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フローラと犬

 フローラは自分にむらがる犬たちに嘆息していた。


 (なんでこんな事になったのでしょうか・・・)


 事の始まりはフローラの第八軍団の新しい任務からだ。


 反抗部族をレオナルドの活躍によって鎮圧した後、その功により大隊長に任命されたレオナルドを砦の守備に残してフローラは別の任務のために砦を離れる事になった。


 中隊並みの兵数しか持たないレオナルドだけを残すのは少し不安だったが、反抗部族は鎮圧しているし問題ないと思っていた。むしろ捕虜生活から急に戦場に出る事になったレオナルドに少しでも休んでもらいたいとの考えから砦に残したのだ。


 しかし、フローラが砦をレオナルドに任せてから数日後に別の反抗部族が砦に攻めよせているとの情報が入ってきたのだ。しかも、その規模は5000人以上とこれまでの反抗部族から考えられないほどの大軍だった。


 反抗部族は数百から500人程度の部族がほとんどで、その上、部族間でも反目しあっていたのでそれらが連合して攻めてくるなど今まではまずあり得なかった。


 だが、それが5000人以上で連合して攻めてきたということは各部族をまとめてそれを率いるだけのカリスマ性をもった者が現れたと考えてよかった。


 この一報を受けた時、フローラはすぐにでもレオナルドの元に軍を率いて戻りたかったがそれはできなかった。


 すぐに済むと思っていた任務が思った以上にこじれていたのだ。


 フローラは帝国の属国であるリスオー公国に赴き次の戦場に連れていく兵団の調整に入っていた。帝国には現在八つの軍団があるが作戦によって複数の軍団が協力してあたる場合もあるし、軍団が単体で行う場合や、今回のように属国からの援軍を加えて戦う場合がある。


 この属国からの援軍は当然帝国からの命令ではあるので属国も逆らえないが、属国によっては実際に率いる軍団の将軍が自ら行かなくては兵の供出を出し渋る国もある。特にフローラのように元々帝国外の者が将軍になっている場合はその傾向が強いため、フローラは自ら赴いたのだ。


 リスオー公国は属国とはいえ帝国の統治に強い不満はもっておらず兵団の編成もスムーズにできるとフローラは思っていたのだが、フローラが自ら赴いたことがかえってあだになっていた。


 リスオー公国の上級騎士たちはニヤニヤしながら銀髪の美少女であるフローラに対して、


 「これはこれは可愛らしい将軍様ですな!」


「どうでしょう?帝国将軍様、ひとつ私に稽古をつけて頂けませんかな?」


 「そうですなあ。この若さで帝国の将軍ならば相当な猛者なのでしょうなあ」


 「私も興味がありますなあ。一手お手合わせ願いたい」


 と下卑た笑いを浮かべて迫ってきたのだ。


 (なるほど、こういうパターンなわけですね)


 ときどきいるのだがフローラが年若い乙女で元帝国外の出身だと知ってからかってくる者がいるのだ。


 (属国に身を落としていても誇りは失わないというやつですか?くだらないプライドですね。中途半端な態度をとるくらいなら恭順しなければいいのです。命を懸けて祖国を守るために戦えなかったくせにプライドだけ人並みにあるなんてとんだお笑い種ですね)


 そんな事を思いながらもいつものフローラなら当たり障りのないように「そう言われずに力をお貸しください」と下手に出てあしらうところなのだが、この日は違った。


 「言っておきますが、私、強いですよ」


 大人しそうな美少女のフローラに冷ややかに言われて騎士たちは怯むが、これは元々フローラのやり方ではなかった。


 こういういかにもなセリフにはあの男が関わっていないはずがなかった。そう、白の聖騎士レオナルドである。


 (レオナルド様から舐められないためにも私は少し芝居がかった言い方をした方がいいと言われていましたがこれでよかったのでしょうか・・・)


 フローラは疑問に思いながらも挑戦してきた男たちをもれなく魔法と剣で容赦なくボッコボコにしたのだが、それからというもの・・・。


 「フローラ様!我らをあなた様の忠犬と思ってお使い下さい!」


 リスオー公国の上級騎士たちは変な性癖に目覚めた。


 これがのちのリスオーの忠犬の始まりであったとはこの時はフローラも気づいていなかった。


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