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イイ感じのセリフを言うのは一人じゃない

これから起こる出来事にウキウキしていながらもレオナルドはあくまで冷静な態度を見せている。


 一方、完全に見た目にも平静を失っているのはカウニッツだ。


 少し前まで得意の絶頂だったのが、嘘のように頭の中で(なぜだ!なぜだ!)を連発している。


 カウニッツは首筋に当てられた長剣と優男を交互に見返すがその構えには隙がない。下手な動きをすれば即座に殺されてしまうだろう。


 白の聖騎士と名乗ったその男の後ろには元反抗部族で帝国に下ったアリアスの姿も見える。その手には幾人もの勇士を葬った愛用の大刀が握られている。

 

 所詮は武だけの男とアリアスを侮っていたカウニッツだが、いざ敵として相対するとその武人として凄まじい実力を持っているのが肌につきささるのを感じていた。


 カウニッツは死を覚悟したが、そうなると腹が座ってきたらしい。どうせ死ぬなら(どうしてこうなった)かを知ってから死にたかった。


 「素直に負けを認めよう。どうやら私の完敗のようだ。しかし、いったいどうやってここに忍び込めたのだ?」


 この砦にはもともとカウニッツが率いてきた5000の部族の戦士に加えて、帝国の砦を陥落させたカウニッツの名声を頼ってその他の部族からも戦士たちが続々と集結しており今では7000人以上の兵がいたはずだ。


 この規模の砦で7000人以上の兵士がいるなかでどんな手品を使えば砦の中心部にあるカウニッツの居室まで来られるのか不思議でならなかったが、レオナルドの返事は意外なものだった。


 「私は忍び込んでなどいない。堂々と正門から入らせてもらったよ」


 「そんなバカな事がありえるのか!?正門から敵が攻めてきていたならわかるはずだ!まったくそんな気配はなかったではないか!?」


 驚愕するカウニッツにレオナルドは満足そうな笑みを浮かべるが、一瞬でそれを抑えて真顔に戻って心中で歓喜する。


 (いい。とてもいい。最高の表情をするなあ。最近の敵の中では一番いいかも。力押しで驚かれるのと違ってこういうのもまた新鮮!)


 いくらなんでもこの砦を正面から攻めて来ていたら小競り合いでは済むはずがない。それなら先ほどの騒ぎ程度ではないはずだ。


 「別に攻めたわけではない。門を中から開けてもらったのだよ。私のためにね」


 「まさか!?どうやってこの砦に忍び込んだのだ?」


 この砦はもともと帝国のもので防御機能に優れていたが、それを砦に残されていた資材で強化してそれこそ外部からの侵入者を簡単には許さないように仕上げていたのだ。その上で油断なく巡回もしっかりさせていたので、兵士たちに気づかれずに忍び込むなどまず不可能だと思っていた。


 「忍び込ませてはいない。君が自ら彼らを招き入れてくれたのだ」


 「なにをバカな・・・」


 レオナルドの言葉をたわごとと一蹴しようとするカウニッツに、


 「まだ気付かないのか?」


 とアリアスに呆れたように言われてカウニッツはハッとする。


 「まさか・・・あの戦士たちは・・・」


 「そうだよ。俺の息のかかったやつらだったんだよ。同じ反抗部族だから油断したな」


 そう、アリアスが言うようにカウニッツの名声を頼って新たに加わった部族の戦士の中にアリアスが自分の部族の者たちを紛れ込ませて少しずつこの砦の中に潜り込ませていたのだ。


 そうして彼らの手引きにより門けて、あらかじめ食事に入れていた睡眠薬で眠り込んでいる戦士たちをしりめにレオナルドたちはここまでたどり着いたのだ。


  「言っておくがこの作戦を考えたのは俺じゃないぜ。レオナルド様だ。この白の聖騎士様はまったく大した人だろう?」


 アリアスは自らを負かしたレオナルドが戦闘だけの男ではないことを嬉しく思っている。


 しかしそんなアリアスを複雑な思いで見ている男が一人いる。


 レオナルドだ。


 (こいつ・・・俺よりもイイ感じのセリフ言ってねえか?なんなの?『まだ、気付かないのか?』とか『まったく大した人だろう?』とかなかなか言えない言い回しだよね?こいつの出番が増えると俺のイイ感じのセリフがかすみそうだな)


 とそんな事を考えていた。


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