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聖騎士たちはいろいろ考えている

 タイユフールやレイミア、シンゴの協力のおかげでレオナルドとシエナはついにピジョンのいる『精霊の間』の前までたどり着いた。しかし、そこには意外な人物たちが待ち構えていた。


 「久しぶりだな、レオナルド」


 「クレディ!なぜ、君が、ここに!」


 帝国領にある聖王国の要塞にいるはずの青の聖騎士の姿を目の当たりにしてレオナルドはそう叫ぶ。


 「私もいますよ」


 「ポッパー!あなたまでいるの!」


 同じく帝国領にいるはずの緑の聖騎士も現れたことでシエナも驚いている。


 (この二人が本気になれば勝つどころか、しのぐことすら難しいです。総合力ではレオナルドも劣っていませんが、一対一での戦闘においては彼らの方が上です。それに私が足を引っ張る事になるのは間違いないです)


レオナルドは時々不思議な力でミラクルを起こすことがあるが、基礎的な戦闘力はクレディとポッパーの方が上だ。シエナに至ってはミラクルを起こしたとしても確実にこの二人より弱い。


 レオナルドは自然とシエナを守るように前に出て白の聖剣に手をかける。


 「おっと、慌てないで下さいよ。私たちは敵じゃないですよ」


 レオナルド達の警戒した様子を見てポッパーはその必要はないとばかりに手を上げる。


 「俺たちはゴドフロア将軍の指示でここに来たのだ。『シエナ姫がここに来るはずだ。その際は姫の行動をサポートしろ』と命令を受けている」


 クレディは赤の聖騎士、ゴドフロアの命令でここに来たことを明かす。


 さすが神算鬼謀の赤の聖剣を持つゴドフロアだ。このタイミングで二人の聖騎士を聖王国に戻すのはまさに神智だといっていい。


 「姫の敵を共に討ってくれるということか?」


 いきなりの展開にレオナルドは警戒を緩めずに確認する。


 「さっきも言ったように俺たちはゴドフロア将軍から姫の味方をするように言われてきたのだ。姫に敵がいるなら、それを討つだけだ」


 剛直なクレディはそう断言するが、緑の聖騎士、機智奇策のポッパーはそう単純ではない。

 

 「いや、一応姫の敵が誰なのか。そして何のためのその敵を討つのかを聞かせて欲しい。もちろんある程度の見当はついているけど敵の事を知らずにそれが聖王国のためだと盲信して従うことはできないな。なにより帝国に寝返った聖騎士が姫と共にいる以上簡単にはうなずけない」


 さすがにシエナに不審を直接に言うのは失礼だと思っているのか、ポッパーはレオナルドにきいてくる。


 (こいつのこういうところは苦手だなあ。ラインハルトとはまた別の苦手さだよ。ラインハルトは口数が少なすぎて苦手だけど、こいつは口数が多くて理屈っぽいから、やりにくいんだよ)


 レオナルドは下手な事を言えば、面倒くさい返答がくるポッパーを苦手としていた。


 ただレオナルドの事を嫌っていた元黒の聖騎士ライハルトと違うのは、ポッパーはレオナルドに対して好感を持っているし、レオナルドも『イイ感じのセリフ』を抜きすればポッパーを頼りになる仲間だと思っていた。


 簡単に言えば『イイ感じのセリフ』が言いにくいという点だけがひっかかる相手らしい。そんなポッパーに対してレオナルドは、


 「見当がついているのなら、君の考えをきかせてくれないか。機智奇策、緑の聖騎士の真髄をみせてもらおう」


 自分で説明させるという手にでた。こうすればレオナルドは説明をしなくても済むのでボロがでることもないのだ。ついでに『真髄をみせてもらおう』というイイ感じのセリフを言うこともできて一石二鳥だ。

 

 「・・・そうだな。敵はピジョン宰相。そして宰相を討つ理由は宰相が聖王国の国民を操って、帝国との戦争を進めているから、かな」


 ポッパーは殆ど考える事もなくそう答える。自分で言っていたようにすでに見当をつけていたのだろう。


 「・・・さすがは緑の聖騎士だな」


 自分たちが散々考えて至った結論にあっさりとたどり着いたポッパーに驚きを隠せない。


 「もっと言えば、宰相と戦えるのは宰相の精神操作の影響を受けない、聖剣の加護を受けた者たちだけ。というところか。だから姫と君だけでここ来た。違うかな?」


 確信を持ったようにいうポッパーに対して、レオナルドも肩をすくめる。


 「私からの説明の必要はないようだな。それで、助力してくれるのか」


 「ええ。そのために来ましたから」


 先ほど「理由がわからなければ戦えない」と言ったのを忘れたかのようにポッパーはあっさりと受け入れると


 「まあ、ほとんどゴドフロア将軍の受け売りだよ。さすがは神算鬼謀の赤の聖騎だよね」


 謙遜するように続けた。

 

 だが疑問に思うこともある。ピジョンの動向を警戒していたのなら、どうしてゴドフロアは帝国に攻め込んだのか。聖騎士たちがいなくなればピジョンの専横はますます酷くなるのはわかっていたはずだ。


 実際、聖騎士たちがいなくなってからピジョンに反対するシエナの立場はさらに悪くなっていた。


 シエナはそこまで考えた時、あることに思い当る。


 「もしかして帝国領の要塞に聖騎士三人で攻め込んだのは・・・」


 「そう。ピジョン宰相への目くらましです。宰相にとって都合の悪い聖騎士たちをあえて国外に出すことでピジョン宰相の油断を誘ったのです。私たちは何も気付いていないと思わせたわけです」


 シエナに対してはポッパーも丁寧に説明する。


「それにしてもどうやってここに来たんだ」


 「君と同じやり方だと思うよ」


 レオナルドの疑問にポッパーは笑って答える。レオナルドが聖王国に潜入した手段がわかっているようだ。


 「『聖騎士の道』か。しかし、誰の聖剣を目印にしたんだ?」


 「紫の聖騎士、ショウさ。この王宮に残っている聖騎士は彼しかいないだろ」


 言われてみれば確かに他に方法はないのだが、レオナルドの疑問は解消できない。


 「ショウは味方なのか?」


 この点だ。紫の聖騎士、ショウ・シースは元黒の聖騎士のラインハルトのように明白なピジョン派ではないが、かと言って他の聖騎士たちとも一定の距離を置いている。よく言えば中立を保っているのだが、悪く言えばどっちつかずで何を考えているかわからない所があると見られていた。


 「さあ、どうかな。ただ、私たちがショウの元に転移した時は驚いていたけど『曲者を退治しに来た』と言ったら納得してたよ。まあ、私は曲者と言っただけでそれがピジョン宰相に対する曲者なのか聖王国に対する曲者なのかは言ってないけどね」


 ポッパーもショウの立場は敵とも味方とも言えない位置にいると見ているようだった。

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