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白の聖騎士、侍に再びイイ感じのセリフを言う

 その日ジルが連れてきたのは明らかに帝国兵とは違う服装をした少年だった。

 東方の人たちの服で着物と言われているゆったりとした服装の少年にレオナルドは見覚えがあった。


 「お久しぶりです。と言ってもきちんとした挨拶はしていませんでしたよね。僕はヒノモト国で心童流の師範代をしているシンゴ・シンドウと言います。よろしくお願いします」


 ハキハキとした口調で頭を下げるシンゴは15、6歳の少年とは思えないほど凛としている。


 「聖王国の騎士、レオナルドだ。いつぞやの剣技は見事だったよ」


 「いえ、お恥ずかしい。あれは一対一の戦いではありませんでしたから・・・」


 レオナルドに褒められたシンゴは少年らしくほほを赤くして照れる。美少年のシンゴだけに妙な色気があるが、レオナルドにその気はないのでドキリとはしない。

 ただ、(姫もよく俺と話している時によく赤くなっていたなあ)と『イイ感じのセリフ』にか興味のないこの男にしては珍しくシエナの事を思い出していた。


 「シンゴ君は帝国の人間なのか?」


 「いえ、僕は武者修行で旅をしている身です。ボードワン将軍がお祖父様の親友だったのでここへ立ち寄っていたところ、あなたと戦うことになりました。

 また、旅に出ることになったので挨拶に寄らせていただいたのです」


 「そうか。ご丁寧な事だな」


 「それでですね。旅立つ前に一つレオナルド様にお願いがありまして・・・」


 「シンゴ殿!困りますな。それを言われないという約束でここにお連れしたのですよ」 


 シンゴが何か言いかけるのをジルが止める。どうやらシンゴはただ単に旅立ちの挨拶のために来たわけではない様だった。


 「いや、いいよ。どんな話かわからないが私にできることならしよう」


 「ありがとうございます!実は旅立ち前に僕と手合わせをしていただけないでしょうか?あなたとはぜひとも一対一で戦ってみたいのです!」


 「構わないよ。私でよければ相手になろう」


 レオナルドは二つ返事で引き受けているがジルは苦い顔をしている。

 

 「レオナルド様、あなたに万が一のことがあっては困るんですが・・・」


 ジルは身代金と引き換えに解放されることになっているレオナルドが下手に手合わせをして怪我でもしたら困ると思っているようだった。


 「ジル、君の気持はありがたいが、騎士が手合わせを望まれて逃げることなどできないだろう?」


 レオナルドにそう言われてジルも黙ってしまう。

 (だから連れて来たくなかったのだ。レオナルド様の性格を考えたらシンゴの挑戦を受けないわけがなかった。ここで逃げるような方ならたった一人で帝国軍の相手をしようなどと思わないだろう)


 ジルは騎士の誇りを大事にしているからレオナルドが手合わせを受けたと思っているが・・・。


(すまないな。ジルの兄貴!捕虜を傷物にしたくないという兄貴の気持ちはよくわかるが『私でよければ相手になろう』や『騎士が手合わせを望まれて逃げることなどできない』と言うチャンスを逃すわけにはいかなかったんだ・・・)


 ただ単に『イイ感じのセリフ』を言いたいがために引き受けていただけだった。


 「ジルさん、心配しなくてもいいですよ。今回は真剣を使う気はありませんから。レオナルド様もそれでいいでしょう?」


 「ああ。それで構わないよ」


 (あっぶねえええ。手合わせって真剣でやるパターンもあったのかああ。勝手に木剣でやるものだと思ってたけど!

 真剣でやってたら怪我どころか下手をしたら死んじゃうじゃん!

 ・・・東方の人ってマジで怖いんですけど!)


 「はあ・・・。仕方ありませんね。くれぐれもお二人とも怪我をしないでくださいよ」


 「はい!頑張ります!」


 ジルのため息にシンゴは元気よく答えている。


 「レオナルド様も気を付けてくださいよ。シンゴ殿は木剣でも鉄の鎧を切り裂いたりするんですから・・・」


 「ふっ、それはおもしろいな・・・」


 ジルの忠告にレオナルドは余裕で答えているが・・・。


 (え?え?え?どゆこと?木剣で鉄の鎧を切り裂くって・・・。なにそれ!こわいっ!)


 レオナルドは自分が踏み込んではいけないところに来ていることに今頃気づいていた。

次話はレオナルド対シンゴです

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