白の聖騎士、久しぶりにイイ感じのセリフを言う
(なんだか騒がしいな。何かあったのか?)
カウニッツは物音に眠りを妨げられそうになるが、やがてそれを確認するのも面倒だと思い再び毛布に包まる。
この数週間はかなり忙しかった。
帝国の砦を奪い取ってから、カウニッツの率いる部族の勢威は高まるばかりだった。他の反抗部族からも続々と将たちが馳せ参じてきており、その数は当初の倍以上になろうとしていた。
仮に帝国軍が本腰をいれて砦を取り返しに来ても互角に戦えるだけの戦力が集結していた。
かといってカウニッツはそれに慢心して何も対策しないわけではなかった。
自軍が強大になったからといって油断するのはバカのすることだと思っているからだ。
集まった来た兵を無駄にすることなく、砦に残された資材を使って砦の強化をすすめていた。
もともと帝国の砦はかなり強固なものが多い。侵略主義をとっている帝国は城にしても砦にしても外観に気をつかった華美な形では作らずに、質実剛健の防衛機能優先のものばかりだ。
帝国の砦はそのように少数でも拠点を守ることができるように作られているのだ。
つまりカウニッツが制圧した時点で、砦には数千の敵の来襲に耐えるだけの防御力があったのだがそれをさらに改修して帝国の軍団一つを相手にできるまでになっていた。
それを守る兵も十分に集まっている。先述したが反抗部族たちにとってはカウニッツが帝国の砦を陥落させたと言うニュースは痛快なものであり、もともとはカウニッツと反目していた部族からも多くの戦士たちが集まってきたのだ。
彼らの自らを称える声にカウニッツは満足していたが気を緩めることなく、引き締めるように通達していた。
(しかし、どうやら規律が緩んでいるようだな)
カウニッツは帝国から蛮族と言われる自分たち反抗部族の粗野なやり方が好きではなかった。いや、それはカウニッツにとってコンプレックスと言ってもよかった。
ただ、好きなように暴れまわるのなら獣でもできる。
闇雲に力に頼るのではなく戦術で帝国軍を追い詰めてこそ、自分たちの強さを帝国軍に見せつける事ができる。そう考えていた。
(面倒だが、静かにさせておくか。そうでなくては示しがつかないだろう)
眠気を抑えて、カウニッツが居室のドアを開けると・・・。
ヒヤリ!喉元に長剣が突き付けられる。
「ぐっ!」
カウニッツは長剣から逃れる術を考えるが全く隙がない。少しでもおかしな動きをすればためらいなくこの長剣は喉を貫くだろう。
「・・・反乱か?一体何者だ?」
カウニッツが自らに長剣を突き付けている見慣れない顔の男に絞りだすように言うと、
「帝国軍第八軍団大隊長だ。・・・白の聖騎士レオナルドと言った方が通りがいいかな?」
レオナルドは(これは久々にイイ感じのセリフだな!)とドヤ顔になりそうなのをなんとか抑えながら冷静な顔で言い放つ。
「き、貴様が・・・」
カウニッツが驚愕するのを見ながら
(いいねえ!このシチュエーション!たっぷりイイ感じのセリフが言えそうだ。さあ、たっぷり言ってやるからなあああ)
レオナルドはおかしな方向にテンションが上がっていた。
ただし、見た目は相変わらず平静を保って。




