白の聖騎士、侍にイイ感じのセリフを言う。
「どうした!その程度では私を止めることはできんぞ!」
白の聖騎士レオナルドは調子こいていた。帝国兵は数こそ多かったが明らかに練度不足でレオナルドに対して怖気づいているのがわかった。
(一時はどうなることかと思ったが、こいつらあまり強くないな。これなら落ち着いて対処すれば白雲を休ませることもできる。聖剣の条件も満たされているし、これならいけるか?)
レオナルドは少し希望を持ち始めていた。それを狙う者の存在に気づかずに・・・。
「聖なる波動!!」
レオナルドの何度目かとなる魔法に帝国兵たちがなぎ倒されるが、その魔法の衝撃波を大きな刀で切り裂いた少年が帝国兵の間から一筋の矢のように飛び込んでくる。
「むっ!」
いきなりの攻撃だったがレオナルドはなんとか聖剣ではじく。
「へえ、今のを受けれるんだ!やるなあ」
感心したように言うのは奇襲を仕掛けてきた少年、シンゴだ。
「受けれる程度に加減したのだろう」
白の聖騎士レオナルドはシンゴの軽口にあくまで冷たく答えるが、シンゴは大げさに目を見開いて、
「いえいえ、魔法を使った後にあんなに隙がないなんてすごいですよ!魔法戦士ってたいてい魔法の発動後に隙ができるけど、あなたほど魔法と剣の連携ができている人は初めでです!まあ・・・正直なところもう少し早く打ち込めましたけどね」
「やはり手を抜いていたか・・・。しかし、君も素晴らしい剣技の持ち主だな。魔法を切り裂くとは驚いたよ」
「聖剣ではないですが、この刀も名刀と言われる刀ですからね。多少の無茶はききます」
誇らしげに刀を振りかざすシンゴだ。
「刀・・・東方の剣か。初めて見るが美しいものだな」
レオナルドの言葉にシンゴは苦笑する。
「刀にはこちらの剣と違って華美な装飾はないのですが、それを美しいと表現するなんてあなたも変わった人ですね」
「素直にそう思っただけだ」
「だとしたら・・・あなたはすごい人だ」
シンゴは笑いをおさめて真剣な表情になる。刀の美しさを西方の人間で理解するなんてよほどの達人だと感じたのだ。
その二人のやり取りを帝国兵たちはまるで演劇を鑑賞しているような気分で眺めている。 自分たちでは到底及ばない高みにいると感じているのだ。
・・・レオナルドのイイ感じのセリフに騙されてその本心も知らずに。
(やはり美しいって表現するのが正解か。以前読んだ本の中に
『東方の騎士、侍は刀という武器を使っており、その刀を自らの魂のように思っている。そしてその刀に美しさを見出しおり美術品としても価値がある』とあったけど・・・。
実際見てみると美しいっていうよりはめちゃくちゃよく斬れる実用的な武器って感じがするんですけど!
なんだよ、魔力剣でもないのに魔法を斬れるって!おかしすぎるだろ!こんなの正直、武骨な恐ろしさしかないんですけど!
どういう思考してたらこれを美術品として愛でれるんだよ!東方の人怖すぎるんですけど!)
実際はこんなことを考えているのが白の聖騎士レオナルドだ。
そんなレオナルドは心の叫びは全く表情に表さないので、シンゴはすっかり白の聖騎士を立派な人物だと思い込んで、
「あなたのような騎士ならば本当なら一対一で手合わせ願いたいところですが、これは戦争ですので確実に勝たせていただきます」
丁寧に頭を下げるシンゴに、
「それが戦士として正しい在り方だろう」
あくまで平然とした態度でレオナルドは受けて立つのだったが・・・。
(マジかよ~!このレベルの相手になりふり構わずこられたらどうにもならんぞ!ここは正々堂々と一対一で戦ってくれよ!)
もちろん心の中ではいつものように悲鳴を上げたのだった。