白の聖騎士、帝国の猛将にイイ感じのセリフを言う
レオナルドのもとを訪ねてくるのは一般兵だけではない。中には将軍クラスもやってきていた。
今日来ているのは帝国軍第六軍将軍オイゲンだ。
「オイゲン・・・。兜割のオイゲンか」
「まあ、一部ではそう呼ばれているみたいですね。光栄なことです」
このオイゲン将軍には兜ごと敵将の頭を真っ二つにしたという逸話があるのだが、見た目はそんな事ができそうには見えない優男だ。背も高くなく中肉中背と言ったところで、それほどの力があるようには見えない。
兜割は将軍自らが敵を倒すという剛毅さを表した言葉だが、将軍が自ら前線に出るという愚を犯しているという事でもあるので帝国内外でオイゲン将軍は猪突猛進型で知略のない将軍だと思われている。
レオナルドもそう噂できいていたのでオイゲンの事をいかにも猛将と言った風貌で想像していたのだが全く違った。話すことも知的で言葉遣いも丁寧だ。
レオナルドはオイゲンとしばらく会話を続けた後、こんなことを言い出す。
「兜割・・・それは君が自ら広めたのだろう?」
「え?嫌だなあ。僕はそれほど名声欲にあふれてはいませんよ」
「名声欲ではないだろう。君が広めた理由は”ズバリ”自らが知略型の将軍だということを隠すためじゃないかな?自らが猪武者だと宣伝することで相手の油断を誘い、知略にハメやすくする・・・私はそう見たが違うかな?」
オイゲンは一瞬顔色を変えるがすぐに、いつもの軽い調子に戻ると
「なるほど、確かにただの騎士ではないですね。ジルが勧めるだけあります。この短期間でそのことを見抜くなんてね!」
「それは君が私が気づくように仕向けたからだろう?」
「なぜ僕がそんなことをする必要があるのです?」
オイゲンはレオナルドの質問に質問で返してくる。
「どのくらいで私が気づくかそれを推し量るためかな?」
レオナルドがさらに質問で返すと、オイゲンは真顔になって
「・・・ホント、もったいないなあ。これほどの人物をお金なんかで開放するなんてさ」
誰に言うでもなくそう言うと去っていく。
その後姿を見ながら・・・。
(ふう・・・。本当に知略型だったとわ!セーフ!セーフ!セーフ!賭けに勝ったぜえ!
いやあ~、『ズバリ』と言ってみたかったためにあんな事を言ってみたが違ったらかなり恥ずかしかしいところだったぜ。
やっぱり『イイ感じのセリフ』には『ズバリ』は欠かせないところだが、使いどころが難しいんだよなあ。
たいして意外ではないことで『ズバリ』と言ってみたところで何わざわざ『ズバリ』って言ってんだ、みたいになるし、かと言って情報がほとんどないのに意表を突こうと思って『ズバリ』と言っても、それが外れたら目も当てられない・・・。
一瞬にして『イイ感じのセリフ』から間抜けなセリフになってしまうもんな~)
レオナルドは心中で大汗をかいていた。
そう、白の聖騎士レオナルドはオイゲン将軍が知略型の将軍だと確信をもって言ったわけではない。単に『イイ感じのセリフ』のために『ズバリ』を使っただけだった。
この一か八かの賭けに勝つのも白の聖騎士の力かもしれない。
頑張れレオナルド!これからも『イイ感じのセリフ』を言うために!




