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白の聖騎士、囚われの身を生かしてイイ感じのセリフを言う。

(しかし・・・こんな扱いをされていいのかね・・・)


 レオナルドは自らの置かれている立場に少々戸惑っていた。


 シンゴの一撃を受けたときに神聖魔法の防御壁と精霊魔法の風精の守護で威力を殺してなんとか聖剣で耐えることができたが魔法の同時使用を最大出力でしたために力を使い果たして気絶したのだ。


 そうして気が付いたら牢というにはあまりにも豪華な一室のベッドで横たわっていた。


 この部屋が鉄格子こそあるものの中の調度品は一見して高級なものだとわかるし、運ばれてくる三度の食事は全て一流の物だった。

 ただ、食事を運んでくる兵士に話しかけても「会話は許されておりません」との一点張りなのはまいったが、とても捕虜の扱いとは思えないものだった。


 そんな事をレオナルドが考えていると、今まで食事を運んできていた兵士とは明らかに身分が違う、パッと見若く見えるが年齢不詳の男が訪ねてくる。


 「ご機嫌いかかですかな?」


 「ようやく話ができる者が来てくれたのか。ここは快適だよ。まるで一流ホテルだ。ただ誰とも会話ができないのは困りものだがな」


 台本のような『イイ感じのセリフ』を言うレオナルドだが男はその言葉を素直に受け取って頭を下げる。


 「申し訳ありません。皆、あなたと話をしたがっていましたのでこちらで余計は話をするなと言っておいたのです」


 「どういうことだ?」


 「帝国兵は皆、英雄を好みます。たった一人で3000人の帝国兵に立ち向かい金色の姫騎士を逃がすだけの時間を稼いだ騎士。しかも、誰一人殺すことなくそれをやってのけているので恨みに思う者もいない。そんなあなたと話したがっている者は多いのですが、そのような者たちに話しかけられてはあなたが煩わしい思いをする事になってはいけないと考えまして話すことを禁じていたのです」


 「ずいぶん気を使ってくれているのだな。できたらそれだけ気を使ってくれた人物の名前を知りたいものだが」

  ここぞとばかりに芝居がかった言い方をするレオナルドにジルはうまく合わせてくれる。


 「これは申し遅れました。私は帝国第三軍団参謀のジルです。何か困っていることなどありませんか?」


 「困っている事ではないが、聞きたいことはある。・・・帝国では捕虜は皆このような部屋に入れられるのか?」


真面目な顔をしてきくレオナルドにジルは笑って答える。


 「まさか。あなたは特別ですよ。白の聖騎士殿。あなたは捕虜とはいえ身代金と引き換えに解放される名士ですからね。本当は捕虜交換といきたいところですが、あいにくあなたと釣り合うほどの捕虜が聖王国側にはいませんからね」


 「身代金か・・・。あまり高いと払えないかもしれないな」


レオナルドは冗談ぽく言うが、ジルはいたって真面目に


 「大丈夫でしょう。ボードワン将軍はあくまで上級騎士としての身代金しか要求していません。私はあなたなら上級貴族としての身代金でもよいと思ったのですがね」


 「それは将軍が正解だな。私は平民出身なのでそれほどの財産はない」


 「いえいえ、あなた個人の資産はなくとも聖王国が払ってくれるでしょう。私が聖王国の者だったらいくら高くても払いますよ。よほどの馬鹿でなければね」


 「それは光栄だ。では、この快適なホテルには長居はできそうにないな」


 レオナルドは肩をすくめてこの豪華な部屋を見回す。


 「そうですね。兵士たちも残念がるでしょう。・・・もし、よろしければここにいる間だけでも兵士たちと話をしていただけますか?どうしても話をしたいという者たちが後を絶たないのです」


 ジルが慇懃に申し出るとレオナルドは気軽に引き受ける。


 「それは構わないよ。このホテルの唯一の欠点である退屈が解消できるだろうからね」


 「ありがとうございます。では、兵士たちには順番にあなたを訪ねる許可を与える事にします」


 ジルが丁寧に頭を下げて去っていくのを見ながらレオナルドは鼻血を出しそうになるほど興奮していた。


 (くうううう!久しぶりに『イイ感じのセリフ』を言えたぜ!

 今までの兵士は話しかけても会話できなかったからストレスがたまっていたんだよ!

 この囚われの身っていうせっかくのシチュエーションはなかなかないからな!

 しかも相手をしてくれたジル、彼はいい!こちらがイイ感じのセリフを言えるような返しをしてくれる!かなりできる男だな!俺にはわかる!

 しかも、これから定期的に俺が『イイ感じのセリフ』言える相手を提供してくれるなんて!

 ホント、ジルさんのおかげだよ!いやジル様、ジルの兄貴と心の中では呼ばせてもらいます!)


 レオナルドはこんなことを考えていたのだった。


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