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無気力系戦乙女  作者: オリオン
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愚かで幸福な戦乙女

戦乙女はもう必要ない、散々悩んだ結果

私が導き出した答えは…このバルハラから消えることだった。

私は必要無いし、私はもはや不要だからな。

私の様な悪人が、のうのうと過ごしているというのも頂けない。


「……」


夜な夜な、姿を眩ます準備をした。

ニール達に黙って、姿を消す準備を。

今日は決行の日だ…ニール達と分かれるのは…悲しいが。

それでも、罪人である私は…皆とは一緒にいられない。


「……」


ニールを起さないように、扉をゆっくりと開けた。

そして、ニールの枕元に師匠から貰ったファンファーレを置いた。

師匠からいただいた物を、私が教えた教え子に譲り渡す。

師匠と同じ様な事をしていると思うと、少し嬉しい気分になった。

ニールはファンファーレを使いこなせるだろうか…あぁ、きっと大丈夫だろう。

あいつは私よりも立派な戦乙女になる。

もうこの先の未来には戦乙女は不要なのかも知れない。

それでも…きっと、完全に不要となるには時間が掛かるだろうからな。


「…何処へ行くの? エリス」

「な…め、メアリー! うわ!」


扉を開けると、そこに待っていたのはメアリーだった。

私は驚き、少しだけ仰け反ると、メアリーが私を抑えた。

それと同時に、私の手から荷物がずり落ち、地面に落下する。


「な、なんの真似だ…」

「…逃がさないわよ、どうせ消えるつもりだったんでしょう?」

「……あぁ、そうだ、わ、私は罪を犯した、それなのに

 私だけがのうのうと過ごすなんて事…許されるはずもない。

 このバルハラに、私が居て良いはずが無い」

「私達が必死にあんたを止めたってのに

 あんたは自分を自分勝手に責めて姿を消そうっての?

 あんたの気分的には良い事をしているつもりなのかも知れないけど。

 私達からして見れば、あなたのその行動はただの自分勝手よ」

「……そ、それは」

「私達に申し訳ないって気持ちがあるなら、このままバルハラにいなさい。

 私達に恩を返したいというなら、このままバルハラで過ごしなさい。

 例えバルハラじゃなかったとしても、私達の前から姿を消す。

 それだけは絶対に許さないわ」

「……」

「それによ、ニールはどうするの? 朝、目を覚ましたら

 大事な先輩の姿が無くて、ただ剣だけが置いてある。

 あの子はすぐに理解するわ、あなたが自分を置いて何処かに行ったと。

 それは、あの子からして見れば裏切りに等しいの。

 別れの言葉も言えず、感謝の言葉も言えず、恩を返したいと思っても

 一生返すことが出来ない…別れも何も告げずに消えるなんて事は

 ただあなた自身が別れの言葉を言いたくないから。

 あなたがそれを格好いいと思っても、置いて行かれた方は迷惑極まりないわ」

「……」


自分勝手に格好を付けて姿を消したつもりでも。

置いて行かれた方は…ただ迷惑なだけ。

は、はは、なんで気付けなかった、こんな当たり前の事を。

私は今まで、何度もそれを経験してきたはずなのに。

そんな事に…自分は気付けていないなんて。


「…本当に、あなたってかなり世間知らずよね」

「……それは」

「ほら、泣きたいなら泣いて良いのよ?

 今、ここにはあなたを尊敬している後輩も居ないし

 あなたを特別視している誰かが居るわけじゃない。

 あなたをあなたのままで受入れる、ただの親友が居るだけよ」

「……ありがとう、メアリー」


私は泣いた、メアリーの胸を借りて…泣いた。

あぁ、なんて情けない姿だろうか。

だが、少しくらいは…良いだろう。

今まで、誰にも甘えられなかったんだ…

ただの親友に甘えるくらい…別に良いだろう。


「…でも、わ、私も…少しくらいは泣いても…良いかしら?

 本当に…心配してたんだから…馬鹿」

「すまない…私のわがままで」

「良いのよ…ありがとう、エリス…また戻って来て…くれて」


メアリーも私を抱きしめ、涙を流した。

あぁ、甘えられるというのも…意外と悪くないかもな。

とにかく、今は…自分の愚かさを知り。

そして…自分を守ってくれる、大事な人達の存在を…噛みしめよう。

私の様な愚かな友を…愚かな仲間を…受入れてくれて、ありがとう。






「……な、情けないところを見せちゃったわね…」

「いや、私の方こそ…でも、お陰でスッキリした。

 ありがとう、メアリー…私を受入れてくれて」

「…たまには、泣くのも良いでしょう? そうは思わない?」

「…そうだな、ありがとう…また、何かあったら甘えるかも知れないが」

「えぇ、いつでも待ってるわ、逆もあるかも知れないけど

 そっちは殆ど無いでしょうから安心しなさい。

 私、こう見えてもプライドが高いからね」

「ふふ、私に抱きついて、一緒に泣きじゃくってたお前がか?」

「う、うっさいわね! ぷ、プライドが高かったとしても

 不安だったりすると、普段とは違う感じになる物なの!」

「…ありがとうな、私の事、心配してくれて」

「べ、別に、普通よ、普通、あ、当たり前の事よ」

「…素直じゃないな、メアリー」

「う、うるさい!」


やはりメアリーは素直じゃないな…いや、それは私も同じだろう。


「……せ、先輩…え、えっと」

「げ! ニール!」

「…み、見てたか?」

「は、はい…メアリー先輩のな、泣き声が聞えて…」

「げ! 私、そんなに大声だった!?」

「は、はい、大声でした…スルズちゃんが起きるほどに」

「はへ!?」


メアリーの部屋からもこちらを見ている人影があった。

まぁ、誰かなんて言うまでも無くスルズだが。


「…あ、あわ、あわわ…」

「せ、先輩…え、えっと…」

「わ、忘れなさい! スルズ!」


赤面しているスルズがすぐに扉を閉めて部屋に戻った。

メアリーも顔を一気に真っ赤にしてスルズを追いかける。


「…ニール」

「は、はい…」

「あんな私を見て、幻滅したか?」

「…いえ、むしろ嬉しかったです…やっと少しだけ…

 本来の先輩を見ることが出来たんですから。

 ごめんなさい、無理…させてしまってたみたいで」

「…無理はしていなかったんだ…少なくとも今までは

 だが…恐らくこれからは、ちょっと我慢するのは難しいかも知れない。

 また、何処か脆いところが出てくるだろう…

 そんな私になっても…お前は、私を受入れてくれるか?」

「勿論です! 先輩がどんな風になっても、先輩は私の大事な先輩です!

 …ですので、はい、これを」


ニールが私が枕元に置いたファンファーレを手渡してきた。


「…これは先輩が持っててください、お別れは嫌ですから」

「ふ、あぁ、分かった…しばらく厄介になるし

 もしかしたら、もうお前に渡すことも無いかも知れない…

 だから、受け取ろう。

 私はもう、お前達の前から姿は消さない」

「はい! これからもよろしくお願いします!」


…これはただの物語…神話にも記されないであろうただの物語。

それでも、私は…幸せだ、名も記されないだろうが。

それでも…今、この時間をこいつらと過せるだけで…私は幸せだ。

きっと永遠には続かないだろうが…一瞬の時でも、この幸福を噛みしめて生きていく。

短い間でしたが、お付き合いくださってありがとうございます!


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