初めての共闘
「1人が2人になったからなんだ! この数相手じゃ何も出来ないだろ!」
「その臭い口を開かないでください、不愉快ですよ」
「調子に乗りやがって! チビ女のくせに!」
「チビ女? …言って良いことと悪い事が!」
「ま、まぁ、落ち着けニール、気にすることは無い」
ニールは背が低いからな、私よりも大分低いし。
その事もかなり気にしているようだ。
「ほら、背が低い方が立ち回りも上手く行くし、死角を突きやすい
前にも言ったが、そんな風に言われたら、怒るんじゃなく
自分の良いところを言って、完全に説き伏せれば良いんだ」
「うぅ、ごめんなさい、エリス先輩」
ニールはすぐにカッとなってしまう所がある。
その性格は少々実戦では危険だからな、今のうちに直さねば…
と言っても、もうすでに実戦、性格を直せたわけでもない。
仕方ないか、この間、私は可能な限りニールのカバーをしよう。
ニールは発展途上だ、ニールの才能が開花するまではカバーせねば。
「一気に潰せ!」
「来るな、トロールは動きが遅い、その代わり一撃が強力だ。
ゴブリンも動く可能性がある、ゴブリンはトロールの逆
一撃は軽くても動きが素早い、的も小さいから見失うな
トロールは力、ゴブリンは速さと悪知恵、両方警戒して動くことだ」
「は、はい!」
ひとまずはトロールを何とか沈めなくてはならない。
あの一撃は中々に脅威だ、直撃しても当たり所がよければ死にはしないだろうが
大きなダメージを喰らうことだろう、この数相手にそれは危険だ。
動きが鈍るのは致命的すぎる、それはどんなダメージでも同じ事だが
トロールの斧は強力、最悪、食らえば即死もあり得るからな。
当たり所がよくても大ダメージ、やはり驚異的なのはトロールだ。
それに、動きも鈍く、的も大きいから狙いやすいし撃破のしやすさでもトロールが上。
優先順位を付けるとすれば、ゴブリンの弓矢部隊、次にトロール、次に縄のゴブリン
最後に突撃してくるゴブリンと言った所だろう。
「くたばれ!」
「ふん、鈍いぞ」
「が!」
トロールは非常に仕留めやすい、攻撃を仕掛けた後に大きな隙が出来るからな。
その隙に首を斬れば、一撃で仕留める事も可能だ。
「そこダ!」
突撃ゴブリンか、中々良いタイミングで攻撃を仕掛ける。
だが、やはり小さな刃物で私を攻撃するのは難しいだろう。
回避も容易だからな。
「む、ふん!」
「ガがグ!」
私はゴブリンの攻撃を回避した後、ゴブリンの腹を蹴り上げた。
ゴブリンは空高く打ち上がる、やはり背が低いとよく飛ぶな。
「えい! えい! か、数が多いですね」
「死ね!」
「うぅ!」
ん、ニール、トロールの攻撃を防いでしまったか。
力では不利であるトロールの攻撃を正面から剣で受け止めるのは危険だ。
受けた直後に流すのなら問題無いが、正面から受けては不味い。
あの状態ではゆっくりと押されるし、動きを制限される。
仮に力で打ち勝てたとしても、その間に動けない時間が生じる。
1対1の状態ならば問題無いが、今は相手が多数いる。
この状況下だと厄介なのはゴブリン、背も低く姿を見えにくい。
更にはすばしっこく、ちょっとした隙間からの攻撃も可能。
悪知恵の働くゴブリンのことだ、この機を逃しはしないだろう。
「そこダ!」
「ご、ゴブリン! う、動けない!」
私は足下に落ちていたゴブリンの短刀、恐らくさっき蹴り上げたゴブリンの物か
それを引き抜き、すぐにニールへ向って飛びかかるゴブリンに向けて投擲した。
「ガ!」
ゴブリンの腹部にその短刀が直撃、それを確認するまでも無く
私は一気にその場から移動し、ニールを押さえつけるトロールに向けて走り出す。
「ふん!」
「ぐ!」
邪魔も多く、低い場所にいたゴブリンをまとめて切断するために
私は低い場所で剣を振るう、トロールの腹部から血が噴き出し
そのトロールの近くにいたゴブリン共も真っ二つに切断することが出来た。
「か、ふ…」
「うぅ! てりゃ!」
「馬鹿な!」
その直後にニールは力が弱くなったトロールの剣を弾き
一気に私が攻撃したトロールにトドメをさした。
「はぁ、はぁ、ご、ごめんなさい、エリス先輩…私」
「この状況下では仕方ないことだ、1つアドバイスだ
トロールの攻撃を正面から受けるのは危険だ、避けるか流せ」
「は、はい!」
「それともう一つ、盾をしっかり使っておけ、お前の戦いを見ることはあるが
どうも、お前は盾を使っていない、防御が疎かすぎるぞ
敵の攻撃を盾で防がず、剣で防ぐな、盾で防いで隙が出来たところを
剣で攻撃、それが基本的な撃破の流れだろう」
「でも、エリス先輩はそもそも盾を使ってないじゃないですか」
「今の私の型はお前の型とは違う、今の私の型は殲滅特化の型だ」
「だったら、私もその型で」
「馬鹿を言え! この状況下で新しい型など出来るはずも無い!
お前は少し私に憧れすぎだ、私のしてることをすぐに真似ようとするな!
大事なのは基本! 基本もろくに出来てないお前が私を真似るな!」
「ひ! あ、その…わ、分かりました…」
……この状況下だ、優しく諭すよりもこの方が良い。
こうまで言わないと、こいつは私の型を真似ようとするだろう。
本当に馬鹿な子だ、どれ程頑張っても、私にはなれないのに。
「良いか? 盾を上手く使え、だが、トロールの攻撃は避けろ
盾を使うのはゴブリンの攻撃くらいにしておけよ」
「は、はい…分かりました」
…しかし、援軍はいつ頃来るのだろうか、このまま殲滅してしまえば
流石にやり過ぎだろうが…だが、このままの勢いでは殲滅してしまう。
「行くゾ!」
「ゴブリン共、学習しないな」
私は右の剣で右方向から飛びかかってきたゴブリンを切断。
その後、左方向から飛んできたゴブリンの攻撃を左の小盾で受け
弾いたところを剣で切り裂く。
私が防御を完全に捨てていたからニールが勘違いした点もある。
これからは盾も使って敵を潰していくとしよう。
防御の大切さを教えるのも大事だからな。




