白の聖騎士はこうして侍に勝っていた
レオナルドとシンゴの決着は一瞬でついていたが、それまでにレオナルドはいろいろ考えていた。
(なかなか仕掛けてこないな・・・。こっちはもう負けたときのセリフはとっくに決めたっていうのに・・・)
負けたらいつでも『イイ感じのセリフ』を言えるようにレオナルドは準備万端だ。
そのシチュエーションもバッチリ予測している。
これだけ時間をかけているということは、シンゴはおそらくこっちの隙を見つけようとしているのだろう。そしてその隙を狙って放つ一撃必殺の技の溜めをしているはずだとレオナルドはみている。
シンゴの強烈な技は盾で受け止める必要がある。しかし、これだけ時間をかける技だ。当然、その威力に負けて盾を弾き飛ばされるだろう。
盾をうまく弾き飛ばされたらこっちのものだ。
即座に「参った!」と負けを宣言する。
こうすれば怪我をさせられることもないだろう。
盾で受け止めて、そのまま盾を弾き飛ばされる。これが重要だ。
盾で受け止めるだけではダメだ。受け止めたままでは戦いが継続してしまう。
それでは意味がない。
受け止めた後に盾を弾き飛ばされてこそ「参った!」と言うタイミングが生まれるのだ。
そしてそのあとのセリフはもうすでに考えているのでスムーズに言えるだろう。
いかに自然に盾を弾き飛ばされるかは難しいが、レオナルドとて一応、並みの騎士ではない。ここまで考えていればうまくシンゴの動きに合わせられる自信があった。
では、実際にはどうなったのか?
すでにわかっているように、レオナルドはシンゴの気負いからその攻撃の瞬間を察知していた。
(よし、仕掛けてくるな・・・。しっかり受け止めて・・・って速っ!)
シンゴの攻撃が速すぎて、弾き飛ばされようと出した盾の動きが少し遅れてしまう。
(ヤバい!自然に弾き飛ばされないと・・・)
レオナルドの焦りが不自然に盾を動かすことになる。
だが、その盾の不自然な動きがよくなかった。
思いもよらない盾の動き(自分から弾き飛ばされようとする動き)にシンゴは完全に体勢を崩され、気が付いたらレオナルドの木剣の切っ先がシンゴの首筋に突き付けらていたのだ。
「・・・参りました」
シンゴは悔しそうに唇をかんでいる。自分でもどうなったのかわからないが負けは明らかだと思ったのだ。
「・・・ふっ」
レオナルドはそうつぶやく。
(・・・マジかよ。勝ってしまった・・・勝った時のセリフは全く考えてなかったから全然出てこない・・・)
レオナルドは別にカッコつけて何も言わなかったわけではなく、全く勝てると思っていなかったのでセリフの用意がないだけだったのだ。
「そこまで!勝者、レオナルド」
ここでジルが宣言して勝敗はつく。これがレオナルド対シンゴの手合わせの真相だった。




