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白の聖騎士、聖王国潜入作戦会議を開く

レオナルドは自室に聖王国行きのメンバーを招集していた。聖王国潜入計画のための作戦会議を兼ねた顔合わせのためだ。


 もっともレオナルドとシンゴはメンバー全員と面識があるのでお互いに初顔合わせになったのはタイユフールとレイミアだけだ。


 「このあたしがメンバーに加わってあげるのよ!光栄に思いなさい!」


 レイミアは開始早々に意味もなく威張っているが、他のメンバーの三人のリアクションは静かなものだ。


 レオナルドは心中(よっしゃー!レイミアきたー!こいつの言動は『イイ感じセリフ』が出しやすいんだよなあー。さすがボードワン将軍、いい仕事してくれるぜ!)と歓喜していたがいつものように外面は平静を装っていたし、シンゴはもともとその実力の高さから誰に対しても常に余裕を感じさせる態落ち着いた態度だ。タイユフールも饒舌ではあるが物事を客観的に見るタイプなのでレイミアな突飛な行動にも騒がしく驚いたりしない。


 「第三軍団からはレイミア様だけですか?」


 帝国からのお目付け役にはそれなりの人数がつくと思っていたタイユフールは疑問を投げかける。


 「そうよ!あたしがいれば問題ないわ!」


 堂々と答えるレイミアの態度に、


 (お目付け役が一人ですか。レイミア様は確かに強くて帝国に対する忠誠心が高いようですがそれでも一人しかいないのは意外ですね。なにか裏があるのか・・・)


 タイユフールが勘ぐっているようにボードワンも当初はレイミアに第三軍団から数名の部下を付けるつもりだったがレイミア自身が拒否したのだ。


 レイミアいわく、「あたし一人で十分よ。おじい様。仮に聖王国でレオナルド達が裏切ったとしても聖剣を持ったシンゴ様がいれば問題ないし、お付きのタイユフールもあたしが相手すれば抑えられるでしょ。今回の潜入作戦は目立たないためにも必要最低限の人数で行く必要があると思うの。だからあたしとシンゴ様だけでいいの!」という事らしい。


 ちょっと考えればかなり無理筋な話だが孫に甘いボードワンは「なるほど、確かにレイミアの言う通りじゃ!さすがわしの孫!知恵者じゃ!」と妄信的に納得している。


 実際、レイミアはもっともらしい事を言っているがシンゴとの旅に余計な人数を増やしたくなかっただけだ。

 

 そんな事とは知らないタイユフールは知将と言われるボードワンの深謀遠慮によって帝国軍はレイミア一人の人選に至ったと思い込んでいる。


 「ところで聖王国に潜入する手段はちゃんと考えてあるんでしょうね?」


 作戦会議と言っているが実際には潜入する方法はすでに考えていて、その方法を説明する場だとレイミアは思っている。


 それは当然だろう。


 第三皇子のガラハドまで巻き込んで聖王国行きの許可を取っておきながら、実は潜入する方法は考えていませんでしたでは話にならない。ガラハドに話を持っていく前にその目星をレオナルドはつけていたとレイミアは考えている。

 

 そんなレイミアの様子に、タイユフールは、

 

(なるほど。第三軍団副将軍の名は伊達ではないですね。その高慢な振舞いからは想像できませんでしたが、智略にも長けているようですね。・・・しかし、レオナルド様はどうやって聖都に入るのでしょうか?ラインベイスの時の様にはいきませんよ)


 タイユフールが考えているように聖王国の首都である聖都は外国人でも比較的自由に出入りできる自由都市ラインベイスとは違って、入国審査がかなり厳しいのだ。正門から入ろうとすれば必ずレオナルドの正体はバレるだろう。


 いつものレオナルドなら何も考えてなくてそれらしい事を言ってタイユフールの知恵に頼るところだが、今回はレオナルドも珍しく他力本願ではなくてちゃんと自分で考えていたようで、


 「その点は抜かりはないさ。聖都には聖騎士の道を使おうと思っている」


 とレイミアに答えている。


 「聖騎士の道、ですか?」


 聞きなれない言葉にタイユフールが聞き返すと


 「ああ。聖王国の聖都には聖騎士しか知らされていない秘密の抜け道あるのだ。聖騎士は単独で極秘任務に付くこともあるからな。毎回正門から出入りしていては都合が悪い事もある」


 「・・・そんな道があったのですね」


 白の聖騎士の伝記作家を自認しているタイユフールは自分も知らない道が聖都にあった事に驚く。


 「それって本当に大丈夫なんでしょうね?抜け道の先に敵が待っているなんて事があったら目も当てられないわよ」


 レイミアは実際に目に手を当ててレオナルドを煽るような言い方をしているが、


 「レイミア嬢、安心して目を当てるといい。今言ったように聖騎士以外は知らないからな」


 とレオナルドはあくまでも冷静に対応している。


 もっとも、心の中では(これこれー!この煽るような感じ!いやあー、これは『イイ感じセリフ』が映えますなあ!やっぱりレイミア嬢はいいよねえ!)と歓喜している。


 「しかし、本当に他の者は知らないのですか?可能性はゼロではないのでは」


 今度はタイユフールが不安を口にするが、これも想定内だったのかレオナルドは慌てずに答える。

 

 「聖騎士以外が知っても意味がないのだ。もっと言えば聖騎士がいなければその道は通れないのだよ」


 この言葉にピンと来たのがシンゴだ。


 「その道を通るには聖剣が必要なのですね」


レオナルドは大きくうなづく。


 「その通り。聖剣を使った者ならわかるだろうが、聖剣はただの魔法剣とは違う。その特有の波動をある地点で使う事で聖騎士の道は開かれるのだ。そしてその道は聖都中ならば任意の場所に開けることができるから待ち伏せをする事もできないってわけだ。つまり・・・」


 他の者が知らない事を話せる喜びを存分に味わいながらレオナルドは聖王国潜入作戦の説明を続けるのだった。


 




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