白の聖騎士、安否を心配される。
聖王国の偵察隊がそこに着いた時、すべては終わっていた。
ただ、そこで何があったのか想像するのは難しくなかった。周りを見渡せばよかったからだ。
大勢の兵が踏み荒らした後。折れた剣や壊された鎧の破片がなまなましく残っている。
帝国兵が回収したのか、死体こそなかったがここで激しい戦いがあったことは疑いようがなかった。
死体がないのは帝国兵だけでなくレオナルドの死体も見当たらなかったのでクレディは少し安心していた。
「うまく逃げてくれたのか?」
「この辺りはまだ戦いの中心ではないでしょう。どうやらレオナルドは戦場を移動しながら戦っていたようですね」
ポッパーはあたりを見回しただけで、ここでどんな戦闘が行われていたのかを正確に把握している。この視点クレディにはないところだ。
「おそらく、こっちが最後の戦闘が行われていた場所でしょう」
ポッパーに導かれるように偵察隊は進んでいく。
「なんだ・・・これは・・・!」
青の聖騎士クレディはその光景に絶句する。
戦いの中心地だったと思われるそこにはまるで地を切り裂いたかように巨大な裂け目が一直線にできている。
「どうやったらこんなものができるんでしょうねえ」
緑の聖騎士ポッパーが半ばあきれたようにその割れ目を覗き込んでいる。
「いくらレオナルド様でもこれをくらったら・・・」
従騎士ジャンが不吉な事を言いかけるが、
「いやいや、さすがに直撃は避けるでしょ」
「そうだな。これほどの威力のある攻撃ならそれなりの予備動作があるはずだ。それを見抜けないレオナルドじゃないだろう」
聖騎士二人は即座に否定する。
この辺りは未熟なジャンとの経験の差と言っていいだろう。
これほど桁外れの攻撃は簡単には出せないことがわかっているのだ。
そして強力な攻撃が来ることが分かっていれば避けられないレオナルドではないと思っている。
しかし、実はレオナルドは避けていなかったのでジャンの方が正しかったと言える。
ただ、避けなかったレオナルドが無事ではないという点においては間違っていたが・・・。