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白の聖騎士、ダイエット宣言!(心の中で)

「その後不自由はありませんかな?兵たちが迷惑をかけていないでしょうか?」

 

 ジルが三日ぶりに訪ねてくるとレオナルドはまるで親友に出会ったような顔で迎える。


「いや、実に快適だよ。帝国兵の皆も実に礼儀正しい者たちばかりだ」


 ジルがよこしてくる帝国兵たちにたっぷりと『イイ感じのセリフ』を混ぜながら自らの戦歴を話せていたのでレオナルドは上機嫌だ。

 なにしろどれだけ『イイ感じのセリフ』を言っても彼らは真剣にきいてくれるのだ。

 実に楽しいのだ。

 聖王国でも聖騎士であるレオナルドの話を聞きたがる若手の騎士は多かったが、敵国の兵に武勇伝を話すのはまた格別なものがあるらしい。


 (なんかこう、イイよね。敵国の兵に対して話すって。自国の兵だったら『こいつ俺に媚び売ってんのか』とかゲスな事を考えそうになるが、敵国の兵なら純粋に俺の話を聞きたいってのがわかるからなあ。

 この捕虜生活、まさに『イイ感じのセリフ』天国だよwww

 ・・・まあ一つ不満があるが・・・)


「ただ、不自由というわけではないが、食事を変えてもらえないだろうか?」

 

 レオナルドは遠慮がちに言っているがジルは少しがっかりする。


 いくら客人扱いしていると言っても捕虜の身で食事に注文をつけてくるのは傲岸すぎる。


 (白の聖騎士といえども所詮はその程度か・・・)


 だが、そんな事は顔に出さずに笑顔で、


 「おや、お口に合いませんでしたか?フルコースとはいきませんがそれなりに食べられる物にしていたはずですが、舌の肥えた白の聖騎士殿には少々粗食でしたかな?」


 少々嫌味に言うが、レオナルドは驚いたように否定する。


「いや、逆だ。贅沢すぎるのだ。もっと質素なものにしてもらいたい」


「贅沢だから質素な物にして欲しいと?」


思わず聞き返すジルにレオナルドはいたって真面目な顔で、


「ああ。捕虜の身で勝手な事を言うようだが、私には贅沢すぎるようだ。出来ることなら変えて頂きたい」


 本心から言っているようだった。


 ジルは白の聖騎士の態度に敵ながら好感を抱く。


 (さすがは白の聖騎士ですね。ここに囚われてからも毎日鍛錬を欠かさずしていると報告を受けている。まさに騎士の鑑です)


白の聖騎士の『食事を質素なものに変えてくれ』の本当の意味も知らずに。


「わかりました。食事は我々の一般兵士と同じものに変えましょう。いくら質素にしてくれと言っても上級騎士に対して最低限の礼節は必要ですからね」


「・・・感謝する」


 レオナルドは静かに礼を言うが心の中は・・・


(ふうっ、よかった~!このままあの栄養過多な食事を続けられたら確実に太るとこだったぜ!

 俺はめちゃくちゃ太りやすい体質なんだから!その辺考えて食事出してくれよ!

 いくら『イイ感じのセリフ』を言ってもブクブクに太ってたらなんか格好つかないもんな。太り過ぎたらなんか声もこもっちゃうし、セリフを言う上でもマイナスだからな!)

 

 実はこの白の聖騎士レオナルドは少年時代は少しぽっちゃりしていた。

 それほど食べるわけではないのだが体質的にふとりやすかったらしい。

 だが、イイ感じのセリフを格好よく言うために一念発起して、食事を粗食にして剣の修業を熱心にすることで引き締まった今の身体を手に入れたのだ。


 ちなみに食べるのが嫌いかと言えば本心では大好きである。

 しかし、イイ感じのセリフを言うための格好良さを手に入れるためにそれを犠牲にしている。

 だからここで贅沢な食事を出されたときはかなりの葛藤があった。

 我慢しなくてはと思いつつもつい手が伸びてしまう。

 そんな戦いを人知れずしていたのだ。

 そして、ジルの感心していた鍛錬もなんのことはない。ただ単に食べ過ぎたからダイエットのために必死こいていただけだった・・・。

 

 そんなレオナルドの囚われの生活はまだしばらく続く。

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