白の聖騎士、傭兵隊長を頼りにする
聖剣を取り戻して名実ともに聖騎士に戻ったレオナルドをともなってフローラは第八軍団で新たに雇った傭兵隊のもとに来ていた。
レオナルドの部下となる傭兵達との顔合わせのためだ。
レオナルドは少し緊張していた。
なにしろこれから会う傭兵達がこれからの自分の運命、と言うか自分が『イイ感じのセリフ』の言えるかどうかを決めると言っても過言ではないからだ。
傭兵隊にはそれぞれの隊を率いる隊長の性格が出るものだ。
とにかく利益優先で、金次第でどんな動きをする(裏切りも含めて)するような傭兵隊もいるし、金をもらったからには絶対に裏切らない信義を大事にする傭兵隊もいる。
また、隊員の命を大事にして危険な任務は請け負わないでとにかく安全を優先する隊がいたかと思えば、隊員の命を使い捨てのようにする隊もいる。
(俺に『イイ感じのセリフ』を言わせてくれるような隊長ならいいが・・・)
レオナルドの危惧が伝わったのか、フローラが声をかけてくる。
「安心してください。レオナルド様につける傭兵隊は歴戦の猛者が揃った優秀な隊だときいています」
「そうですか。ありがとうございます」
レオナルドはフローラの気遣いにお礼を言いながら、
(いや、そうじゃないんだよなな。別に新米部隊でもいいから俺に『イイ感じのセリフ』を言わせてくれるかどうかだよ。下手に歴戦の猛者とかだと、俺の活躍の場が減って、結果的に『イイ感じのセリフ』を言う機会が減るかもなあ・・・)
心の中では残念がっている。
微妙に話がかみ合ってないレオナルド達に一人の背の低い男が近づいてくる。
「レオナルド様!お久しぶりでございます!」
「君は・・・タイユフールか?まさか君が・・・?」
「はい!私がレオナルド様の元につかせていただく傭兵隊の隊長です!」
タイユフールと名乗る男は懐かしそうに頭を下げると、レオナルドも満面の笑みを浮かべる。
(キター!大当たりキター!この上なく俺にとって都合いいヤツがキター!)
「あの・・・お二人はお知り合いなのですか?」
「ああ。これは失礼。彼はタイユフール。聖王国で私の吟遊詩人をしていた男です」
「聖王国の吟遊詩人?確か彼は傭兵隊で10年以上働いていたと・・・」
フローラが疑問を口にすると、
「ああ。それはウソです。でも傭兵隊の隊長なのは本当ですよ。レオナルド様に会うためにここの傭兵隊の隊長に喧嘩を売って隊長の座を奪い取って、そのあとごちゃごちゃ言ってきた隊員も全員返り討ちにしてやりましたから」
タイユフールは悪びれることもなく告げる。
「しかし、吟遊詩人が傭兵なんて・・・」
「いえ、フローラ様。彼は私付きの吟遊詩人になる前は聖剣候補生の一人でしたから騎士としての実力も確かですよ」
聖王国には聖剣の持ち主を選ぶべく、各世代の騎士たちから優秀な者を選んで聖剣候補生として育てているのだ。彼らは仮に聖剣に選ばれなかったとしても騎士としては最エリートの部類に入る。
 
「そういうことです。レオナルド様、これからよろしくお願いします」
「ああ。頼りにさせてもらうよ」
(こいつは最高だよ。何しろ俺の英雄詩を書くためなら、俺の命なんてどうでもいいと思っているくらいのヤツだ。俺がピンチに陥っても下手に助けに来ずに、俺の見せ場を作ろうとしてくれるだろう)
レオナルドは変な意味でタイユフールを頼りにするのだった。
 




