白の聖騎士、妹に心配?される。
レオナルドが帝国から解放される期日がせまっていたが、相変わらず姫騎士シエナは聖堂にある白の聖剣の台座を見に来ていた。
「シエナ様、またここに来られていたのですか」
祈るような格好でいたシエナに声をかけたのは青の聖騎士クレディの妻で、レオナルドの妹であるマリーだ。
「マリー・・・」
心労がたまっているのか、そう言いながら振り返った姫騎士シエナの顔色はよくない。
そんなシエナの顔を見てマリーは思う。
(夫に言われてここに来てよかった。確かにこれは重症だわ)
「シエナ様、いつもここにいてはお身体に障りますよ。帰りましょう」
レオナルドによく似た目をした美人であるマリーは努めて明るくふるまっている。
「マリー、あなたは心配ではないのですか?この聖石の色を見ても・・・」
シエナが言うように白の聖剣の台座の聖石は明らかに以前より輝きが落ちている。これがシエナの心労の原因だろうが、マリーは
(シエナ様はこの石の色の事を気にしているのね。確かに色は悪くなっているけど、これで兄さんが無事じゃないと考えるのは早計だと思うわ。
・・・あの兄さんだもの)
「シエナ様。妹の私が言うのも変ですが、兄さんの事は心配いらないと思います。あれでなかなかしぶとい性格をしていますから」
「そうかしら・・・。レオナルドは『自己犠牲』の聖剣の持ち主でしょ?きっと囚われの身であっても自分を犠牲にしてなにか無茶なことをしているのではないのでしょうか・・・」
シエナは反発するが、マリーその言葉にあまり納得できない。
(そもそもあの兄さんが『自己犠牲』の聖剣の持ち主っていうのが怪しいのよね・・・。正直、兄さんよりよっぽどうちの夫の方が人がいいと思うのよね・・・)
マリーは青の聖剣の持ち主である夫、クレディの方がレオナルドより素直で自己犠牲の精神にあふれていると思っている。
クレディは直情的なところがあるが、裏表がなく、そのうえ弱い立場の者たちに対して思いやりがあった。
世間的にはレオナルドも冷静でありながら、裏表がなく、弱い立場の者たちの事を考えていると思われているが、妹であるマリーにしてみれば
(兄さんは悪い人ではないし、していることはイイことばかりだけど、昔からあまりにも演出過多というか、どうも芝居がかっているように見えるのよね)
とういうことらしい。
幼いころからいじめっ子たちから自分を助けてくれていた兄の事は好きだったが、なぜかイイ場面になるまで現れないし、その頃から妙に芝居がかったセリフを兄は言っていた気がする。
(そんな風に受け取るあたしがひねくれているのかしら?でもなあ・・・)
このようにマリーは白の聖剣の条件が『自己犠牲』ではない事にうすうす気づいていたが、あえてそれは黙っている。
「とにかく兄さんなら大丈夫ですよ!妹である私が保証します!それにここにいたって兄さんはすぐに帰ってきませんよ!五日後に戻ってくるんですから!」
マリーは無茶苦茶な理由でシエナを引っ張っていくがシエナもそれに強くは逆らわない。確かにマリーの言うように五日後には帝国から解放される予定になっている。帰ってきたときに自分があまり気にしすぎていたらレオナルドも嫌だろうと思ったのだ。
マリーはシエナを引っ張りながら
(兄さん、五日後にはちゃんと帰ってくるわよね?
・・・なんか帝国で変な事してなきゃいいけど)
一応心配するのだった。
 




