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白の聖騎士、作戦会議でイイ感じのセリフを言う②

 レオナルドが聖王国相手でもいつも通りにするまでと宣言した事でカウニッツはひとまず安心したが、肝心のラインベイス攻略に関しては何の解決にもいたっていない事は変わっていない。

 

 「しかし、どうして帝国はこんな無茶な任務をレオナルド様に与えたのでしょうな。ラインベイス攻略はどう考えても我らだけでは無茶な話でしょう」


 モノのわかったように言い方をするカウニッツに熱血漢のアリアスが反論する。


 「俺も最初はそう思ったが、どんな戦でもやってみないとわからないぞ。戦う前からそんな事を言っていたら勝てるものも勝てなくなるぞ!」


 「ふん!そんな単純な考えだから我ら南方の部族は野蛮だと思われるのだ。少しは頭をつかうのだな。気合だけでどうにかなると思うな!」


 「なんだと!?貴様!」


 カウニッツとアリアスがにらみ合っていると「やめないか!」とレオナルドに一喝される。


 戦に関する考え方が全く違うためについ言い争ってしまった、熱くなりすぎたな、とバツの悪そうな顔をする二人だが、レオナルドの叱責の真の意味を知らないでいた。


 (まったく、こいつらは放置していたらすぐに『戦術面を考えた知的なイイ感じのセリフ』や『単純だが勢いを感じさせるイイ感じのセリフ』を俺を差し置いて言い出すんだよ。油断のならない奴らだよ!困ったものだ!)


 レオナルドの怒りの矛先は作戦会議でいさかいを起こした事よりも自分よりも『イイ感じのセリフ』を言っているという点にあるのだ。


 怒られてしまった二人をとりなすようにタイユフールが自分達がラインベイス攻略を命じられた理由をタイユフールなりに解説する。


 「まあ、ラインベイスの攻略が私たち帝国遊撃隊だけでは無理だとしても、帝国がどうして私たちをラインベイス攻略にあてたかは部隊の構成を考えたらある意味当然ですね」

  

 レオナルドが率いる帝国遊撃隊は元々帝国兵だった者は700名しかおらず(しかもその700名のほとんどが元々傭兵だった者たちだ)その他の2300名は南方の反乱部族出身だ。上官クラスの者達も聖王国出身のレオナルドとタイユフール、部族出身のアリアスとカウニッツと全く帝国出身者がいない。


 帝国からしたら無茶な作戦を押し付けて捨て石に使っても惜しくない部隊というわけなのだ。


 「帝国としてはラインベイスの神聖同盟の参加を見過ごす事はできないけど、ラインベイスの防衛力を考えると攻め落とすのは難しい。かといって放置しておけば帝国が周辺国に侮られることになる。だから仮に帝国遊撃隊という新設の部隊が全滅することになったとしてもラインベイスにある程度の損害を与えればそれでいいと割り切って考えているんでしょうね」


 賢し気に解説を続けるタイユフールにアリアスが待ったをかける。

 

 「タイユフールは何か誤解しているな。俺たちが全滅してもラインベイスを落とす事ができないだと?ただ、損害を考えると無茶だと言っただけだ。全滅覚悟で戦えば俺たちに落せない町などない!」


 アリアスの言葉に良識派と思われていたカウニッツも平然とうなづいて「陥落させる事はできる。『命を捨てよ』と命令したときの我らに砕けぬものなどない!」と落とせるのが当たり前のように言っている。


 南方部族出身の者たちに共通する命に対する考え方に普通の者ならドン引きするだろう。そして普通ではない考えのレオナルドもドン引きしていた。ただ、そのドン引きの仕方は独特だったが。


 (ちょっ、こいつらマジなんなの?なんかカッコイイセリフをバンバン言ってるんですけど!マジであり得ないわ!くう~悔しい!俺ももっとイイ感じのセリフを言わなければ・・・)


 こんな感じだったので、つい言ってしまった。


 「全滅?命を懸ける?ラインベイスを陥落させるのにそんな必要などないだろう」


 あまりに簡単そうに言ったレオナルドに皆が視線を集める。


 (おっ、この注目度は間違いなく『イイ感じのセリフ』の証!)とレオナルドは喜ぶが、当然のように全く策などない。

 

 「タイユフール、君にもわからないのか?」といつものようにタイユフールの機転に期待するが、


 「すみません。今度ばかりは私にもわかりかねます、レオナルド様」と謝られてしまう。

 

 「君もまだまだ未熟だな・・・」


 余裕の笑みを浮かべているレオナルドだがその脳内には


 (マジかよ~!タイユフール、君はわかってよ!俺だってわからないんだから、そういう時にわかってくれて解決してくれるのはタイユフールの役目だろ?いつものように俺の『深い考え』を創作してくれよ~!あ~もう、どうしよう!お、俺が考えるしかないのか?それしかないのか?それしかないのかああ?)


 自問自答の嵐が吹き荒れている頭脳を高速回転させて何か逃げ道がないかタイユフールの報告書に目を通している。


 そしてある一文に目を付ける。


 (よし、もうこれでいこう!これでダメならある意味本望だ!)


 「これから私たちがとる道は・・・」


 こうしてレオナルドは『ラインベイス攻略作戦』を発動したのだった。

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