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白の聖騎士対魔獣使い①

 「・・・ちょっときいてみるんだか、この辺りにはあんな種類の馬がいるのか?」


 「いやあ、さすがにあれはどう見ても馬じゃないでしょ。地方特有とかそんな問題じゃないよ。完全に別の生き物だよ」


 ここ三週間のラインベイスの生活ですっかり解説役が板についてきているアリアスとタイユフールが話題にあげているのは今日レオナルドが対戦する事になっている騎士の『馬』だ。


 ラインベイスの闘技場での馬上試合はその名の通り徒歩で戦いは認められていない。


 いくら「俺は馬などなくても強い!」というような斜め上からの主張をしたとしても、騎乗していない者は参加できない。


 だが、騎乗すると言っても今回の相手が乗っているのは明らかに馬とは別の生物だった。


 その全体はライオンに近い姿をしているが、しっぽにはサソリの尾の様な物が付いているし、その頭は猛禽類の顔をしていおり、しかもその口からは火炎を吐くことができるのか火がこぼれ出ている。

 

 いわゆる『魔獣』の一種だろう。


 『白騎士』ことレオナルドの連勝記録に業を煮やしたラインベイスの騎士たちがなりふり構わずレオナルドを倒すために選んだ相手が西方からこの自由都市に来ていた『魔獣使い』なのだ。


その上今回は闘技場自体もかなり手を加えられている。


 馬上試合は基本的には平らな状態の地面で行われており、馬の機動力を存分に活かせるようになっている。だが、ときどきあえてデコボコの地面にして疑似的に足場の悪い戦場を想定した闘技場に変えることもあるのだ。


 「それにしてもずいぶん、あからさまだな。これはさすがに抗議してもいいレベルじゃないのか?」


 「その抗議をする資格がある人が『真の騎士は戦場を選ばない。たとえどんな場所であろうとも勝利を得るだろう』とか言っているんだからどうにもなりませんよ」


 闘技場の設備の変更は対戦する騎士二人の同意の上で行われているのだ。


 今回はあのラインベイス防衛設備を作った工兵たちが、かなり頑張ったのか、普段は平地になっている闘技場の中が切り立った崖地が乱立している辺境の山奥に変わっている。


 まともな馬ではその機動力が削がれてしまうだろう。逆にこういった場所をテリトリーにしている魔獣ならその地形を十分い生かして行動することができる。


 「オマエはこの戦場を卑怯だと言わないのか?オレと戦って負けた者は皆、この戦場を卑怯だと言う。だが、オレに言わせればいつものオマエたちこそ卑怯だ。ここはオレの慣れた戦場だが、オマエたちにとっての普通の平地の戦場はオレにとっては戦いにくい戦場なのだ」


 馬上試合開始の合図が下されると、魔獣使いは『負けた言い訳にするなよ』とばかりにレオナルドに問いかけてくる。


 「真の騎士は戦場を選ばない。たとえどんな場所であろうとも勝利を得るだろう!」


 レオナルドはさっそくイイ感じのセリフで返しているが、魔獣使いはバカにするように笑うと、


 「オレは騎士ではない。だから勝てる戦場を選ぶ。戦士とはそういうものだ」


 といい捨てるのを聞いてレオナルドは


 (なんか、カッコイイこと言ってるー!)と嫉妬するが、


 「では、騎士と戦士どちらが強いか証明して見せよう!」


 レオナルドは聖剣をスラリと抜き放つ。


 (証明して見せよう!はいつ言ってもいいセリフだぜ!)と自分も負けずにカッコイイセリフを言っていい気分になったが、


 「オレが勝っても戦士がつよ・・・なっ!?」


 魔獣使いがなにか言いかけるがそれを遮るようにレオナルドが神聖魔法の『聖なる波動』を飛ばす。


 慌てて避ける魔獣使いをしり目に、レオナルドはビシッと言い放つ。


 「もう、戦いは始まっているのだぞ!」


 「くっ!?」


 勝つために最善を尽くすと言っていた魔獣使いはレオナルドの奇襲に反論できない。確かに油断していた自分が悪いのだ。


 だが、もっともらしい事を言っているレオナルドは、


 (あっぶねええええええ!絶対、いま、こいつ俺のセリフを台無しにするようなイイ感じのセリフをいいかけたよね?たぶん、俺の『騎士と戦士どちらが強いか証明して見せよう!』を否定する『オレが勝っても戦士が強いわけじゃない。俺自身が強いのだ!』とかそんなやつ!)


 自分のイイ感じのセリフをダメにすることを言われるのを本能的に回避しただけだった。


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