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白の聖騎士、再会する

聖都を歩いていくにつれてレイミアはある事に気づく。


「あの格好を見ても思うけど、とても戦争中の国とは思えないわね。帝都でも最近は少し緊張感があるくらいなのにここは全くそんな感じが見られないわ」


 帝国の首都である帝都も普段とそう変わりのない状態ではあるが、聖王国率いる神聖同盟との確執が深まるにつれて少しづつ殺伐とした雰囲気が出てきているのを感じていたがこの聖都は全くそんな様子を感じさせない。


 「聖都は1000年以上の歴史がありますが今まで敵に攻め込まれた事がありませんからね。市民たちは戦争に対して実感がないのかもしれませんね。私は聖都にいますからこれが当たり前だと思っていましたが、レイミアさんから見たらやはり違和感を感じるのものかもしれませんね」


 「これだけ大きな都市が一度も戦火にまみれたことがないの?」


 「ええ。少なくとも記録に残っているものではありませんね」


 「侵略国家じゃないのに?」


 「・・・そのはずです」


 レイミアのちょっとした皮肉にマリーも口ごもる。


 侵略国家なら相手の国に攻め込むので首都が攻め込まれていないのもわかるが、帝国の事を侵略国家だと思っている聖王国がむしろ一度も他国から攻め込まれてないのはおかしいと言いたいのだ。


 気落ちした様子のマリーに、レイミアは話題を変える。ここでマリーを責めても意味がないと思ったのだ。


 「ところでマリーさん、そのレイミアさんってのやめてくれない?マリーさんとはそんなに歳も違わないし、むしろあたしの方が下じゃない?レイミアでいいわよ」


 「わかりました。レイミア。では私の事もマリーと呼んでください」


 レイミアとマリーがお互いの距離をイイ感じに縮めようとしている時に


 「私もマリーと呼ぶことにしよう」


 レオナルドが無理やり口を挟んでくる。


 これは場を和ませようという意図いわゆるボケがあったわけではなく、単純に自分の出番の少なさに危機感を抱いて(俺もいるよ!)という発言だったが、


 「いや、兄さんは元々マリーって呼んでるでしょ」


 何を言っているのとばかりに即座にマリーに否定される。


 「そ、そうだな」


 レオナルドはそう答えながらも気付いていた。


 この妹が現れてからまともに『イイ感じのセリフ』を言う事ができなくなっている事を。


 それはマリーが『イイ感じのセリフ』を無効化する能力をもった『無駄のないセリフ』能力者であるためにこういう事態におちいっていた。


 レオナルドほどの『イイ感じのセリフ』を言う力をもってしてもマリーの強力な『無駄のないセリフ』を打ち破れないでいた。


 (マリーの『無駄のないセリフ』は強力だ。俺一人の『イイ感じのセリフ』言う力ではどうにもならない。こんな事態に備えてレイミアという『イイ感じのセリフ』を言いやすいメンバーを連れて来たのだが、今みたいに勝手に『イイ感じのセリフ』をマリーと言い合う始末だ。やはり確実に俺の『イイ感じのセリフ』をサポートしてくれる存在が必要だな。こんな時、『あいつ』がいたら・・・)


 レオナルドがそう心中で愚痴っていたまさにその時に『あいつ』は現れた。


 一目散にこっちに駆けてくる白馬。ここにいるはずのない『あいつ』だ。


 「白雲じゃないか。いったいどうやってここに来たんだ?」


 信じられないといった言い方をするレオナルドだが


 (さすが白雲!お前なら必ずやってくれると思っていたぜ!)


 と心の中では白雲への全幅の信頼を寄せていた。


 聖都に来る前に別れた白雲がどうしてここにいるのか。それを語るにはしばし時を戻す必要があった。


                             *


 レオナルドが『聖騎士の道』で旅立った後に白雲はレオナルドの部下から逃げ出していたのだが、目的もなく逃げ出したわけではなくあるものを探していた。


 白雲は馬として脚力も優れていたが、それ以上にこの馬はかなり考える力がある。信じられない事だがそれはある一点については人間以上の知恵があった。レオナルドと共に目立つためにどうすればよいか、その一点である。


 (さーて、あれはどこにいるかな?臭いで探すか?俺はそれなりに嗅覚があるからそれも可能かもしれないが、一番はやはりカンだな!レオナルドの旦那も言っていたもんな。『いざというときはカンに頼れ!選ばれし者ならそれで上手くいく』って)


 普通に聞いたら無茶苦茶なセリフだがレオナルドが言うと妙に説得力がある。そして白雲は『選ばれし馬』だったようで、


 (いた!こんなに早く発見できるなんて!俺ってついてる!)


 10分も走らないうちに白雲が発見したのは馬商人の一隊だ。それも進行方向からして聖都に向かっているのがわかる。


 (過度に強欲でもなく、かといって甘すぎるところもないような、商人としていい顔しているな。これならいけそうだぞ)


 馬商人の顔を見定めると白雲はゆっくりと歩いて、甘えるように近づいていく。


 そんな白雲を不思議そうに見ていた馬商人だったが、


 「ずいぶん人懐っこい馬じゃないか。しかし、鞍をのせたままだという事は主人から逃げ出したのか?それとも主人を亡くしたのか?せっかくだから連れて行こう。立派な馬だから持ち主が現れたらいくばくかのお礼をもらえるかもしれないし、そうでなければ売ってもいいだろう。これから行く聖都は軍馬を集めているし、きっと高く売れるだろう」


 まんまと白雲の術中にはまってしまう。まさか馬がたくらみをもって近づいているとは思っていない。


 白雲のたくらみはこうだった。


 『聖都に向かう馬商人の群れに紛れて聖都に侵入しちゃおう大作戦!』


 こうして白雲は馬商人に連れられて難なく聖都の門を突破していたのだった。


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