部活見学の誘い
中間考査が迫っている4月の中旬の放課後を迎えた。
部活見学の期間が数日後には終了することを改めて告げられ、塔洞が私のもとに駆け寄ってきた。
「ねぇ、なっちゃん!仮入部の期間が終わるまででも良いから、一緒にバレー部を見学しよ〜ねっ?お願いぃ〜なっちゃん!ねぇねぇ〜」
塔洞が私に両手の掌を合わせ、懇願する。
「でも……バレーに興味無くて。ごめんね、塔洞さん……私、今日は——」
私は申し訳なく弱々しい声で断り、肩に通学鞄を提げ、片足を踏み出した刹那に——塔洞の片手がすかさずに私の片手の手首を掴んで逃げることを阻止される。
「たった数日だよ、なっちゃん。私、嫌い?お願いだよ、なっちゃん。他には無理なおねだりはしないから、なっちゃんの好きな物奢るって、約束するからさ。お願い」
私は塔洞の潤ませた瞳を見せた懇願に、抵抗を諦めて掴まれてない右手を頭より宙に挙げて降参の表明をした。
「わかったよぅ……行く。行くから、手ェ離して。狙いって私のから——」
「ううん、違う違うっ!そういうんじゃなく、純粋にバレーをなっちゃんとやりたいのっ!ね、その疑う目ェで見ないでよぅ……傷付くってぇ、なっちゃん」
顔の前で両手を振って、否定した彼女が今にも泣き出しそうな震えた声をあげた。
「わかったわかった、行こっ塔洞さん」
教室に残っていたクラスメートの視線が気になり、塔洞の片手を引っ掴み教室を出て行く私。
「なっちゃん、ありがと!」
私は彼女を連れて廊下を駆け、体育館へと急いだ。
体育館に到着し、女子バレー部の先輩達の指示に従い、荷物を指定されたスペースにおいて、体操服姿になって女子バレー部の仮入部でのメニューをこなした私だった。
塔洞は上機嫌に部活のメニューをこなしていた。
私は汗をかいた身体を気にしながら、息を切らしながら塔洞に付き合った。
私は塔洞と共に最終下校時刻の15分前に校舎を抜け、下校した。
私は塔洞のスキンシップに辟易しながら、帰路についた。