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無気力系戦乙女  作者: オリオン
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嫌な追撃

「何でそこまで実力を隠すの?」

「か、隠してはいない、本当の事だ」

「……」

「う、うぅ…」


ど、どうする? どうすればこの状況を打破できる?

私の力がバレると言う事は、危険地帯へ放り出されると言う事。

私はただのんびりと余生を過ごしたいだけだというのに。


「理解に苦しむわ、力を示すことが出来れば階級は上がり

 地位も名誉も手に入る、遊んで暮らせるだけのお金も手に入る」

「力を隠すメリットなんて無いでしょう?」

「あぁ、無いぞ、だから事実なんだ」


私がこの力を隠すことで生じるメリットなど無い。

隠すと出世することも無いし、地位も名誉も得られない。

だから、普通なら私が嘘を吐いているとは思わないはずだ。

私は本来あり得ない事を言っているのだから。


「……今まで、あなたには言ってなかったわね」

「な、何をだ?」

「私はあなたの事が最初から気になってた、まず1年、2年の時

 あなたは訓練の時は非常に良い動きをしていたのに

 実戦訓練時では動きに一切のキレが無かった、まるでわざと負けてるようだった

 でも、3年の時、あなたは訓練の時にあった覇気が無くなった、無気力な目

 まるで死んだ魚のような目だったわね」


……母が死んだ日だ、私が3年生にって、少しして母は死んだ。

ニールと出会い、少しだけ時間が経ったときだ。

そこから、私は訓練にすら一切の力が入らなくなった。

当然だ、理由をなくしてしまったのだから。


「それと、1年、2年の時、あなたは休憩時間すぐに姿を消した。

 放課後も誰とも話をすること無く、すぐに家に帰ってたわね

 昼ご飯も人知れず食べてたみたいだし、あなたは休みの間何をしてたの?」


訓練だ、母を救うために私は必死に訓練をした。

休みの時間は全て訓練をすることだけに集中していた。

放課後はすぐに家に帰り、母の看病をしていた。

そして、昼食は家の残り物、金が無かった私の家は食べ物は基本的に殆ど残らないから

弁当はいつもほんの少しだった、それでも、1日動けるだけのエネルギーは確保できる。

可能な限り少ない材料で母の体に負担が掛からないように栄養を考えて作ってた。

だから、いつも食事は質素、だが、栄養には自信があった。

私が色々と栄養価を考えて作った料理だ、自信が無ければ母に振る舞うことは出来ない。

たまに同じバルキリー達がケーキが美味しいと言っていたのを聞いたこともある。

だが、私はケーキという物を食べたことが無いからな。

同じバルキリー達の会話に付いていくことも出来なかった。

可愛い服も興味無し、髪飾りも髪型も私には興味の無い会話。

恋バナとやらをしていたのも聞いたことがある、理想の男の人とかの話。

だが、私には全く理解できない話ばかりだった。

そんな空間に1人だけ取り残されてるという感覚が嫌で

私は昼食はいつも1人だった…ニールが来てからは

たまに一緒に食事をすることがあった、その時はよくニールの弁当を別けて貰った。

私が欲しいと言ったことは一度も無いが、ニールは私の弁当を欲しがり

その代わりに自分のお弁当を沢山私にくれていた、あの食事は美味しかったな。

ニールもたまに服の話をしていたし、美味しいケーキとやらの話もしていた。

絶対に先輩にはこんな服が似合いますよ! とか、よく言われてた記憶がある。

そう言えば、前にニールが服を持ってきて、先生に捕まった話を聞いた。

私に着て欲しい服だったらしい。

私はニールに自分の家を教えていなかったから、放課後に私に会う術が無かったから

学校にまで持ってきたのだろうな。


「何度かあなたを付けてみようと思ったわ、でも、いつもすぐに見失う」


そう言えば、何度か帰宅途中に気配を感じることがあったが

そうか、あの気配はメアリーの気配だったのか。


「気配を消して尾行しても、あなたはすぐに姿を消す。

 本当、ずっと不思議だったわ」

「それは偶然だ」

「そして何より、最後の卒業試験、あなたは10位で通った。

 今までの実戦訓練はボロボロだったのによ。

 それも11位と1点の差だけで。

 私はその時確信したわ、あなたは力を隠していると。

 そして、今回のゴブリン襲撃、これで私は改めて確信した。

 あなたは私よりも強い」

「それはニールがいたからで」

「彼女という足手まといがいたのに、あなたは生き残った」

「ニールは足手まといじゃ無い! あいつは強い。

 私が今まで出会ってきた中で、2番目にあいつは強いんだ!」

「2番目? 1番は?」


し、しまった、ニールを馬鹿にされたように感じ、つい口が滑ってしまった!

