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白の聖騎士、心の中でイイ感じのセリフを言う

  レオナルド一行がマルチェッラの屋敷に向かって歩みを進めていくと、ラインベイスの町には自然とざわめきが広がっていった。


 何しろ馬上試合の謎の実力者、『白騎士』がついに仮面を外してその素顔を明かしているのだ。しかもその素顔がかなりの美形となれば注目されるのは当然だ。


 もちろんレオナルドが「私こそが白騎士だ!」と看板を下げているわけではないので、その人物が『白騎士』である証拠はないのだが、彼こそが『白騎士』であると確信していた。


 『白騎士』のお付きの二人であるタイユフールとアリアス。その二人の存在だ。


 レオナルドが『白騎士』として馬上試合で名声を上げていく中で『白騎士』に付き従っていたタイユフールとアリアスも有名になっていたのだ。


 特に大男でいかにも歴戦の戦士と言ったアリアスは試合に出ないのが不思議なくらいだと言われていたし、少年の様な容姿のタイユフールもその言動や立ち振る舞いからただものではない雰囲気を感じさせていた。


 そんな二人をともなっている人物と言えば『白騎士』の他にいるはずがない。なにより仮面こそつけていないがトレードマークのようになっているその白い鎧はまさに『白騎士』が試合で着用している物だ。


 「『白騎士』はあれほどの美男子だったんだな・・・」


 「まっ、そういう事だ。じゃあ、俺の勝ちだな」


 「仕方ないな。認めるしかないようだな」


 財布から金貨を取り出してため息をつきながら隣の男に渡している者がいる。


 ラインベイスでも最も人気のある娯楽と言ってもよい『馬上試合』に参加して以来一度も敗北していない『白騎士』の素顔は今やラインベイス市民たちの間では耳目を集めるニュースになっていたのだ。


 一部では『白騎士』の素顔が美形かそうでないかという不真面目な賭けも行われていた。そしてその賭けの結果は見ての通りの美形で文句をつけようなかったと言うことだ。


 しかし、レオナルドが素顔をさらした影響はそれだけではなかった。 


 歩みを進めるレオナルド達の前に一人の少女が唐突に飛び出てくる。一瞬レオナルドもためらうが、


 「あの、あたし、『白騎士』様の大ファンなんですサインをして頂いてもよろしいでしょうか?」


 少女が勢いよく頭を下げながら差し出してきた色紙を見てすぐに


 「サインは宿帳くらいにしかしないのだが・・・」


 と少し困った顔をしながらもしっかり『イイ感じのセリフ』未満、『それらしいセリフ』以上を言いながらレオナルドはスラスラとサインをしている。


 「ありがとうございます!」と再び大きく頭を下げて走り去っていく少女。


 今までは仮面で素顔を隠しており、表情もよくわからない事もあって『正体不明の少し怪しい白騎士』には近寄りがたい雰囲気があった。しかし、仮面を外してその優し気な整った風貌を見せた事で『馬上試合の英雄・白騎士』として改めて認識されたようだった。


 「さすがに目立ちすぎなんじゃないのか?」


 そんなラインベイス市民の反応にアリアスが疑問の声を上げる。


 「大丈夫ですよ」


 タイユフールが平然と答える。

 

 「これも計算のうちってわけか」


 納得したように言うアリアスにレオナルドが反射的に「そうだ」と答えかけたところに、タイユフールが


 「まさか。これはどちらか言えば計算外ですよ。ただ、この様子なら特に作戦に影響はなさそうだから無視してもいいんですよ」

 

 と相変わらずアリアスは作戦がわかっていないなあとばかりに解説する。


 (ヤバかった・・・。あやうくアリアスを肯定するところだったぜ。しかし、作戦がわからないとマジでヤバいな。すごい変な事言いそうな気がする。できるだけ余計なことを言わないようにしよう!それが賢い生き方ってものだからな!)


 とレオナルドは決心する。作戦がわからない状態では慎重に発言しないといけない。全く見当違いの事を言ってしまったら目も当てられないだろう。


 そう、普通なら余計な発言を控えるべきなのだ。普通なら。


 (・・・でもまあ、『イイ感じのセリフ』が言えそうなシチュエーションがあったらそこは絶対スルーしないけどな!『イイ感じのセリフ』が余計であるはずはないのだ!例え賢く生きれなくても(おとこ)には言わねばならん事があるのだよ!)


 一秒前の決心はどこへいったのか、レオナルドはこりずに心の中で『イイ感じのセリフ』をつぶやくのだった。

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