滅びの…
久しぶりに執筆しました
至らない所が多分に有るかもしれません
時間を見つけてはゆっくり書いていきたいと思います
この作品は続きはありませんが、少しでも何かを感じていただけたら嬉しいです
それでは、お楽しみください
何処の国が始めたかわからない戦争は終息の一途を辿っていた
理由は簡単だ
『誰も勝利しなかった』から
資源の浪費、国民の消費
発展した科学のお陰で悪くも実力が拮抗してしまったが故に戦争は長引き、互いが互いの首を絞め合った
全世界に伝播した争いは大地を荒野に変貌させ食物はおろか、雑草の一本すら生えはしなくなった
非戦争参加者は飢えに苦しみ隣人を襲いもするが、隣人も飢えで苦しんでいる事に変わりはなく
ただ、命を奪い合うだけだ
壊れたコンクリート建築が散乱する中、過去に道だっただであろう所に、人だったモノがそこらじゅうに転がっている
それには、耳障りな音を立てながらハエが集る
中には生きている人間も居た、開かれた眼球の上をハエが歩いても振り払う素振りはない
男の身体はうっすら傷付き蛆が湧いている
死ぬのも時間の問題だと一目で解る
その人物に近付く影がある
真横に腰を下ろすと、ゆっくりと死の間際と言える男の頭を自分の膝の上に乗せ
触ることも躊躇われる程不衛生な男の頭を優しく撫でる
ピクリとも動くことのなかった男は、その人物の目を見て乾ききっていた瞳から一筋の涙を流し微笑みを向けた
それを最後に力が抜け2度と動くことはなかった
男が冷たくなるまで、撫でる手を止める事はなかった
冷たくなった身体を優しい手付きで膝から下ろし
また、何処かへ歩いていく
あれから何年経ったことだろう
大地や海は化学兵器によって汚染され虫一匹生きてはいない
唯一生きていたのが人間だけ
自分達で引き起こした環境破壊で最後まで生き残るのが人間とは皮肉なことだ
しかし、それもここで最後
錆びも軋みもない扉を開け中に入る
[…キミが噂の見届け人か?]
冷たいコンクリートの壁に背中を預けた男が声を掛けてくるが
返事をせずに歩を進める
[まぁ…返事は期待していないさ
ただ、誰かに話を聞いて欲しかっただけなんだ]
隣に腰を下ろし無言のまま話を聞く
[何でこんな事に成ったのかな…
なぁ、何でなんだろうな…?
俺達はどこで間違えたんだろう
いや、そもそも何が正しかったんだろうか…
疑いだしたら全てが間違っていたように思う]
何を聞いても返事はない
[こんな事を思う日が来るとは思わなかった
あの日が…ずっと続いて欲しい、と
家族と笑い合って肉や野菜を食べる日々…
それが当たり前だと思っていたし
それが当たり前だった
その中にある犠牲は無視して、犠牲の上に成り立った世界を『平和』だとして、当たり前に貪った
俺達は自分の良いように解釈して、ただ生きてきた]
男は無機質な部屋の中を見渡して力無く言葉を溢す
[これが…その報いだ…]
それ以上言葉が発せられることはなかった
隣に座り手を握っていた
その手が骨だけになるまで握っていた
[…チキュウジョウカラ、セイメイガスベテナクナリマシタ…ニンム、カンリョウ
キノウテイシシマス]
地球はやっと死ぬことが出来たんだ