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白の聖騎士対魔獣使い②

 白騎士のお付きの者と言うことでタイユフールとアリアスも有名になってきており、こうしたレオナルドの試合では周りの観客たちに意見を求められることが多くなっていた。


 「白騎士のここまでの戦いぶりはどうですか?」


 側にいた観客の質問に、タイユフールとアリアスが解説者さながらに答える。


 「珍しく魔法を多用してますねえ」


 「機動力は相手の方が上だからな。接近してスピードでかく乱されるのを嫌っているんだろうな」


 「それに加えて相手の武器もちょっと特殊ですからね。間合いが取りにくいから、魔法で間隔をあけての戦いに持ち込んでいるんでしょうね」


 「では、今の距離を開けての戦闘は白騎士有利に働いていると考えてもよいのですか?」


 今度は別の観客もきいてくるが、


 「いや、白騎士様の戦い方は魔法と剣を組み合わせているとはいえ、その本質はやはり剣です。魔法も得意としていますがある程度のレベルの相手では魔法のみでは致命傷を与える事は難しいですね」


 「そうだな。白騎士様の魔法はあくまで牽制用だ。普通に考えたら今の状況は手詰まりといったところだろう」


 二人ともがレオナルドの有利を否定したので、観客は肩を落とす。白騎士は華麗な戦い方と戦いのさなかに発せられるその名台詞で日を追うごとにその人気は高まっている。そんな白騎士が負けるところは観客も見たくないのだ。


 「・・・普通ならな」


 「え?」


 アリアスの言葉に観客が顔を上げると、


 「あいにく普通ではないんですよ。あの方は」


 タイユフールが苦笑しながらそう付け加えたのだった。



                         *



 「はっはー!そんなにオレに近づかれるのが怖いか!無理もないな!この世界広しといえどもオレほど魔獣をうまく扱える者などいないのだからな!」


 レオナルドの魔法を避けながら魔獣使いはイイ気になって挑発してくる。


平地では馬の速さに敵わないが、山岳地を住処とする魔獣はこういう場所では圧倒的な機動力を発揮する。崖から崖へ飛び移るように動き回っている。


 逆に普通の馬は駆けるどころか、まともに動くこともままならないだろう。


 普通の馬なら。


 「ば、バカなああ!なぜただの馬にそんな動きができる?!」


 狭い足場を苦にしない動きを見せる白雲に魔獣使いは驚きを隠せない。


 「君は確かにこの上なく魔獣を乗りこなしているが、所詮その関係は主従にすぎない。しかし、私と白雲は違う!白雲は私にとって幾多の危険な戦場を共にし、お互いの命を守ってきた戦友なのだ!そんな私たちにとってはこの程度の場所は平地と変わらない!」」


 (決まった・・・!戦友と書いて”とも”と読む。これはイイ感じのセリフだよねえ!)


 「ば、バカな・・・。このオレよりも獣の扱いが上だと言うのか・・・」


 魔物使いはそんな事はありえないとショックを受けているが、こんな事もあろうかとレオナルドと白雲はあえて崖地での特訓をしていたのだ。あらゆる場面でカッコつけれるように努力を重ねている1人と1匹だ。


 「こ、こうなったら仕方ない。これだけは使いたくなかったが・・・」


 そう言って魔物使いは鞭に何かを振りかけて、それを辺りにまき散らす!


 「これは・・・」


 レオナルドは毒か!と警戒するが、聖剣の加護があればたいていの毒は無効化できるのであえて様子を見ていると、白雲の様子がおかしいことに気づく。


 だが、それは毒で弱っているというよりはむしろ必要以上に興奮しているように見える。


 「くくくっ、これは馬の理性を失わせて本能のままにさせるクスリだ。普通の馬なら人を乗せておくことすらままならないところだが、さすがはオマエの馬だな。しかし、振り落とすまでには至っていないにしても、まず戦いにはならないぞ!」


 普通の馬ならこの薬を使われたら、乗っている者を振り落として、まっしぐらに食べ物やメスのもとに向かうところだ。そしてかなり訓練された馬でもまともに騎手のいうことをきかなくなる。


 だが、白雲の本能は他の馬とは違うのだ。


 白雲の優先順位は、性欲<食欲<戦いでイイ感じの働きをする、なのだ!


 本能を全開にされた白雲はもはや馬の身体能力の限界を超えて信じられないスピードで崖地を走り、魔獣使いを追い詰めていく。


 「バカなあ!あの薬が効かないと言うのかあ!」


 いや、めっちゃ効いた上でのあの動きなのだが。


 「あああああっ!速い!速すぎる!信じられないスピードだ!」


 魔獣使いは絶望の悲鳴を上げる。



                            *



 戦意をなくした魔獣使いにレオナルドが勝ちました。

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