こうなると、はぐらかすのは難しい…どうする? トール様とでも言うか?

だが、それだと2番目というのは不自然…オーディーン様も居るし。

他の神々だっている。

じゃあ、お前だ、とでも言うか? いや、私はメアリーと手合わせをした事は無いし

メアリーが戦っている姿を見たこともない。

……か、隠しようも無い、メアリーは中途半端な嘘などすぐに看破する。


「……私の師匠だ」

「師匠?」

「あぁ、師匠だ、私に剣を教えてくれた師匠」

「師匠がいたのね、通りで異常な程に強いわけだ」

「わ、私は強くない」

「いい加減、その嘘を貫くのは諦めなさい

 もう、私は確信してるわ、どんだけあなたが言おうとも

 私はもう確信した、あなたは間違いなく強い、私以上に」

「そんな事は無いだろう」

「間違いないわ、僅か1人、いえ、2人かしら。

 その少数でゴブリンを6000以上も削れるバルキリー

 その持久力、殲滅力は私では足下にも及ばない」

「……」

「だから聞いてるの、何で、あなたはその力をひた隠す?」


……どうしようも無い、もう、この会話をする前から

彼女は私の力に確信を持っていた。

これ以上話をしようとも、彼女が私の実力が凄まじいと言う事を

疑うことは無いだろう…何という事だ。


「……死にたくないからだ」

「は?」

「私は死にたくない、ただ平穏な暮らしがしたいだけ

 力が強いことがバレてしまえば、私は死地に赴くことになる。

 それだけは嫌だ」

「……本当、あなたの事はよく分からないわ、死にたくないなら、何故バルキリーに?

 バルキリーは戦場に生き、戦場で死ぬ、その様な役職だと言う事は分かったはず

 学園にいる間でも、その事は強く先生から教わったはずよ。

 それなのにあなたは逃げ出さず、最後まで学園に残り、卒業し、バルキリーになった。

 そんなあなたが何故死にたくないと口走る?」

「それは、か、金の為だ、バルキリーになれば、お金も沢山貰えるし」

「嘘ね、そんな弱い理由で命を賭けるバルキリーになるはずも無い。

 他に道はあったでしょう? それなのにあなたは苛烈な道となる

 バルキリーと言う道を選んだ、それ相応の理由がないと選べないわ」

「……」

「そこで1つ出てくる謎、1,2年の間にあったのに、3年で突如消えた覇気。

 私はこの3年の時に何かがあって、あなたの理由がなくなったと予想するわ」


……メアリー、推理だけでまさかここまで…流石主席だ。

技術も知能も主席で通っただけのことはある。


「…何があったの? 教えて、私はあなたのその才能を潰したくは無い

 私に協力できることなら、何だって協力してあげる」

「お前に教えたところで何か変えられることでもない。

 協力してくれるというなら…この部屋から出ていってくれ」

「何で!? 私はあなたの味方になろうとしてるのに!

 何であなたはそこまで孤独に生きようとするの!?

 1人で全部抱えて生きていけると思ってるの!?

 孤独が格好いいとでも思っているの!? あなたは!」

「良いから出て行ってくれ! お前と話すのは疲れるんだ」

「……私は諦めないわ」

「ふん」

「……1度だけ、私はあなたの姿を見たことがある

 あなたが1人で訓練に励んでいる姿」

「な…」

「あの時のあなたの目には確実な信念が宿っていた でも、今はちょっと違うわ

 でも、あなたの目は死んでいない…私は諦めないわ、絶対に」


メアリーはそう言い残すと、私の病室から出て行った。

……あいつは一体何だったんだ? なんの為に…

いや、知ったことか、私は平穏に暮らしたいだけだ。

ただニールが成長している姿を見て、余生を過ごしたいだけ。

それ以外にもう、理由など必要ない。

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