白の聖剣
「こちらです」
レオナルドはフローラに連れられて帝国の宝物庫に案内されていた。
ここに来たのはもちろん白の聖剣を受け取るためだ。
フローラが宝物庫の係官にガラハド皇子からの書簡をみせると、すぐに納得した様子で
「ガラハド殿下からは承っています。しかし、助かりましたよ。あの聖剣はここに保管するようになってからは日に日に重くなっていて、ちょっと動かそうにも5人がかりで運んでいましたからね」
ようやく厄介払いができたと係官は胸をなでおろしている。
「聖剣は所有者を選ぶそうですからね。レオナルド様以外には使われたくないという意思表示ではないのでしょうか」
フローラの物のわかったような言い方に、
「そうですね。確かに聖剣は所有者以外には使えないと言われています」
レオナルドは真剣な顔で肯定しながらも、頭の中では全く違う事を考えていた。
(あいつ、やってたな。間違いなく『所有者以外には使われない聖剣』をやってたな。白雲といい、聖剣といい、あいつらはなんか他人とは思えないぜ!もしかして俺の生き別れの兄弟とか?)
レオナルドは馬と剣に人間以上の親近感を抱くあまりに人外と血がつながるというわけのわからない思考になってしまっている。
係官が宝物庫のカギを開けると、突風によってドアが音をたてて開く!
「こ、これは・・・」
宝物庫の中ではまばゆいばかりの白い光があふれており、衝撃波が吹き荒れているのをみて係官は絶句する。
今までこんな光景は見たことがない。いつもは薄暗く静まり返った部屋なのだ。
「レオナルド様。・・・これはいったい?」
フローラも不安そうにレオナルドの顔を見てくる。
「フローラ様、これはですね・・・」
(白の聖剣のやつがやってるんです。思いっきりやってるんです。真の所有者との再会をめちゃくちゃ演出してやってるんです)
レオナルドは思わず本音を言いかけるがなんとか踏みとどまる。
「聖剣は生命をもっていると言います。今までこの暗い部屋に閉じ込められていたことへの怒りがこうして表れているのではないでしょうか?」
レオナルドのこの言葉に慌てたのは係官だ。「ひえー」と悲鳴を小さく上げると、
「聖騎士殿。早く、聖剣の怒りを鎮めて下さい。早く、お願いします!」とレオナルドの事を拝むように見てくる。宝物庫の管理者としては早くこの異常事態を収束させたいのだ。
「言われなくともそうするつもりだ。あれは俺の剣だからな」
キリっと決めていくレオナルドだったが、フローラが服の裾を引っ張ってくる。
「本当に大丈夫ですか?レオナルド様」
衝撃波と光があふれている宝物庫に入ることへの危険性をフローラは心配するが、レオナルドは毅然とした態度で答える。
「大丈夫です。あの剣は私の剣です」
そう言ってレオナルドが進んでいくと、不思議な事にレオナルドを避けるように衝撃波が消えていく。
やがてレオナルドが聖剣をその手にとると聖剣はさらに輝きを増して宝物庫の外にまで白い光を溢れ出させた後、普段の状態に戻る。
「待たせたな・・・」
レオナルドはそこそこイイ感じのセリフ『待たせたな・・・』を聖剣に言うのだった。
*
ちなみにそのころ聖王国の聖堂にある聖剣の台座でも・・・
「なんだああ、この光はー!」
大騒ぎになっていた。




