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マルチェッラ③

黙ってしまったマルチェッラに対してタイユフールの口は絶好調だ。


 「どうですか?これならラインベイスご自慢の鉄壁の防御力でもどうにもならないでしょう?もう完全に王手がかかっている状態・・・」


 「タイユフール、それくらいにしておくんだな」


 調子に乗ったタイユフールが結論をだそうとするのをレオナルドが静かにたしなめる。マルチェッラを急速に追い詰める事は得策ではないと思った・・・わけではなく、


 (あー、もう!タイユフールはすぐに俺を差し置いて『イイ感じのセリフ』を言おうとするんだよなあ。なんだよ『ご自慢の』とか『王手が』って!もうその単語だけでも『イイ感じのセリフ』だわ~。あ~なんか格好いいわ~。その上この場のおさめる最後のキメ台詞時まで言われたら俺の言うセリフがなくなっちゃうだろ!まったくこの伝記作家は油断も隙もないよ。

 そりゃあ、『ラインベイス陥落の作戦』を考えてくれたのは感謝するよ?俺はなーんにも考えてなかったからスゴイ助かったわ!ありがとう!さすがタイユフールだよ!

 でもな・・・だからといって『イイ感じのセリフ』を全部独り占めして言っていいわけじゃないからな!『イイ感じのセリフ』道は修羅の道!例え恩人であっても押しのけて言わねばならんことがあるのだよ!まあ、俺はしっかり『それくらいにしておくんだな』と言えたからなあ!)


 こんな自分勝手な事を考えていたわけだ。


 だが、レオナルドがタイユフールを止めた事は思わぬ効果を生んでいた。


 追い込まれていたマルチェッラが少し考える時間を得て冷静になったのだ。


 あのままの勢いでまくしたてられていたらマルチェッラは(ラインベイスがこのまま負けて帝国に併合されるくらいなダメでもともと。たとえ無茶でもここで白の聖騎士を討ち取るしか・・・)という最悪の考えに行きつくところだった。


 もともとタイユフールもそこまでマルチェッラを追い詰める気はなかった。ただ、できるだけ有利な状況に持ち込めるようにあえてプレシャーをかけ続けていたのだが、マルチェッラは追い詰められたからと言って萎縮するような性格ではなかったのだ。


 レオナルドが『イイ感じのセリフ』を言うためにタイユフールを止めたことが結果としてマルチェッラの暴走を抑える事になっていた。


 冷静になったマルチェッラは考える。もし、白の聖騎士がラインベイスの内部から破壊工作をするつもりならわざわざ自分を訪ねてくる必要はなかったはずだ。隠密に行動するだろう。しかし、実際にはそれどころか作戦の内容まで明かしている。何か考えがあるに決まっているだろう。


 (つまり、その作戦をそのまま実行する気はないってことね)


 マルチェッラは自分の結論に確信を持つ。


「確かに驚異的な作戦ですが・・・それをする気がないからここに来たんでしょう」


「・・・さすがだな。ラインベイス七家の軍事を司る家の家長だけはある」


確信めいたマルチェッラの言葉にレオナルドは「ふっ」と小さく笑いながら答える。


(え?そうなの?そうだったの?でも、やたら自信たっぷりだしなあ。多分それは間違いないだろう。なるほど、さすがにラインベイスの軍事を担当しているだけはあるなあ)


 と心の中で感心しながら何とか話を合わしているのだった。



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