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白と黒・決着

「さあ、決着を付けよう」


 レオナルドはそう言って聖剣を構える。


 「聖断か・・・」


 聖騎士であるライハルトはさすがにその構えが何を意味するのかすぐに察する。


 『聖断』は聖剣使いの最強の技の一つで、通常は複数の聖剣使いが合同で行使する技だ。多量の魔力を必要とするので本来は単独では使えないが聖剣が全開状態になれば1人でも使用可能なのだ。


 その威力は以前レオナルドが馬上試合で使った際には、出力を抑えて使ったにも関わらず闘技場を半壊させたほどだ。


 これほどの威力を持つ聖断を受けるには聖断しかない。ラインハルトはそう判断して自分も聖断の構えになる。


 一人で戦うことが多いラインハルトもまた単独で聖断を行使できる聖騎士なのだ。


 研ぎ澄まされた集中の中で二つの聖剣に莫大な魔力が集まっていくが・・・。


 「かかったな!」


 「なにっ!」

 

 レオナルドが聖断の構えを解いて、ラインハルトに斬りかかる!


 聖断のために集中状態になっていたラインハルトはレオナルドの一撃をまともに受けてしまう。


 「ぐっ、貴様・・・!」


 聖剣での一撃は本来なら鎧ごと斬り裂いて、致命傷を与えるところだが聖断のために魔力を集中していたおかげで致命傷には至っていない。聖断のために貯えられていた魔力をとっさに防御に使ったのだ。


 だが、確実にダメージを受けていた。聖剣使いは常に聖剣の加護により魔力と体力の回復を受ける事ができるが、ラインハルトはそのダメージが大きすぎて回復が追い付かない状態になっていた。


 そんなライハルトに追い打ちをかけるようにレオナルドは連撃を仕掛ける。ダメージで動きが鈍くなっているラインハルトもしばらくは持ちこたえていたが、すぐに決着はついた。元々実力が拮抗していた中で今の一撃のダメージが大きすぎたのだ。


 ガキーンッ!


 レオナルドの白の聖剣を受けきれずにライハルトは黒の聖剣を弾き飛ばされる。


 そしてレオナルドはそのまま白の聖剣を荒い息をついているラインハルトの喉元に突き付ける。


 「勝負あり、だな」


 (はい、来ましたー!『勝負あり、だな』。これは『あり』の後に一息いれるのがポイントだよねえ!ようやく『イイ感じのセリフ』を言えたわ!いやー、さすがに全力状態の聖騎士相手はしんどい!正直、『イイ感じのセリフ』を考えて言う余裕がなかったもんなあ)


  

 悔しそうな顔をしているラインハルトをしりめにここからはレオナルドの独壇場だ。勝負に勝つことによって好きなだけ語る事ができる状態を作り上げたのだ。


 むしろそのための勝ったのがレオナルドという男なのだ。


 「なぜ、聖断が1人で使われないか知っているか?それは莫大な魔力が必要になる事もそうだが、集中している間に無防備になるからだ。本来は一対一で使うような技ではないんだよ」


勝ち誇ったように言い放つレオナルドに


(いやいや、レオナルド様も馬上試合で使ってたよーな・・・)


 とタイユフールが思いかけると


  「もっとも、一対一でも状況によっては有効になる。要はどれだけ臨機応変に動けるかということだ」


とすかさず付け加えるのを忘れない。


「聖断の威力を知っている者ほど、それを受けるには聖断しかないと思いこんでしまう。だが、それが間違いの元なのだ。人は己の意識から、その選択を狭めてしまう。しかし、本当の強敵と戦うときは己の意識を捨てる事こそが肝要なのだよ」


ここぞとばかりに『イイ感じのセリフ』を連発するレオナルドだが、

 

「あの・・・そろそろいいですか?」


このままだと話が終わりそうにないので見届け人であるシンゴが口を挟んでくる。シンゴとしては勝負がついたからにはその役目を速やかに果たす義務があるのだ。


正直、レオナルドはまだ言い足りなかったが、そこはぐっとこらえてうなづく。


(うん、ここはシンゴの言う通り『イイ感じのセリフ』はこれくらいでいいだろう。あまり言い過ぎると価値が下がるからな)


と、ピントのずれたところで納得している。


そんなレオナルドを(勝負の後には饒舌になっていた。さすがのレオナルドさんも今回の相手には緊張していたようですね)とシンゴは好意的に解釈して、


「では・・・この果たし合い、白の聖騎士レオナルドを勝者と認める!」


見届け人として高らかに宣言したのだった。

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