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白の聖騎士、ちょうどいい悪役に出会う

 フローラがレオナルドの独房(というにはあまりに豪華だが)を初めて訪れてから三日たっていたが、フローラは事あるごとにレオナルドに会いに来ている。


 今日も「よいお茶が手に入りましたので・・・」と口実をつけて入り浸っていた。


 そこへフローラと同い年くらいだろうが、清廉で華奢なフローラと違って豪華絢爛な美しさを誇る大柄な少女が文字通り乱入してくる。


 「邪魔するわよ!」


 「レイミア様!失礼ではないですか!」


 レオナルドとの大事なひと時を邪魔されたフローラが抗議するが、レイミアと言われた少女は一喝する。


 「フローラ!将軍になったからといって、あたしより偉くなったつもり?あんたには用はないのよ!この、色ボケ将軍!」


 「い、色ボケって・・・」


 レイミアの言葉にフローラは言葉を失う。


 自分のレオナルドへの秘めたる思いをそんな風に表現される事にショックを受けて反論すらできないでいた。

 

 (今の言葉、レオナルド様はどう思ったのかしら・・・)


 フローラはレオナルドの顔色をチラリとのぞきみるが、


 「君は誰かな?まずは名を名乗ったらどうか?」


 「そうね!名乗ってやってもいいわ!あたしは帝国第三軍団副将軍レイミアよ!」


 乱入者にもいつもと変わらない様子で落ち着いているレオナルドだ。

 その問いにレイミアはやたら威張って答えている。


 「第三軍団と言うと、私が戦ったボードワン将軍の軍団か」


 「・・・ボードワン将軍のお孫さんです」


 少し立ち直ったフローラがそう付け加えてくる。レオナルドが動揺していないのでなんとか立ち直れたらしい。


 レイミアは副将軍という立場ながらもともと帝国での地位が高い貴族のため、新参者のフローラを見下していてその態度に隠さない。

 フローラも現在は将軍職に就いているので上位職にあたるので反論すればよいのだろうが性格的にいまいちできないらしい。

 

 「お祖父様の軍団を食い止めたからといって、あまり調子に乗らないことね。第三軍団の主力はあたしのところにいたんだから!」


 どうやらレイミアはレオナルドの第三軍団を抑えたことを自分の率いる第三軍団の精鋭がいればそんな事にならなかったと言いたいようだ。


 「だいたい、少人数で退却戦を引き受けたらしいけど、自分だけ捕虜として生き残るなんて死んだ仲間たちに恥ずかしくないの?」


 「いや、それは・・・」


 挑発するように言うレイミアにレオナルドが説明しようとするが



 「いいわけするの?騎士らしくないわね!少人数って言っても数百人はいたんでしょう?3000人の軍団を相手にしてたんだからそれくらいはいたはずよ!つまり、あなたの今の待遇はその数百人の人たちの犠牲の上にあるってわけよ!言ってみればその人たちの命で地位を買ったと言ってもいいわね!」


 「レイミア様は誤解しています。レオナルド様は・・・」


 「フローラは黙ってなさい!・・・誤解?ははーん、さては人数はもっと少なかったとでも言うわけね?でも、一人でも犠牲にしていたら結局は一緒よ!数の問題じゃないの!」


 勝ち誇ったように言うレイミアに


 「いえ、レオナルド様は一人も犠牲にされていないのです」

 

 フローラはめげずに反論するが、レイミアは鼻で笑い飛ばす。

 

 「はっ?犠牲になっていない?それは勝手な解釈というものだわ!例え死んだ本人が『これは犠牲ではありません、私がしたいからするのです』てなことを言ってても死んだ人間の家族の中には犠牲になったと考える者もいるはずよ!」

 

 「だからその死んだ者がいないのです!なにしろレオナルド殿はたった一人でしんがりを引き受けられたのだから」


 珍しく声を荒げたフローラにレイミアは少々びっくりして

 

 「はっ?たった一人で?・・・友達いないの?」

 

 バカにするように言っている。

 

 「・・・本当にボードワン将軍の孫か?」


 レオナルドは捕虜にした自分を好意的に扱ってくれており、白雲も返してくれるというボードワン将軍を人格者だと思っていたのでレイミアの態度に驚いている。


 「・・・本当にお孫さんです。ものすごく甘やかされた」


 フローラは疲れた声で答える。いつもレイミアには苦労させられているらしい。

 だが、レオナルドはレイミアを気に入っていた。


 (いい。この子、すごくいい。悪役の『よくあるセリフ』をものすごく言ってくれるって貴重な存在だよ。正直なところ、こういう存在がいてくれると『イイ感じのセリフ』を言うのに助かるんだよなあ。

 ここは敵国なのになぜかみんな俺に好意的だからな~。こういうわかりやすい悪役は貴重だよ・・・。

 まあ、でも・・・フローラ様も困っているようだからここは一旦引いてもらうかな)


 「レイミア嬢。もし、あなたがあの場にいたら私をすぐに仕留めることができたと言うのなら、これから私と手合わせでもしてみるかな?わたしはいつでも受けて立つよ」

  

 勢い込んでいたレイミアだがレオナルドの提案に意外にも弱気な声を出す。


 「・・・そんなのしてもあたしの負けにきまってるでしょ。()()()に一対一で勝つようなやつにあたしが勝てるわけないじゃない。あたしは集団戦の話をしているの!もういい!帰る!」


 怒ったように顔を赤くしてレイミアは去っていく。その後姿をみながら


 「レイミア様はシンゴ殿を好いているのです」


 フローラがこっそりレオナルドに告げてくる。


 「・・・なるほど」


 自分の軍団がいれば負けなかっただの、味方を犠牲にしただの、いろいろ言っていたがようは(いと)しのシンゴが一対一でレオナルドに負けたのが気にくわなかっただけだった。

9/25 19:55 修正しました。

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