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白の聖騎士、ワンパターン

 レオナルドと感動の再会?を果たした白雲だったが、とりあえずマリーがタンク家で預かることになった。


 せっかく馬商人を利用して密入国をしてまでレオナルドと合流した白雲だったが、レオナルド達が隠れ家にしているレオナルドの実家は普通の民家であり馬を飼うだけの広さはない。その点、大貴族であるタンク家では十分な広さがあり、厩舎も充実しているので白雲の居場所には事欠かないのだ。


 レオナルドとしても最高の相棒と離れるのは断腸の思いだったが、現状はどうしようもない。


 そして愛馬と別れるとなるとレオナルドには当然しなくてはならないイベントがある。


 これで何度目かになる白雲との別れのシチュエーションポーズ(白雲の眼を見ながらそのたてがみを撫でるいつものあれ)をしながら、

 

 「またお前の力を借りる時が必ず来るだろう。それまでマリーのところで待っていてくれ。頼むぞ、我が友よ」


 と前にも言ったような『イイ感じのセリフ』を言っている。


 このシーンを初めて見るはずのマリーは(やれやれまた始まった)といった感じで見ているが、ちょっと前に同じシーンを見たはずのレイミアは普通にしんみりしている。


 レイミアは高慢でマイペースな反面、お嬢様育ちの世間知らずなので意外とお人好しなところがあるのだ。なにしろレオナルドの事を気に入らないと思いつつも『気高い人物』だと勘違いしているくらいだ。


 そんなレイミアの様子を見て、


 (おっ、レイミア嬢はわかってるねえ。心の通じ合った愛馬との別れのシーンはそうやってグッとくるのが普通なんですよ。それが心ある人ってもんだよ。・・・それに比べて我が妹は感動するっていう回路が断線してるのかね、全く。人としての大事な何かが欠落してないかなあ。誰に似たんだか)


 もしこのレオナルドの心の声をマリーが聞くことができたら「兄さんに似てないのは間違いないけど、私がこうなったのは兄さんのせいなんだけどね!」と反論しただろう。


 ただレオナルドとってもマリーにとっても幸運な事にマリーにはレオナルドの心の声は聞こえない。ただなんとなく


 (兄さん、また変な事考えてるんだろうな)


 と不快な思考を受信していた。そして、気前よく引き受けたものの


 (兄さんの愛馬かあ。確かに白雲はよく訓練されているし、騎士の乗騎として申し分ない馬なんだろうけど、なんかひっかかるのよねえ。馬版の兄さんというか。なにか問題を起こさないといいけど)


 白雲をタンク家の厩舎に入れる事に一抹の不安を抱いていた。



                                     *                         

      


 再会してまたすぐに別れる事になった白雲。はたから見たらレオナルドが『イイ感じのセリフ』を言うために利用されたように見えたが、


 (旦那。それでこそ旦那です。この状況を作れただけでも俺がここに来たかいがあったってもんですよ!)


 と心底満足していた。


 レオナルドが『イイ感じのセリフ』を言うために利用されてもその事を心から満足できる。それがレオナルドの最高の相棒である白雲なのだ。


 それに今回のタンク家の厩舎に入りは白雲自身にとってもメリットはある。


 青の聖騎士クレディとレオナルドは戦場を共にすることが多かったので、自然と白雲はクレディ付きのタンク家の家臣たちの馬たちとも顔なじみになっている。


 これから白雲がお世話になるタンク家の家臣の馬がいる厩舎には白雲にとって顔なじみの馬も多いのだ。つまり、


 (俺の武勇伝を聖王国の馬たちにも話せるんだよなあ。いやいや、俺が無理に話すわけじゃないぞ。自分から話さなくても、みんなが聞きたがるだろうからな。俺も仕方なくって感じで話すとしよう。あえて俺の活躍じゃなくてレオナルドの旦那の活躍を話すことで暗に俺も活躍してたって伝わるだろうし。裏方の仕事、だがそれが英雄を支えていた・・・それがカッコいいよねえ!)


 そんな事を白雲は考えていた。本当に似た者主従である。


 この白雲の妄想ともいえる考えだが、結論から言えば現実になる。


 数日後、タンク家の厩舎係は原因不明の異様な興奮状態におちいった馬たちの突然のいななき(さすが白雲さんカッケー!)に悩まされることになる。


 マリーの嫌な予感はしっかり当たったのだった。

 



今回は区切りの関係で短めです。そのかわり来週は長めになる予定です。

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