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白の聖騎士、平然とイイ感じのセリフを言う

 「フローラ様、ご無事のご帰還でなによりです」


 砦の門でフローラを何食わぬ顔で出迎えるレオナルドは何の問題もない安全な砦の留守を預かっていたような振舞いだ。そのつやっつやな顔からはとても反乱部族の大軍を相手をしていたとは思えない。


 「私よりもレオナルド様の方こそよくご無事でしたね。報告を受けた時は心臓が止まるかと思いましたよ」


 「心臓が止まる報告?なんのことでしょうか?」


 フローラの言葉にレオナルドは本当に何のことかわからないような反応をしている。


 (この反応・・・。私がいない間にこの砦が5000もの反乱部族に攻められたというのは嘘だったのでしょうか。それにそれをレオナルド様の隊だけで鎮圧したというのも全部敵の流した偽情報でしょうか。でも、伝令は間違いなく帝国兵でしたし・・・)


 「私が砦を出立したあとに5000人の反乱部族がこの砦に攻め寄せてきたとの報告を受けたのです。そしてそれをレオナルド様の軍が単独で鎮圧したとの事でしたが・・・」


 「ああ、驚かれたのはそのことですか。すみません、フローラ様にいらぬ心配をかけたようですね。まあ、いつもの南方部族の反乱でしたよ。・・・紹介しましょう。部族を統率していたカウニッツです」


 レオナルドの言葉に丸腰の男が片膝をついてくる。


 「お初にお目にかかります、フローラ将軍。私はイザン族の族長でカウニッツと申します。この度は多数の部族をまとめてこの砦に攻め入りましたがレオナルド殿に敗れてしまい、こうして生き恥をさらしているところです」


 「え?ああ、よろしくお願いします」


 いきなり現れたカウニッツと名乗る男に面食らってフローラは気の抜けた返事をしてしまうが、すぐに気を取り直して


 「この者が5000の兵を率いて攻めてきたのですか?」


 フローラが確認するように言うと、


 「いいえ。当初は5000だったのですがそのあと増えて最終的には7000人以上の規模になっていましたね」


 平然と答えるレオナルドにフローラは言葉が出ない。


 (1000人で守っていた砦を7000もの敵に囲まれていたというのに・・・レオナルド様にとってはこの程度の事など驚くに値しないと言うことなのですね。全くすごい方です)


 フローラは素直に感心しているが、もちろんそんなわけはなかった。


 レオナルドは自分がかなりすごい事をしたと全てわかったうえでこんな茶番をしているのだ。


 今回の反乱部族の責任を全て負うであろうカウニッツはレオナルドの策略にハマって降参したとはいえ今後どのような処罰を帝国から受けるかはわからない。


 アリアスのように南方の部族がいつもしている一部族の反乱ではなく、多数の部族をまとめて大軍で攻め寄せたのだ。ともすれば砦を陥落させられる恐れもあったので、帝国としてはいくら投降したとはいってもその首謀者の扱いは慎重にならざる得ない。


 事が大きくなるとこの方面を帝国から一任されている第八軍団将軍のフローラとしてもカウニッツに対して厳罰を言い渡さなければならない事になる。


 しかし、こうやって今回の反乱は大した事ではなかったとレオナルドが明言することでカウニッツへの処罰が軽くなる可能性があるのだ。


 とタイユフールあたりは考えてレオナルドの伝記にこの『敵将の罪を軽くするために自らの戦功を小さくみせようとする事実』を組み込もうと考えていたが、これもレオナルドの真意とは違っていた。


 レオナルドが考えていたのは・・・。


 (『この程度の事大したことありませんよ』系の『イイ感じのセリフ』は使いどころが難しいからな。実際それほど大した事してない時に言うとただの見栄っ張りになるし、やっぱり今回みたいなめちゃくちゃ戦力差がある中で本当にすごい事をした時にいうと、より効果的なんだよねえ!)


 こんな事なのだった。

 

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