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白の聖騎士、敵の女将軍とイイ感じのセリフを言う

レオナルドがシンゴに勝った事はいつの間にか帝国兵の間で知れ渡っていた。


 練兵場はジルによって人払いされていたが、練兵場の外から様子をうかがっていた兵士たちがいたらしい。

 その兵士たちが見たままに「正直速すぎてその瞬間に何が起こったよくわからなかったが、一瞬の間にレオナルド殿がシンゴ殿に木剣を突き付けていた。あれこそまさに神業といったものだろう」と話して回ったらしい。

 それによってレオナルドに面会を希望する者たちがさらに増えていた。



 「帝国第8軍団将軍のフローラです・・・。レオナルド様、わたくしのことを覚えていますか?」


 第八軍団の将軍と名乗るその少女はまだ十代半ばから後半といったところだろうか。

 ショートカットに整えられた銀髪が印象的な気品のある顔立ちをしたかなりの美少女だがレオナルドには見覚えがなかった。


 ここ数日で多数の帝国の人間が訪ねてきていたが、これほど特徴のある人物なら一度会ったら忘れようがない気もする。なにより帝国兵では女性が少なく、訪ねてきた者はほとんどが男性だった。


 「すまないが覚えてないな。どこであったのかな?」


レオナルドが素直に覚えていないと告げると、フローラは少し残念そうな笑みを浮かべる。


 「・・・覚えておられなくても無理ないですわね。5年も前の事ですから」


 「5年前・・・?」


 5年前はまだ聖王国は帝国とは争っていない。それこそ出会うことはないようだが・・・・。

 

 レオナルドは改めてフローラの顔を見る。この少女の5年前ともなれば10歳前後か・・・。

 銀髪で、気品を感じさせる顔立ち・・・。フローラという名前・・・。


 「・・・もしかしてリンツ公国のフローラ姫ですか?!」


 「思い出して下さったのですね!嬉しい!」


 探るようなレオナルドの言葉に花のような笑顔でフローラは喜んでいる。


 「これは失礼致しました。・・・帝国の将軍になられていたのですね」


 「ええ。リンツは3年前に帝国に併合されましたから、その時にリンツ騎士団とともにわたくしも帝国に所属することになりました。第8軍団の将軍に任命されたのは1年前の事ですけどね」

 

 そう言うフローラの顔は意外と明るい。リンツが帝国に併合された事実をそれほど重く受け止めていないようだった。


 「しかし、こう言っては失礼かも知れませんがずいぶん立派になられましたね。見違えましたよ」


 「あの頃はほんの子供でしたから。でも、わたくしはレオナルド様の事を覚えていましたよ?」


 少し意地悪な言い方をするフローラに


 「すみません。不徳の致す限りです」


 レオナルドは律義に謝っている。


 「冗談です。でも、わたくしだとわかったら急に話し方を変えましたね。なぜですか?」


 「帝国兵に対してはどのような者であろうとも敵国の者としてへりくだりたくはないのです。しかし、あなたリンツ公国の姫君です。礼儀をもって接するのが当然です」


 「もう、リンツという国はないのに不器用な方ですね。初めて出会った時もそうでしたがあなたは人に媚びるということがないのですね」


 レオナルドとフローラが初めて出会ったのは5年前の聖王国の宮殿だ。


 当時リンツ公国は聖王国の提唱する神聖同盟に所属しながら、帝国ともよしみを通じていた疑いがあった。

 事実はわからないが、その釈明のためリンツ公王と共にフローラも聖王国に訪れていたのだ。


 リンツ公国は聖王国に比べてると小国でかなり格が落ちるため、帝国とのつながりを噂されているにも関わらず、のこのこと釈明に来ていたリンツ公王に対して敵意を持った視線やあなどりの態度をとる聖王国の貴族も少なくなかった。

 その影響は同行していたフローラにも向けられ、幼いフローラもずいぶん嫌な思いをしたものだが、それに対して「一国の姫君に対して無礼であろう!」と一喝したのがレオナルドだった。

 

 平民出身で聖騎士になりたてのレオナルドが上位貴族たちを一喝するなど本来あってはならないことだが、姫騎士シエナの「レオナルドの言う通りです。フローラ様に対して不遜な態度は許されませんよ」とたしなめたので貴族たちも黙るしかなかったのだ。


(あの時は俺も若かったな~。でも、どうしても『一国の姫君に対して無礼であろう!』って言いたかったんだよねえ。姫様がとりなしてくれなかったらまずかったかもなあ・・・)


 「私はどうも一言多いようです。つい言わなくてもよい事を言ってしまうのです」


 「あら、あの時の言葉は言わなくてもよい事だったのですか?わたくしは大変うれしかったのですよ?」


 「いえ、そんな・・・」


 慌てるレオナルドを見てフローラは微笑む。


 「少し意地悪が過ぎたようですね。でも、わたくしの事を忘れていたレオナルド様が悪いのですよ」


 いたずらっぽく笑うフローラに、


 (なんかフローラ様も大人になったなあ・・・。『イイ感じのセリフ』のやり取りが上手になられた・・・)

  

 レオナルドは変なところに感心するのだった。

珍しく女性キャラがでました。

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