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黒の聖騎士と聖騎士の使者

 黒の聖騎士ラインハルトが自室にいるとドアをノックする音がする。


「ライハルト様、聖王国からの使者が来られています。お通ししてよろしいですか」


 声の主はラインベイスの騎士でライハルトへの取次ぎ一切を任せられているネッツだ。他の者たちと違ってライハルトに余計な遊びを勧めなかったので気に入られて今ではライハルトの専属の様な存在になっている。


 「構わん。通せ」


 そんなネッツ相手でもライハルトはそっけないが、ネッツはラインベイスの騎士たちにはない剛直な姿勢のラインハルトを尊敬していたので冷たい態度をとられても満足していた。

 

 「それではお通ししますね」


 やがてネッツに伴われて一礼しながら入ってきた人物を見てライハルトは少し驚くが、その驚きは声に出さずに一言だけつぶやく。 


 「貴様か」


 「お久しぶりです。ライハルト様」


 聖王国の使者と名乗る男が頭を下げるとライハルトは皮肉な笑みを浮かべる。どうやらこの男はラインハルトの顔見知りの様だった。


 「久しぶりだな。しかし、おかしいな・・・。聞いたところでは貴様は聖王国を出奔したはずだぞ。しかも、あのバカを追いかけていったそうだな。その貴様がなぜ聖王国の使者を名乗っているんだ、タイユフール」


 珍しく饒舌なライハルトだが、その内容が穏やかなものではなかったので取り次いだネッツは使者の顔を見返すが、


 「私は聖王国の使者と名乗った覚えはありませんよ、ラインハルト様」


 平然と言い放つタイユフールに、


 「嘘を言うな。貴様は聖王国の使者と言ったではないか!」


 ネッツが抗議すると、


 「私が言ったのは『聖騎士の使者』ですよ。間違いなくそう名乗ったはずですが」


 あくまで丁寧にタイユフールは指摘する。


 「だからそれは聖王国の使者だということだろう!」


 聖騎士の使者ならば聖王国の使者に決まっている。聖騎士は聖王国にしかいないはずなのだ。というのが普通の者の認識だろう。ただ、普通ではない聖騎士がいるのだが。


 普通ではない存在を知らないネッツは激昂するが、それをラインハルトは手で制して、


 「黙っていろ、ネッツ。なるほど・・・聖騎士の使者だと言うことか。それならばわかる。確か貴様はあのバカの伝記作家でもあったな」


 「御名答です。さすがはラインハルト様」


 慇懃に答えるタイユフールだが、どこかふざけているように見えてネッツはまだ何か言いたそうだ。しかし、一度ライハルトに黙っていろと言われた事を忠実に守っている。


 そんな真面目なネッツの態度をライハルトは満足そうに見ると、すぐにタイユフールに向き直る。


 「だが、貴様がここに来れたと言うことは俺の聖剣の『条件』が満たされることになるな」


 静かに言うライハルトに対して、タイユフールは大げさに手を振って、


 「いえいえ、それは早とちりというものです。実際、聖剣は反応していないでしょう?」


 「そうだな」


 ライハルトも認める。聖剣からは特別な力は感じられない。


 「今そこのラインベイスの騎士が言ったでしょう?私の事を聖王国の使者だと思ったって。聖王国からの使者を素直に通した。つまり、いまだラインベイスは聖王国とは同盟関係にあるって事です」


 タイユフールが話すことはネッツには当たり前の事を確認しているように思えたが、ラインハルトにはその意味がわかった。


 「なるほどな。ラインベイスが聖王国の味方のままにしておくつもりか。それならば、俺が貴様をここでラインベイスに引き渡してもいいんだぞ。そしてあのバカもラインベイスに捕えさせてもいいわけだ」


 黒の聖剣の力を封じるためにラインベイスを聖王国の味方にしておくならば、わざわざラインハルト自身が戦わなくて済むのだ。ラインベイスの兵を動かせばいい。


 「でも、あなたはそうしないでしょう?」


 「なぜ、そう思う?」


 「あなたは白の聖騎士に一対一の果たし合いを挑まれたら必ずそれを受けるからです。・・・私の主人の元へ来てくださいますね?」


 確信めいた言い方をするタイユフールに、


 「ふん・・・。そうだな」


 ラインハルトは面白くなさそうに肯定する。


 「お待ちください!白の聖騎士、つまり帝国の将がいるのなら我々ラインベイスにも関りが・・・」


 たまらずネッツが口を挟もうとするが、


 「黙っていろと言ったはずだ」


 ライハルトの聖剣がネッツの首を斬り落とす・・・となるギリギリのところでタイユフールの剣がそれを受け止めた。


 「止めるつもりだとは思いましたが、念のため受けさせて頂きました。ここで刃傷沙汰になるのは私も困りますので」


 しゃあしゃあと言い放つタイユフールを見ながら、ネッツは驚愕していた。


 (ま、まるで反応できなかった。止められなければ死んだことも気づかないうちに首が落ちていただろう。これが黒の聖騎士様の剣技・・・。そしてそれを受け止めたこの男も・・・)


 「ネッツ。文句を言わずに付いてこい。それが俺の最大限の譲歩だ」


 聖王国のトップレベルの騎士たちの技を見せられたネッツはもう反論する気はなくなっていたのだった。

主人公出ないとシリアス展開になりますね・・・。

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― 新着の感想 ―
ンが抜けてないか?
[良い点] 主人公の中身がとても面白い。いないとシリアスなのも笑える。 [気になる点] 黒の聖騎士の名前はライハルトですかラインハルトですか誤字なのかまざっていてどっちかわかりません
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