来るくせにすぐ逃げたがってね」

 さっさと帰ってしまった孫娘が出ていった扉を見つめていた。

「まだあるんで明日にでも一緒に食べましょう」

 というと、気前のいい事だね、嬉しそうにしていた。


 その日は向こうの話しを少ししておばあさんの就寝時間に合わせて貸してもらった部屋に入る。

「明日から働くために色々覚えてもらわないといけないからね」

 と言われ、しょうがなく寝ることにする。


 少し硬いベッドで寝られるかと心配だったが野宿より快適だったので普通に寝られてしまった。


 次の日は早すぎる就寝時間に対して案の定、日の出より早くに目が覚めてしまったので、もし出歩けそうなら散歩でもしてみようか、と思って身支度をして部屋から出てみると、すでにおばあさんは起きて朝ごはんの準備をしていた。


「おはようございます、なにか手伝いますか」

 そう申し出てみたが、まだお客様だからね。

 と言って、座らされた。


 しばらくすると、具の少ないすいとんの様なスープが出された。

「向こうに比べたら豪華じゃないかもしれないけど我慢しておくれね」

「いえ、とてもおいしそうですね」

 一口食べると、丁寧に出汁を取って作ってくれているのがわかる。

「お出汁がいいし、久しぶりに食べたすいとん、おいしいです。小麦がいいんですかね」

 と感想をいうと、そういえば、すいとんはそっちの料理だったね。

 スートン?すいとんか、小麦粉混ぜて茹でるだけならどこにでもありそうなものだけど、と聞いてみると、子供の頃に小麦粉が持ち込まれたのがここ200年くらいの話しで、それまでは芋や根菜が多かったという話だったね、と、言っていた。

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