反抗部族の長、イイ感じのセリフを言う
白の聖騎士レオナルドが守っていた帝国の砦を奪った反抗部族の長、カウニッツは得意満面だった。
同じく帝国に反抗していたアリアスが無様に負けてその配下になっていたレオナルドを戦わずして撤退させたのだ。これが嬉しくないはずがなかった。
「あのアリアスという男は、まあ、多少は個人の武勇は優れているかもしれないが、所詮はその程度の男なのだ。戦は数だ、圧倒的戦力なのだ。どれだけ多くの人間を動かせるかで全てが決まるのだよ」
部下たちに語り掛けながらカウニッツは思い出す。
同じ反抗部族でありがなら「自分よりも弱きものには従わん」と大部族の長であるカウニッツに従わないで単独行動をとったアリアスとその配下の者たちの忌々しい行動を。
確かにアリアスは強い。一対一で戦えば恐らくカウニッツに勝ち目はないだろう。
だが、率いている部族の数で言えばカウニッツには10倍以上の兵がいるのだ。
それならば同じ反抗部族として・・・
「この俺に従うのが当然だろう!」
「カウニッツ様?」
その怒りを声に出してしまっていたカウニッツに部下たちは怯えた表情になる。
(いかんな。つい、あの馬鹿どものことになると感情的になってしまう)
カウニッツは自分の短慮を反省する。
「大きな声を上げてすまなかったな。それで・・・何の用だったかな?」
先ほどまでとはうって変わってカウニッツは温厚な笑顔を向ける。
その様子に安心したのか砦を探っていた部下が報告をしてくる。
「実は見て頂きたいものがあるのです」
「ほう?」
部下の案内に従ってカウニッツは砦の中心部に向かう。
「こちらを御覧ください!」
「これは・・・」
感嘆の声を上げるカウニッツが見たのはレオナルドたちが残していった砦用の補修物資だ。
「帝国の豚どももたまにはいい事をするではないか。砦を我々に献上しただけではあきたらずこんな贈り物まで残してくれたのだからな!」
「では、この物資は・・・?」
「当然、有効活用させてもらおう。そうでなければ贈り主に失礼だからな」
ニヤリと笑うカウニッツに部下も笑顔でこたえる。
「さようですな!では早速作業にかからせましょう!」
「そういうことだ。しかし、帝国の奴らもバカな、いや、親切な奴らだな!はーっはっはっはっはっは!」
カウニッツの高笑いが砦中に響いたのだった。




