白の聖騎士、姫騎士に心配される
レオナルドが捕えられてから一週間がたち、聖王国にもレオナルドの無事は伝わっていたが、それでも姫騎士シエナは不安に駆られていた。
「姫、またここに来られていたのですか」
青の聖騎士クレディに声をかけられて姫騎士シエナは振り返る。
「ええ。これを見ればレオナルドの無事がわかるものですから・・・」
聖堂には各聖剣が飾られていた台座がある。現在は七本の聖剣に所有者がいるので空になった台座が七つあるが、シエナがいつも見に来ているのはもちろん白の聖剣の台座だ。
台座にはそれぞれ聖石がはめられており、所有者が決まって聖剣が引き抜かれるとそれまで黒く光を失っていた聖石に光がともるのだ。
そして所有者がその資格を失ったり、死亡したりするとふたたび聖石は光を失って黒くなってしまう。
もっとも聖石が暗くなっても、所有資格を失っただけで死亡していない場合もあるが光っていれば少なくとも生きてはいる。
「心配はいりませんよ。帝国には身代金を払うことはすでに伝えています。レオナルドは無事に戻ってきますよ。現に聖石だって光っているではありませんか」
「それはそうですけど・・・。でも、聖石の輝きが以前よりも弱くなっているように私には思えるのです」
「それは・・・」
確かにシエナの言うように太陽のように明るく輝いていた聖石は少し鈍い光になっているように見える。しかし、クレディは、
「気のせいですよ。いつも不安な気持ちで見ているからそのように思えてくるのです」
とシエナを励ますように笑いとばす。
「でも、この光は何か良くないことを暗示しているようで・・・」
「姫様、考え過ぎはよくありません。さあ、ここにいては気持ちが暗くなるだけです。行きましょう」
クレディはレオナルドがいたら嫉妬しそうな『イイ感じのセリフ』を言ってシエナを聖堂から連れ出していく。
(レオナルド・・・。無事だよな・・・)
クレディはシエナ心配させまいと強がっていたが、一抹の不安を覚えていた。
さて、そのシエナたちに無事を心配されているレオナルドだが・・・。
「そこで私はジャンに言ったのだ『ジャン・・・。死ぬ事は簡単だぞ?むしろ生きる事の方が苦しいのだ。簡単な道と困難な道、騎士としてどちらを選ぶのが正しいかは君ならわかるな?』とな」
『おおー!』
今日も話を聞こうと集まった帝国兵たちの歓声をうけながら、つやっつやっとした顔で満足げに語っている。
とても聖石の輝きが鈍くなっている事に関係しているとは思えないほど健康状態良好で精神面も充実しているレオナルドだ。
ではどうして聖石の輝きが鈍くなっているのか?
それには白の聖騎士レオナルドの状態ではなく今の白の聖剣の置かれた状況が関係していた。
帝国兵に思う存分『イイ感じのセリフ』を言って自己顕示欲を満たしているレオナルドに比べて、帝国の宝物庫に厳重に保管され、まったく日の目を見ることがない白の聖剣は自己顕示ができなくて元気をなくしていたのだ。
それが影響して白の聖剣の台座の聖石の輝きが鈍くなっていたのだが、そんなことを知らないシエナはレオナルドに何かあったのかと心から心配していた。
・・・当の本人はつやっつやっだったが。
ちなみに元気な者はもう一人、というかもう一匹いる。
ヒヒン、ヒヒーン!(そこで俺は帝国兵に囲まれていたレオナルド様のもとに戻ったってわけよ)
ヒヒーン!(白雲さんかっけー!すごいっす!さすがっす!)
帝国の厩舎では白雲が帝国の馬たち相手に調子こいていた。




