強い意思
どうして私の邪魔をするんだ…どうして、私の邪魔を…
「…頼むから、もう来るな」
「頼むからその剣を置いてくれる?」
「……何が言いたいかは分かった」
「話が早くて助かるわ」
「……だったら、無理にでも押し通る! ウィングフィザー」
「な!」
ウィングフィザーは周囲に力をばらまき、その力を具現化させ
対象を攻撃する広範囲殲滅攻撃。
攻撃力はさほど高くは無いが、殲滅力は十分だ。
ウィングフィザーは力が強ければ強いほど
攻撃速度が上昇している。
つまり、より殲滅力が上昇すると言う事だ。
「く! なんて言う攻撃速度!」
「…そこで待っていろ」
「駄目よ! 行かせないわ!」
「うぅ! ち、近付けません! フレイヤ様、大丈夫ですか!?」
「私は一応、防御系の魔法が使えるから問題は無いけど。
この攻撃速度は流石に…」
「なんでこれをゴブリンの時に使わなかったんですか!?」
「目立つからな、それに疲れる」
そして何より、この攻撃は完全にランダムだ。
複数で戦っていると、どうしても巻き込んでしまう。
あの場にはニールが居た…それが理由でもある、だが、それは言わない。
「うぅ…ち、近付けない…このままだと先輩が!」
「くぅ! ここまで高密度で連射が出来る何て…規格外過ぎるわ!」
「流石にこの攻撃は厄介だな」
ウィングフェザーはランダム攻撃、当然、近場に居る師匠にも流れ弾は飛んでいく。
師匠は私の攻撃を捌いてはいるが、流石に結構苦戦はしているようだ。
流石に完全ランダムで高密度の高連射攻撃だ、流石に苦労はするだろう。
恐らく私もこの攻撃を捌くのはかなり苦労するだろう。
だが、ホーリーリリースを使えば対処は出来るはずだが
師匠はどうやらその力が使えないみたいだな。
「……」
自分の攻撃は自分には当らないというのが幸いしたな。
「先輩!」
「さようならだ」
「…そんなの、私は! 認めません! ブレイブストライク!」
「く!」
…結構な破壊力だ、なる程、侮れない、流石はニール。
「はぁああ!」
「ニール!? 攻撃を受けながら突撃って!」
「逃が…しませんよ! 私は! 先輩の…為に!」
「その怪我で…私に挑むと!?」
「えぇ! 勝てなくても…私は、絶対に!」
「……だ、だったら! だったら、し、死ねぇ!」
「ははん、そんな事言って、素直じゃ無い奴ね!」
「く!」
「ニールが怪我をして、それがいやで攻撃を止めた。
それなのに死ねですって? ふふん、悪役になりきれてないわよ?」
「しつこいぞ!」
「うわ!」
「バーストショット!」
「うわぁ!」
バーストショット、剣を突き出し、そこから衝撃波を放ち
正面の敵を吹き飛ばす技。
力が強ければ強いほどに衝撃が強く、周りを吹き飛ばす。
「う…うぅ」
「もう…動けないだろ」
「…先…輩」
「うぅ…い、行かせ…」
「私…私だって!」
…スルズか、1対1で私に戦いを挑もうと?
「…もう止めろ、無理だ」
「無理かも知れないし無茶かも知れない、けどきっと、無駄じゃ無いから!」
「無駄だろう…勝てなければ!」
「無駄にはさせないわ!」
「フレイヤ様!」
…何を躊躇っている、どうして躊躇っている。
まだ覚悟が足りないというのか…私は!
「私は…母の為に父の為に…戦うと決めた!」
「ぁあ!」
「スルズ!」
「バーストショット!」
「な、きゃぁあ!」
フレイヤ様も突き飛ばし、スルズももう動けないだろう。
これで私の勝ちだ…師匠が戦うというのならまだ分からないがな。
「……これで終りか…師匠、あなたは…どうします?」
「そうだな、当然、決勝ラウンドになれば戦うが」
「…なら、もう」
「ふ、あいつらの気概はお前にも負けず劣らずだぞ?
この程度で倒れると思うか? お前がもし、あいつらと同じ立場なら」
「…く」
「はぁ、はぁ…」
「当然、立ち上がるだろう?」
「……本当に」
本当に…本当に…何処までも何処までも…
「どうして、私を放っておいてくれない」
「何度も言うわ、大事な親友だからよ」
「私を…助けてくれた大事な先輩を見捨てるはずがありませんよ」
「……う、うぅ」
剣が重い…これ以上、皆に剣を向けたく…無い…でも。
「…私の邪魔を…しないでくれ…」
「ふふん、お、大人しく…あ、甘えりゃ良い…のよ
そんなに泣くくらいなら…ね」
「わ、私は…」
……私の手から、ファンファーレが離れてしまった…もう、戦えない。
戦える筈が無い…もう……私は。
(……エリス)
「……え?」
私の耳元で聞えた…小さな聞き覚えがある優しい声。
(…お願い、幸せになって、これ以上、私達に縛られないで)
「……お母…さん」
(エリス、立派に育ってくれて、お母さんは嬉しいわ。
お父さんもお母さんも、例え姿が見えなくても
ずっと、あなたのそばに居るから。
でもね、お母さんもお父さんも、苦しんでるあなたは見たく無いの。
私達が見たいのは…あなたの涙なんかじゃ無い
幸せそうに笑う、あなたの可愛らしい笑顔なんだから」
お母さんとお父さんの笑顔が見えたように思えた。
これは、幻聴だったのだろうか…それとも、本当なのか。
でも、例え…それがどっちだったとしても。
これが例え…私の幻聴だったとしても。
それはきっと…本物のお母さんの言葉だ。
だから……もう、私の戦いは…無意味か。
「……あぁ」
私はその場に膝を付く、もう、立つ気力さえ無くなった。
そして、右手に握りしめたフルルートを鞘に収めた。
「どうやら、お前の大事な仲間達の方がハッキリとした意思があったようだな。
お前は戦いながらも…迷い続けていたな、エリス」
「……仲間達に刃を向け、神を敵に回した私を見て
お母さんはどう思うのか、お父さんはどう思うのか…
そんな事ばかり…考えていました」
「そんな心では、ハッキリとお前を助けるという目的を持っていた
仲間達には最初から勝てなかったな」
「……はい」
「お前は…幸せ者だよ」
「……」
その大事な仲間達に刃を向けたんだ、私は……本当に愚か者だ。
「私は…愚か者です」
「愚か者でも、お前にだって出来る事はあるだろう?」
「私は…裏切り者で」
「ふふ…大事な仲間達が…何の為に戦ってたと思うの?」
「……トール様」
「まだ、間に合うわ…一緒に、生き残りましょう」
「……私は」
「もはや、お前達にしか出来ないだろう?
先の戦闘で、動けるのは私とお前だけだ。
折角和解できたというのに、別れても良いのか?」
「…いえ」
「なら…何をするべきかは分かるな?」
「……はい、お母さんは私に立派に生きろと言ってくれました。
それが真実でも幻だったとしても…私は、これ以上の過ちは犯さない。
このままではお母さんとお父さんに合せる顔がありませんから!」
「…よし、やるぞ、終焉を生き残るぞ!」
「はい!」
私は再び剣を握った、今度もハッキリとした意識がある。
だが、今度は…今度は自分の為に剣を振るおう!
世界は終わらせない!




