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青の聖騎士、憤る!

「どういうことだ!なぜレオナルドの身代金の支払いが拒否されている!」


「そ、それは・・・」


青の聖騎士クレディに詰め寄られた係官は「武官であるあなたには関係ない事」と言うべきであったが、そんな事を口にすればどうなるかは火を見るよりあきらかだった。


(これは隠しきれない・・・)


クレディの迫力に係官はあっさりと抵抗をあきらめると


「ピ、ピジョン様のご指図なのです。この身代金は払う必要がないと・・・」


「宰相が?あの男・・・!」

 クレディは係官の制止を振り切って王宮の奥へ進んでいく。


 宮廷護衛兵たちが群がってくるが、クレディは聖剣を抜くこともなく拳で打倒していく。さすがに聖騎士だけあって段違いの強さを見せる。護衛兵が束になっても全くかなわない。


 そこに赤の聖騎士ゴドフロアが立ちはだかる。


 「クレディよ、どうするつもりだ?」


 「決まっている!あの奸物を斬る!」


 クレディは興奮のあまり将軍であるゴドフロアに対してもタメ口だ。


 「頭を冷やせ、馬鹿者が・・・」


 「どいてもらおう!邪魔するならばあなたであろうとも容赦はしない!」


 クレディの怒りに呼応するように青の聖剣は鞘に納められたままにも関わらず青白いオーラを放ち始める。


 「どうあっても通るつもりか」


 クレディとは対照的に冷たい声のゴドフロアが赤の聖剣に手をかけると赤の聖剣もまた力を抑えきれないように震えだす。


 クレディが青の聖剣を抜き放ち、それを赤の聖剣でゴドフロアが受け止める!

 その後もクレディの息もつかせぬ猛攻をゴドフロアが受け流して二人は次第に移動していく。どうやらゴドフロアがそうなるように誘導しているようだった。


 (ここは・・・)


 クレディは気づく。自分たちがピジョン宰相の執務室のすぐ近くまで来ていることに。


 (まさか、ゴドフロア将軍はこれを狙っていたのか?)


 クレディを止めるフリをしてピジョン宰相のもとまで案内する。『神算鬼謀』の赤の聖剣の持ち主であるゴドフロアならやりそうなことだ。


 (あと一息で・・・)


 クレディがそう思ったときに


 「二人とも!おやめなさい!」


 止めに入ったのは金色の姫騎士シエナだ。


 「レオナルドの事は私からお父様にお話しします。それでいいですね?」


 有無を言わせないシエナの態度にクレディもゴドフロアもあきらめる。

さすがに姫であるシエナが動けばなんとかなるだろうと判断したのだった。




 一方そのころ白の聖騎士レオナルドは絶望を味わっていた。


 「この私をここまで追い詰めるとはやるじゃないか。だが、私は負けんぞ!」

 

 そんなセリフを言っているが、ジルに案内された一般捕虜用の牢獄はそれほどひどい場所ではなかった。

 簡易ながらもベッドがあるし、石畳だったが掃除は行き届いており不衛生ではなかった。なにより捕虜たちが多数詰め込まれた大部屋ではなく独房だったのが、普通の捕虜達からしたら天国のように思えるような場所だった。


 この部屋に案内してきた時にジルは努めて好意的な声で


「ボードワン将軍のご指図です。さすがにあなたを他の者たちと一緒に雑魚寝をさせるわけにはいきませんからね。不自由にはなるでしょうが我々はできるだけの事をするつもりです」


 と説明していたが、レオナルドは怒り心頭だった。


 (よ・け・い・なことを~!大部屋じゃなかったら誰にも俺の『イイ感じのセリフ』を聞かせることができないじゃないか!)


 そんなレオナルドの様子に


 (このような粗末な場所に入れられたならレオナルド様のお怒りももっともだろう)


 と間違った解釈をしてしまっていた。


 しかもジルの勘違いはそれだけではなかった。


 (これほどお怒りならしばらくは誰も近づけぬ方がよいだろうな。フローラ将軍が会いたがっていたが事情を説明して遠慮していただこう)


 良かれと思って、レオナルドに人を近づけないようにしていた。


 こうしてレオナルドは誰とも会話することなく、つまり『イイ感じのセリフ』を言う機会を全く与えられないという絶望の日々を過ごすことになる。

 何度かレイミアが「はっ、ざまあ・・・」と現れかけて、そのたびにジルに連れ戻されていたのが唯一の癒しだったが、それも二日目にはなくなってしまった。

 ジルが気をまわして警備を強化したためだ。


 一週間が過ぎた・・・。


 レオナルドは一人でぶつぶつ言っていた。さきほどのセリフ「この私をここまで追い詰めるとはやるじゃないか。だが、私は負けんぞ!」も聞かせる相手もなく一人で呟いていただけだった。


 彼の精神状態はヤバかった。

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