白の聖騎士、意味ありげな事を言う
反抗部族の数は5000以上。
偵察部隊が持ち帰った情報をもとにレオナルドの隊は作戦会議を開いていた。
「まずい事になりましたね」
傭兵隊長であるタイユフールは今はレオナルドの副官のような立場になっていた。
「少々想定外ではあるな」
もう一人の副官ともいえる元反抗部族の長のアリアスも渋い顔をしている。
レオナルドが任されている砦に反抗部族が攻撃をしかけるとの情報は入っていたが、その規模は完全に想定以上のものだったのだ。
アリアスが率いていた反抗部族は300にすぎなかったが、今度の部族はその十倍以上の数が見込まれているのだ。
「この砦、思ったよりも整備されていませんからね。いそいで補修はさせていますが大軍を迎え撃つには兵も装備も足りませんよ」
いつも飄々としているタイユフールだが、さすがに深刻な顔になっている。
「タイユフール殿はここで迎え撃つつもりか?俺はいっそこの砦からうって出た方がよいと思うがな」
アリアスは「守るのは性にあわんな」と砦から出て戦うことを進言するが、タイユフールはすぐに反論する。
「私は反対です。敵との戦力差がありすぎます。防御力に不安があっても、砦に籠城して時を稼ぐ方が得策だと思います」
「それで防ぎきれるのか?四方を囲まれたら、一方向に250程度しか配備できんのだぞ。それこそ防衛力の弱いところから砦が落とされるぞ。ここは突撃あるのみだ」
「突撃では無意味な死傷者を増やすだけです。籠城です」
「いや、突撃だ!」
「籠城です!」
異なった意見を続ける副官二人にレオナルドは重い口をようやくひらく。
「二人の意見は分かった。私の考えを言おう」
タイユフールとアリアスの視線が自分に集まるのを待ってレオナルドは再び語り始める。
「籠城はしない」
タイユフールは失望を隠せず、アリアスは喜色を浮かべるが、
「突撃もしない」
続いてでた言葉に二人は混乱する。
その様子を満足そうに見るレオナルド。いかにも深い考えがありそうだったが・・・。
(やっべー!どうしようか。とりあえず『二人ともの意見を意味ありげに静かな声で否定する』っているのをやってみたけど、籠城もしなくて、突撃もしないってどうすればいいんだ?無理じゃないか、これ?あー、後先考えずに言っちゃったわ)
「では、どうすると言うのです」
当然の疑問をぶつけてくるタイユフールに、
(ですよねー!そうくるよねー!あーどうしよう!)
レオナルドは完全に困っていたが、平静を保って
「わからないのか?」
そういって、時間を稼ごうとするが
「もったいぶらずに教えてくれ。我らはもはやレオナルド様に命を預けているのだ。どんな無茶な命令でもきく用意はできている」
「そうです。レオナルド様の決めた事なら皆従うでしょう」
二人の副官に詰め寄られてしまう。
「そうか・・。では・・・」
『では・・・?」
固唾を飲んで見てくる二人に対してレオナルドが出した答えは
「この砦を捨てて逃げる」
籠城でも突撃でもないまさに第三の選択だった。




