異世界での戦闘
総長 45歳 172cm 65kg 女
大樹の間を出た坂倉は地図を開いた。
「西に王都か。」
坂倉は進む方角を見た。
目の前に映るのは草原ばかり。
「とにかく進むしかないな。」
地図をしまって歩き出した。
ポケットに手を入れた時、何か固いものが触れる感触がした。
「これは、携帯か?」
ポケットから出てきたのは二つ折りのガラケー携帯だった。
「ずいぶん古いな。」
開いてみると電源はついていた。
待ち受け画面は真っ白であった。
「...。」
坂倉はとある番号にかけた。
コールが鳴る。
あまり期待をしていなかったが電話に出る音がきこえた。
「もしもし?」
女性の声が聞こえた。
「総長か。」
「その声、坂倉君!?」
総長と呼ばれた女性から驚きの声が聞こえた。
「あなた、生きていたの!?」
「いや、死んでいる。」
坂倉はためらいもなく答えた。
「ど、どいうこと?あなたは坂倉君で間違いないのよね?」
「あぁ。」
「説明してもらえる?」
総長は戸惑いを隠せていなかった。
坂倉は女神の言っていたことをざっくりと説明した。
「つまり、あなたはあの核爆弾で死んでしまったけど異世界に転生したと言うの?」
「信じがたい事実だが、そうだ。ただなぜこの携帯の電波が届いているかは知らん。」
「...。」
総長は数秒沈黙した後、電話越しにため息が聞こえた。
「はぁ。にわかには信じがたいし、まだ信じ切れていないけれど、理解したわ。」
「そうか。お前にそう言ってもらえるだけでまだマシだな。」
総長は優しい声でつづけた。
「坂倉君、直接的な手助けはできないけれど、なにかあれば連絡を頂戴。」
「あぁ。感謝する。」
それだけ言って電話を切り、そのまま携帯をポケットにしまった。
「あの人は変わらないな。とりあえず王都に行くか。」
坂倉は歩きだした。
少し歩いた後、一つの小屋を見つけた。
「小屋か。何か使えるものがないか見てみるか。」
坂倉は小屋の扉に手を伸ばし、開こうとしたが開かなかった。
「...。」
人のけ気配はしないが、放置されているわけではないことを考え、その小屋を後にした。
西の方角の道を見ると馬車が通った後があった。
「なるほど、この世界は物資などを馬車を使って運んでいるのか。」
改めてこの世界が異世界であることを実感させられると考える。
再び歩き出すと近くの草が揺れた。
坂倉はすぐに銃を構えた。
出てきたのは青い液体状の魔物であった。
「全く、つくづく異世界であることを理解させられるな。」
坂倉は容赦なく銃弾を放った。
魔物は銃弾に当たり分裂をするが、すぐに元の姿に戻った。
「スライムが意思を持つとここまで面倒とはな。」
坂倉は冷静にスライムをみた。
そして液体の中に何か固い固形物があるのを発見した。
「私の考えが間違ってなければ...!」
坂倉は固形物を狙いを定めるため、じっと構えてその場を動かなかった。
スライムは坂倉があきらめたと思い、突進してきた。
「ふん!」
坂倉は突進してくるスライムに銃弾を放つ。
そして銃弾はスライムの中にある固形物に命中した。
「感情任せに突進などするからだ。」
坂倉は言い捨て銃をしまった。
スライムの死骸に近づいた。
固形物を拾うとその固形物は茶色に光っていた。
「この世界では銅みたいなものか?」
茶色の固形物をポケットにしまった。
「異世界でもこちらの世界の先方が通じるとはな。」
坂倉は元の世界のことを少しだけ思い出したがすぐに首を横に振った。
「今は王都を行かねばな。」
カバンをかけなおして歩き出した。
次回は王都に入ります。